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「だけど、なんでリリさんのことを天界が狙ってくるのだろうか?

アスタトロがリリさんを仲間に誘ってきたのも、もしかしたらアマイモンとアプローチが違うだけで、結果は同じなのかもしれないし……」


こんなところまでアマイモンがリリさんを追ってきたのを、不思議に思って俺は言ったのだった。


「なにそれ。

アレンは私が弱くて役に立たないのに、なんで私を欲しがってるのか不思議って聞こえるんだけど。

ひょっとして悪口を言ってるの?」


「そんなことはないです」


俺は悪口で言っているわけではないけど、そう思ってるんだよと思いながら、言葉では否定した。

ただ、リリさんは自分で『弱くて役に立たない』と言ったってことは、自分でもそう思っているのだろう。


「もしかしたら、勇者の一族に何かしら特別な力があるのかもしれません」


ゼリエルが俺を助けるように話しに加わってくれた。

よくやった。


「やっぱりそうよね。偉大な勇者の一族にだけ持っている隠された力があるかもしれなくて、それをねらってきてるのかもしれないわよね」


リリさんは勇者の一族ということを褒めると喜ぶタイプらしい。

今後、リリさんとうまくつきあうために、おぼえておかなければ。

ただ、リリさんが言ってることはすべて仮定の話だ。

『〜かもしれない系』の。


「でも、勇者の一族だけにある特別な力ってなんなのでしょう?」


俺はリリさんが話した内容が、仮定の話ばかりだったので、もしかしたら奥の手があるのじゃないかと気になって聞いたのだった。


「知らないわ」


リリさんはきっぱりと答えたのだった。

きっと奥の手とかも隠してはないのだろう。

もしくは、リリさんは本当はものすごい力を持ってるのに気づいていないだけか。

できれば、気づいてない方でお願いしたい。

もし、奥の手があれば、俺が助けてもらうときがくるかもしれないからだ。


「アレン様。

実は昔から続くと言われている一族には、世界を変えるような力を持っていると言われてます。

その力なのですが、何代も代替わりをするうちに、遠い昔のことなので、どんな力があるのかわからなくなってしまっているのです。

たとえば、ミカが受け継いだ指輪もそうですし、私も同様の物を持ってます」


ミカが受け継いだ指輪とは、ミカが身につけたとたんに強く光ったものだろう。


「そうすると、リリさんは、勇者の一族が受け継いできた物って何かあるのですか?」


「それはこの剣よ」


リリさんは腰に身につけていた剣を持ち上げた。自慢げに。

俺が最初に見たときに、身分不相当と思った剣だ。

そういえば、どっかで見た剣に似ている。

そうだ、こないだ俺がクレールからもらった剣と色違いだ。

俺のは赤だったけど、リリさんのは青い。

何かしら意味があるのだろうか?

俺が剣を持ったときは炎の鳥になったから、リリさんの剣も何か他の動物に変わるのかもしれない……。

しかし、あの剣を譲り受けたものの、どんな意味があるのかわからない。

ゼリエルに聞いてみるか。

俺はそう思って、炎の鳥になる剣を出したのだった。


「アレン。いつの間にそんな剣を手に入れたの?」


リリさんがすぐにくいついて言ってきた。なんか不満がありそうだ。

自分の知らないうちに、なにかやって、剣をてにいれたことへの不満だろう。

それに、リリさんが持っている剣の形が似てると思ったからだろう。


俺はせっかくの機会だと思って、ミカと知り合った経緯も含めて、リリさんに話をした。


「ふぅ〜ん。私の知らないところで、そんな勝手なことをしてたんだ」


リリさんからの視線が痛い。なんか俺がいけないことをしたような空気が作られてる。


「いや、そんな勝手なことをしてたわけじゃないんだけど……」


俺は必死に流れを変えようとした。

だが、どうすればうまく変えられるのかわからない。


「アレンがいなかったら、私は死んでたのかもしれないので、そんなに責めないでください」


ミカが俺に援護射撃をしてくれたのだった。

もっと、俺の援護射撃をして欲しい。

このままでは、リリさんの視線で俺が撃沈してしまう。

ちなみに、リリさんとミカが初対面の自己紹介が終わったあと、偽名の『アシム』という呼び方でなく、『アレン』と呼んでもらうように伝えたのだった。


「ふぅ〜ん。あなたが……。ねぇ……」


リリさんはミカを値踏みするように見だした。

なんでそんなことをするのだろう。


「リリさん。言ってる内容がわからないのですが?」


ミカはリリさんに見られ嫌そうな顔をしてたので、聞いたのだった。


「アレンは、こういうのがタイプなんだなって思って」


リリさんにミカの紹介を軽くしたときに、リリさんが『魔王の一族の女の子が好きだもんね』と言っていたのを思い出した。

それで、こんなことを言い出したのだ。

だが、まだ会ったばかりなのに、そんなことを言い出すなんて失礼だ。

俺は、そう思ってミカの方を見たら、なぜか両手でほおを当てて顔を赤らめていた。

いったいどうしてしまったのだろう?

リリさんとの会話の流れはいったん無視して、ゼリエルに話題をふろう。


「ゼリエル。この剣のことを何か知ってる?」


「すみません。詳しくは知りません。

ただ、その剣も指輪持ちの一族と同じで、世界を変えるような特別な力があるって聞いたことがあります」


「そうか、剣が炎の鳥に変わるので特別な何かだと思っていたが、ケッコー重要なアイテムみたいだな」


「剣が炎の鳥に変わったのですか?」


ゼリエルが驚いた表情で、聞いてきた。

そういえば、ゼリエルに剣が炎の鳥に変わったことを話してなかったし、ミカもはなさなかったのだろう。


「そうなのだ。

クレールからもらったときに最初に触ったら、炎の鳥に変わったのだ」


なんかまずいのだろうか。

不吉な前兆とか、不幸の前ぶれとか……。


「本当にすごいことです。

その剣に、真の所有者があらわれたときに、炎の鳥に変化するという言い伝えがありました。

だが、ここ数百年、炎の鳥に変わったことがなかったので、ずっと伝説上の話だとされてきました」


おお、なんか数百年に一人の逸材って言われたような気がしていい気分だぜ。

だが、なんか大変なことに巻き込まれてってしまう可能性もあるのだろうか?


「ですが、どういう剣なのかも、指輪と一緒で忘れ去られてしまってます。

まあ、雑談はこの辺りで終わらせて、休みましょう。

アレン様。私が先に見張りをしますので、先にお休みください」


ゼリエルは剣の情報を少し付け加えたあと、休むことを提案してきたのだった。

確かに、夜遅くなって時間が過ぎてる。俺も眠い。

だから、ゼリエルの言葉に甘えて眠ることにしたのだった。

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