7/108
部長と課長
直属の上司である、馬渕部長と藤村課長。
この2人、実のところ……あまり仲が良くない。
部長は元々技術部にいたらしく、課長は営業畑で生え抜きの人。
藤村課長にとって、馬渕部長は〈目の上のたんこぶ〉でしかないのだろう。
“技術上がりに営業の何が解る!”だろうし、営業を知らない人が部長の椅子に座っているということで、ヤッカミ半分なんじゃないか……という声が、陰で多く聞かれた。
馬渕部長は、穏やかで人当りが良い。
藤村課長は、仕事は出来るらしいが、厳し過ぎるせいであまり好かれていない。……正直、私にとっても苦手な人ではあった。
実は、課の人にはあまり知られていないが、部長には食事をご馳走になったことがある。勿論、2人きりではなくて、私の同期も一緒に。
まだ会社に馴染めないでいた頃の出来事で、そんな風に気にかけてくれる上司に感動したものだ。
誕生日には、素敵なハンカチを頂いた。
部下に声を掛けてくれて、励ましてくれるような穏やかな人だったが、会社にとっては、それだけでは通用しない。
最終的に生き残り、出世をしたのは、藤村課長だった。