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人生

作者: そういや

荒野の枯れた土地には一つの線路が伸びる


その終わりというのは見えず


どこまで続いているのか


いささか気になるのである


あるとき貧民の少年は


人々が列車で行くこの先には


さぞ栄える町があるに違いないと思い


一人線路をたどって歩いて行くことにした


じめじめと蒸し暑い荒野を少年はその小さい歩幅で歩く


一生懸命少年は歩きはするが横を走る列車は凄い勢いで少年を抜き去っていく


若干それにイライラを覚えるが

少年にはお金がなく列車に乗ることはできない


今はただその足で前に進むだけだ


何年たっだろう顔つきはたくましくなり

40代くらいになっていた


これまで途中に村を何度も挟み

今日もまた線路を歩いている


「なぜ1本の線路にこだわって歩き続けているんだい?」

これは何度も人にたずねられた事だが

「それは自分が思うものがこの先にあるからだと」

その度に返している


おかしな人もいるもんだという目で見られるが、そんな事でこの事を辞めてしまっては元も子もない、今は自分を信じて歩くのみだ


しかしいつまでたっても

自分が思い描く栄える町は見えない


ただその線路に沿って

歩く事が生きがいになっていたが


時間はどんどんと過ぎ

少年は老いていった


あるとき、頭がクラクラして

その場に倒れこんだ


それを近くにいた村人が発見して

すぐさま自身の村へと連れ帰った


「おい、じいさん大丈夫かい」

その問いかけに

「ああ大丈夫だ、ここは?」


「あんたが倒れていたから僕の村に運んだんだよ、でもなんであんな所に?」


「線路に沿って歩いてきたんだ、子供の頃からきっとこの先には栄えた町があると思ってね」


「なにいってんだよその先には何もねえよ、栄えた町ってのは線路の方向の南じゃなくて、東のほうだ」


「なんだって・・・」


「本当だよ、線路の道なりは栄えていないがそこからバスやタクシーに乗り換えて東に向かえば人が多くいるあんたの望む町ってのがあるよ」


その言葉に老人は唖然とし

自分が一つの道に執着し過ぎた事を悔いた


そのまま老人は自分が想像した町を見ぬまま安らかに息を引き取ったのだった

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