扉
「あっ、アレン様、思っていたより戻ってくるのが早かったですね」
ゼリエルは兵舎で待ってくれたのだ。
いつも通りの様子だった。
「リリさんの部屋がレリエルに襲われた。
それで、思ってたより早くこっちに来ることになってしまった」
俺はややあせり気味に伝えた。
もし、レリエルに内通しているものがいたら襲われる可能性があるからだ。
俺は襲われても簡単に返り討ちにすることは可能だが、どこから狙ってくるかわからないものを対処し続けるのは疲れる。
「なにっ?それは初めて知った。
それであれば、早くこの場から逃げた方がいいのだろう」
ゼリエルは慌てたように、通路を駆け下り、ミカのところへ向かった。
そして、俺とリリさんはそれに続いた。
「ーーえっ。
急にどうしたの?」
ミカが驚いたような声を出した。
ちょうど夕飯を食べているときで、くつろいでいたようだった。
「事情はあとで話す。今すぐに逃げる必要がある」
ゼリエルはミカに向かって言った。
ゼリエルの表情が険しくなっており、息を切らせていることから、緊急事態であることがミカにも伝わる。
そして、ミカは急いで支度を始めた。
「逃げるなら俺の瞬間移動で行くが、どこにする?
地図で教えて欲しいのだが……」
「わかりました。では、魔王城のある国の塀のそとの森。このあたりにお願いします」
ゼリエルが地図を出して、指をさした。
ゼリエルは緊急事態を想定して逃げ先もあらかじめ考えていたのだろう、すぐに迷いなく答えた。
「わかった」
俺はミカの支度が終わったのを確認して、リリさんとゼリエル、ミカの3人を連れて瞬間移動をしたのだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
着いた場所は、森の中だった。魔王城からそんなに離れていない場所。
薄暗く、魔獣の気配を感じる。
が、人気はないようだ。
「どうしてここに?」
「こういう時のために、私がひっそりと秘密基地を作っておいたのです。
歩いてすぐですのでご案内します」
ゼリエルはそう言って、歩き出した。
俺とリリさん、ミカはゼリエルについていく。
途中、魔獣が襲ってきたので、俺とゼリエルで難なく殺していった。
「さあ、ここです。お入りください」
ゼリエルに場所をしめされ、地下通路を歩いて行った。
兵舎にあったのと同じような作りになっていた。
が、長い。ここに来るときは一大事のときになるだろうから、色々細工をしてあるのだろう。
途中で、ゼリエルがあとから追ってきて、先頭を歩き出した。
誰も中に入らないように、通路の扉を魔法か何かで隠してきたのだろう。
「この扉を開ければ、部屋になっています」
そう言って、ゼリエルが、扉を開けた。
「遅かったね。待ちくたびれたよ」
誰もいないはずの部屋の中から、女性の声が聞こえてきたのだった。




