約束
「レリエル。今日からあなたは『囚人』だから、わかったわね」
リリさんは、ゼリエルが作った秘密基地に戻ってきて言ったのだった。
魔王城での食事などのうらみをはらそうとしているのだろう。
ちなみに、ゼリエルの秘密基地を知っているのはレリエルだけとレリエルが言ったのと、レリエルだけしか知らないという証拠はないが結局行くところがないので戻ってきたのだった。
そして、レリエルは興味なさそうに、
「そうですかぁ」
と答えたのだった。
「『そうですかぁ』って言い方はないでしょ?」
リリさんはそう言いながら、レリエルをはたこうとしたが、はたけなかった。
レリエルが腕でさえぎったのだった。
「アレン様に助けてもらったので、リリには関係ないわ」
こないだまでは『リリアーナ様』と呼んでたのに、『リリ』と呼び捨てにしている。
もう、魔王城での上下関係はなくなってるとかんがえてるのだろう。
リリさんは、レリエルの話を聞いてさらに怒りがます。
「いいわ。あなたは1週間エサをあげないわ」
「どうぞご自由に」
レリエルはため息まじりに、つまらなさそうに答えた。
「本当にあげないから覚悟しなさいよ」
「いいですよ。それより、アレン様。
2人で遊びましょう」
レリエルは俺の腕にくっついてきた。
「「ーーなっ」」
リリさんはレリエルの予想外の反応で驚いたが、こんな状況でこれ以上どうしようもない。
それに、食事をここに準備したのはゼリエルなのだから、リリさんがレリエルに食事をあげるあげないの話をするのは間違っている。
そして、驚いた声は、リリさんの他に、ミカもあげ話し出したのだった。
「あとからきて、アレンになにくっついてるのよ」
「えっと、どちら様で?」
レリエルは話しかけられたので、仕方がなくこたえている様子だ。
だが、ミカはその対応に怒ったらしい。
「『えっと、どちら様で?』じゃないでしょう?
そっちから、名乗りなさい」
レリエルは俺から離れ丁寧にお辞儀をして言い出す。
「失礼いたしました。
レリエル=サンストーンと申します。アレン様の婚約者になります。
ところで、あなた様は、うちのアレンとどのような関係で?」
「なななななっ?」
「元婚約者よ。アレンを騙してそうさせたんだから。
囚人が強がっちゃって」
リリさんがミカを自分の仲間にするチャンスと思ったのか、レリエルにとって嫌な情報をだす。
確かにこんな状況になった以上、婚約も当然なくなっている。
「なぁ〜んだ。
私はアレンの仲間よ。囚人は仲間以下よね」
ミカは胸を張っていった。レリエルより上の立場で満足そうだ。
「ふぅ〜〜ん。
私はアレン様の奴隷だから上ね」
レリエルも負けじと胸を張って言った。
だが、奴隷の方が上ってどういうことだろうか?
「何言ってるの?
囚人で奴隷だなんて、仲間の下の下じゃない」
「そんなことはないわ。
奴隷ってアレン様が、私を欲しいときにいつでも呼び出せるんだから。
それに、こないだだって……。
ーーきゃっっ」
レリエルはわざとらしく両手で顔を隠した。まるで恥ずかしそうに。
「なにもなかっただろっ!」
おそらくレリエルは俺が間違ってレリエルを夜中に呼び出してしまったことを言ってるのだと思って、俺は慌てて言ったが、リリさんとミカににらまれる。
それで、俺がさっきの言葉に何か付け加えようとしたときに、ゼリエルが話し出した。
「レリエル。そろそろ我々がいなくなったあとのことを話してくれないか?」
ゼリエルは、魔王城にいるときレリエルに『様』をつけて呼んでたが、もう魔王城に勤めているわけではないので呼び捨てにしたのだろう。
「わかったわ。でも、私もよくわかってないのよ。
アレン様達がいなくなったのがわかって、前の魔王に伝えたら帰ってきたの。
そしたら、すぐに私が捕まえられ、処刑されそうになったの」
「罪状は?」
「よくわからないわ。
処刑の前に言ってたのは、まだアレンの仲間で、魔王を殺すために計画を練っていて、魔王城に呼び寄せたって言ってたわ」
「そうか。
仮とはいえつかえていた相手にこういうのはなんだが、私もリリアーナ様が言うように、囚人という扱いも仕方がないと思っている」
「ーー、ーー。
でも、私は公衆の前で殺されかけてるのよ」
レリエルはゼリエルを必死に説得しようとしている。
さっきまでとは雰囲気が全然違う。
「それも我々をゆだんさせる罠かもしれないと考えられる。
あなたは私が秘密裏に作った秘密基地の場所も知っていたし、色々と怪しすぎる」
ゼリエルは真剣な面持ちでレリエルを見ている。ややにらんでいるようだ。
「ーーうっ」
レリエルは何か言おうと考えているようだが、なかなか言葉が見つからないらしい。
レリエルは必死に俺の服を握ってきた。
「だが、最終的にはアレン様に判断を任せようと思っている。
アレン様がいないと私もミカも困ってしまうからなっ」
「貸しってことか?」
俺に話がまわってきたのでゼリエルに聞いたのだった。
「いや、貸しではない。
私はアレン様とそういう損得勘定でつきあいたくはない」
「ありがとう。
じゃあ、レリエルはもう絶対に裏切らないと約束できるよな」
俺は確認のためにレリエルの顔を見て聞いた。
「もちろんです」
レリエルも俺の目を見てうなずきながら言ったのだった。
「わかった。
じゃあ、仲間に加えよう」
そうして、レリエルも仲間になったのだった。




