奴隷
「起きなさい」
俺はリリさんの声によって起こされたのだった。勝手に俺の部屋に入ってきて。
「急にどうしたのですか?」
俺は目をこすりながら答えた。
リリさんはどこかやつれた様子があった。
おそらく、昨日は眠れなかったのだろう。
「もう、朝よ。ちょっときなさい」
リリさんはそう言って、リビングの方に行ったのだった。
俺は仕方がなく、パジャマの上に黒いコートをきてリビングに行ったのだった。
リリさんはテーブルのイスに座っていた。
「遅いわ。
そしたら、朝食を持ってきている者がドアのとこにいるから案内させなさい」
そうか、リリさんは朝食を持ってきた者に襲われるんじゃないかと警戒して、俺を呼びに来たのだった。
だったら朝食を断ればよかったのにって思った。
が、プライドが許さなかったのだろう。断ると、魔王城の者にビビっていると思われると思って。
「どうぞ、お入りください」
俺はドアを開け、朝食を持ってきたメイドを中に入れたのだった。
そして、手際よく朝食を並べていったのだった。
「レリエルを呼んで」
リリさんはぶっきらぼうに、強気でメイドに言ったのだった。
なんでこんなに強気になっているのだろうか?
寝不足でおかしくなってしまったのだろうか?
なんだか心配だ。
「はい……」 『ガチャァァン』
メイドが返事をするのと同時に、皿を落としたのだった。
「いったい何やってるの?」
リリさんはメイドの左ほおを平手ではたいたのだった。
「ーーーす、すみません」
メイドははたかれたほおを手で押さえながら、座り込んでいる。
どこかで見た光景……、って、昨日、部屋決めの時のメイドにリリさんがやったことだった。
今回、朝食を持ってきたメイドは昨日のメイドと違う。
昨日のメイドは大丈夫だろうか?
「昨日、この部屋を案内してくれたメイドは大丈夫?」
朝食を持ってきたメイドが帰るときに、俺は気になって小声で聞いたのだった。リリさんに聞かれないように。
「実は、昨日のお仕事が終わってからいなくなってい……。
あっ、すみません。
今のは聞かなかったことにしていただけますか?」
「わかった」
俺はメイドに優しく微笑みかけたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝食が運ばれてきてから、30分ぐらいして、レリエルが俺達の部屋に来たのだった。
「遅くなってすみません」
レリエルはそう言って部屋の中に入ってきた。
色は黒だが、昨日と違うドレス。
「本当に遅いわ」
リリさんはレリエルの前でも強気だった。
昨日の食事の時に、レリエルによって劣勢にたたされたにもかかわらず。
「どのようなご用でしょうか?」
レリエルは丁寧な口調でリリさんに向かって聞いたのだった。立ったままで。
「レリエルはアレンの奴隷になってもらうわ」
リリさんはレリエルの顔を見て言ったのだった。見下したように。
「どうしてそうなるんですか?」
俺は驚いて聞いたのだった。
レリエルは表情を変えてない。
「レリエルが奴隷になれば、アレンがレリエルの生殺与奪権を握れることになるわ。私とアレンの関係のように。
そうなれば、レリエルを生かしておいていいわ。
アレンの意見に対する私なりの譲歩よ。
私がレリエルを奴隷にしてもいいんだけど、私はレリエルの顔なんてできるだけ見たくないわ。
だから、私の奴隷にしないの。
まぁ、結局は、奴隷の奴隷は、奴隷の主人の奴隷なんだから」
リリさんのいう俺の意見というのは、魔王城の者達の降伏を認め、降伏した者を殺さないことだろう。
だが、レリエルの意思を無視した内容になっている。
それに、リリさんのレリエルや魔王城の者に対する態度がひどすぎる。
本当にリリさんは勇者なのだろうか?
勇者って心の広く、優しい人をイメージしてたのだが、違ったのだろうか?
奴隷、奴隷って、普通は悪魔が言うことだろう。
「私は、アレン様の奴隷になってもかまいません」
レリエルは俺の方を見て言ったのだった。
「じゃあ、決まりね。
本人も納得していることだし、早く奴隷の契約をすましなさい」
「本当にいいのか?」
俺は心苦しかった。誰かを奴隷にするなんて。
俺がリリさんに奴隷だって言われたとき、どんなに辛かったことか。
それを、俺が誰かにするなんて……。
「奴隷と言っても、アレン様と特別な関係になれるので、むしろ光栄です。
早く契約をしましょう」
レリエルは、俺に気を使ってくれたのか笑顔で言ってくれたのだった。
魔王城の者達のために自分を犠牲にするなんて、こっちが勇者なんじゃないだろうか。
「わかった」
俺はレリエルに感謝して、そう言ったのだった。
レリエルの主人になった俺が、レリエルにひどいことをしなければいいだけなんだから。
「そうよ。この私のおかげなんだからね」
リリさんは満足そうな顔をして言ったのだった。自分の思い通りになったのだから。
そうして、俺はレリエルを奴隷にしたのだった。
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