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逢瀬は、プラットホームで。  作者: 椎名美雪
第一章
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五月病

 多くの人が経験しているであろう、五月病。例外なく、私やその同期も罹患した。

 まだまだ若い、18歳。しかし、社会人である。いつまでも学生気分ではいられない。だが、子供ではないが、まだ大人でもなく、中途半端な年齢だ。


 本来、すごく内気で人見知りの私は、環境が変わるだけでも相当な精神的な苦痛を感じるタイプだった。

 慣れてしまえばこっちのものだが、慣れるまでが大変なのだ。だから、高校在学中から、まだ先の、社会に出た時の事を考えて、ずっと緊張しっぱなしだった。

 電車通勤に関しては、学生時代も電車を利用していたから苦ではなかったけれど…。環境の違いにまだ完全には慣れていなくて、毎朝辛くて堪らない。


 辞めたいとは思わなかったが、会社に向ける足は重かった。



 会社の最寄駅、夢ヶ丘駅前には、マクドナルドがある。

 薄給の私には贅沢だが、時々そこで朝食を摂る日があった。2階席は、プラットホームが上下線ともに一望できる、眺めの良い場所。


 電車が入ってくると、ホームは人で埋め尽くされる。

 その人波が少し引いた頃、地下の改札からはき出される人の群れが、階段を上がり地上に散らばっていく。その眺めが好きだった。


 「たくさんの人の、たくさんの一日が始まるんだなぁ」


 そんな事を思い、ボンヤリと見下ろしてオレンジジュースを飲んでいた。

 味覚はまだ子供で、コーヒーの味、美味しさを知らない。これまでにも、何度かは飲んだことがある。だけど、あんな黒くて、苦くて……何が美味しいのか、さっぱり解らなかった。

 だが、その“大人の飲み物”への憧れが、一番強い年齢でもあった。


 何気なく利用していた、マクドナルド。

 後に、私の人生に、色濃く想い出を残す場所になる。

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