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休養

「うん。

ちゃんと奴隷にできたわね。

それじゃ、人間界に戻るわよ。

レリエル、私達がいない間、ちゃんと魔王城を守っておきなさいよ」


リリさんは、俺がレリエルを奴隷にする姿を真剣に見ていた。

おそらく、俺がレリエルをかばって奴隷にしないことを懸念してのことだろう。


「わかりました」


「それと、今度戻ってきたときには、こんなまずいご飯は出さないでよ」


リリさんはそう言いながら、テーブルの上のっていたコップを投げたのだった。5mくらい離れているレリエルの顔に向かって。

コップの中に飲み物が入っているので、液体が飛びながら、レリエルに向かって進んでいく。


『ドン』

『ガチャァァン』


俺はレリエルに向かって投げられたコップを背中で受け止めたのだった。レリエルに当たるのを防ぐために。

肉体的には全然痛くない。

だが、リリさんがやったことは、見ていて嫌になるような行動だ。


「アレン、いったい何やってるの?奴隷なんかかばって」


リリさんは語気を強めて言ったのだった。

リリさんの奴隷への接し方、考え方が、行動によって徐々にわかってきた。ひどすぎる。

リリさんは、俺に対しても『奴隷』という言葉を使っている。

確かに、レリエルへの対応と違いを感じている。

が、『奴隷』と同じ言葉を使っている以上、方向性は変わらないのだろう。


レリエルを見ると、下を向いて、ドレスのスカートを手で『ギュッ』と握っていた。

レリエルとしては、いきなり魔王城を責められ、乗っ取られ、奴隷にされてしまった。

現状は、これ以上ない苦痛だろう。


「もう、これ以上はやらなくてもいいのじゃないでしょうか?」


俺はリリさんの方を見て言ったのだった。


「わかったわよ。

レリエル、壊れたコップくらい一人でかたずけなさいよ」


「わかりました」


レリエルはそう言った後、無言で割れたコップを片付けだしたのだった。

俺は片付けを手伝おうかと思った。

が、リリさんが俺を睨んでいるのでやめたのだった。

手伝うとレリエルに対して、また嫌がらせをしそうな雰囲気があったからだ。


「どうして人間界にに戻るのですか?」


「魔王を逃したものの、魔王がいた魔王城の占領できたんだから人間界に行って報告しなければいけないの」


リリさんは自慢げに話しをした。

魔物を1匹もたおしてないのに。

魔王城の占領をすることができたのは俺がいたおかげなのに。

リリさんとしては、奴隷がやったことは自分の手柄だと思っているのだろう。


「わかりました」


「じゃあ、アレン、まずこの町に瞬間移動して」


リリさんは地図を出しながら言ったのだった。


「わかりました」


俺はそう言ったあと、コップのかたずけ終わって立っているレリエルの方を見て、優しく微笑みかけた。

レリエルも気付いて、笑顔を作ったのだった。


そうして、俺は瞬間移動をいたのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



瞬間移動をして着いたところは、そんなに大きくない村だった。


「じゃあ、この村で、腹ごしらえしてから、教会に行くわよ」


「わかりました」


俺はそのままリリさんについていったのだ。

そして、案内されたのは、年期の入った木造の建物だった。

よく西部劇とかで見るようなお店だ。


「ここの料理は美味しいから、好きなものを選んで自由に食べていいよ」


「ありがとうございます」


俺はメニュー表を見せてもらった。

内容としては、アメリカンなメニューだった。

ハンバーガーやポテトフライ、海老の揚げ物などあった。

異世界らしくないメニュー。

異世界の人間界特有の美味しいお店を期待していたにもかかわらず。

旅行に行ったときの郷土料理を食べるように。


「初めてのお店だから決まらないか?

じゃあ、私オススメのものを注文しておこう」


「お願いします」


俺はメニューを見て食べ物を選ぶのがめんどくさくなって、リリさんのオススメを食べることにしたのだった。


「奴隷への扱いってあんなにひどいものなのでしょうか?

あっちの世界で奴隷はいなかったので、驚いているのですが……」


久しぶりに魔王城でないところで、2人きりで話せる機会ができたので、これ以上、不信感が増さないことを期待して聞いたのだった。


「驚かせてすまなかった。

魔王城でのレリエルやメイドへの対応は、やりすぎだったと反省している。

私より強い者しかいない魔王城にいて、警戒しすぎて緊張しててどこか気持ちがまいっていたのだろう。

それで、まわりに八つ当たりをしてしまってたのだと思う。

今回、人間界に戻ってリフレッシュして、また魔王城に戻ったときにはレリエルや魔王城の者達に優しくできるようにするよ。

それに、レリエルを魔王城の留守番を命じたのはそのためでもあるしな。

ちなみに、ここに料理店にきたのは、あっちの世界と変わらない料理を提供してくれるところだからだよ」


リリさんは村でより弱いのに、魔王城にいてずっと恐怖があったのだろう。

恐怖でずっといたら、確かに気持ちがまいってしまう。

今度、魔王城に行ったら、優しくするって言ってくれたことを信じよう。

仮に優しくできなくても、今回の魔王城での対応より良くなるだろうから……。



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