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兵舎

夕焼けになってきたころ、俺はゼリエルに案内され、魔王城内を歩いていたのだった。


「アレン様。急におよびしてしまってすみませんでした」


ゼリエルは普通より早いテンポで歩きながら言ったのだった。

急いでいるが、どんな用事なのだろう。

俺をめんどくさいことに巻き込もうとしているのだろうか?

もう、これ以上巻き込まないでほしい。


「いや、大丈夫だよ」


俺はゼリエルに、レリエルとエミリーについて心配かけたくなかったので、笑顔で答えた。

ゼリエルに呼び出されたということは、プライベートなことでなく、魔王城の業務に関することだと思ったからだ。


「そうですか。

内容については私の部屋についてから話したいと思います」


ゼリエルはそう言ったあと無言で俺の前を歩いて行ったのだった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「どうぞお入りください」


俺はゼリエルに兵舎の奥にある通路に入るように言われた。

通路に入るときに、魔力を感じたから、なにか仕掛けがあるのだろう。

ゼリエルが許可したものでないと入れないような。


「あっ、アシム」


ゼリエルに言われた通路を進むと、部屋があり、そこにミカがいたのだった。

ミカは服がボロボロで、ところどころに血が出て傷があった。


「どっ、どうしてここに?」


俺はミカに聞いた。普通に考えて、ミカがこんなところにいるはずがないのだ。


「すみません。アレン様。

驚かせてしまって。

私は、ミカと同じグループに所属する者なのです。

それで、ミカが困って、私を頼ってきたのでかくまってました」


ゼリエルが困った表情をしながら言ってきたのだった。

ゼリエルが魔王城の忠臣ではなく、反魔王城のミカのグループだったのは驚きだ。


「アシム。

今日の朝、あなたとわかれたと、グループで信頼できると思ってた人のところに行ったの。

そしたら、なにも言われる前に攻撃を受けたの。

それで、いくつかまわったのだけどダメだった。

だから、最後にゼリエルをダメもとで頼ってきたの」


ミカはくやしそうに話した。

ここに来るまでに色々あったのだろう。つらいことが。

信用できる人に裏切られたりして。


「おそらくグニラの根回しの方が早かったのでしょう。

グニラにとって前の頭領が後継者と認めたミカが邪魔になるはずですから……」


「そうか。そしたらまずは手当を」


俺はそう言って、ミカに近づき、治癒魔法をかけた。

浅い傷が多かったようで、みるみるうちに治っていく。


「ありがとう。アシム」


ミカは作り笑顔で俺に言う。

だが、すぐに悔しそうな表情にもどる。


「すみません。私は治癒魔法があまり得意ではなくて」


ゼリエルは気まずそうに言ってくる。


「こないだゼリエルが言っていた役割分担ってやつだろ?」


俺はゼリエルに冗談ぽく言ったのだ。

ゼリエルから言われた言葉を使って。


「あはは。そうですね」


「それで、これからどうするつもりなのだ?」


俺は話が長くなりそうだったので、イスに座りながら聞いたのだった。


「アレン様。

単刀直入に申し上げますと、我々の仲間になっていただけませんか?

こないだのように、お遊びでなく。本当に」


ゼリエルは口には出さないけど、おそらく俺がグループの活動に参加したことはばれているのだろう。

そして、話し終わる最後に『本当に』と付け加えたところから、重要さがわかる。


「急な話だな」


俺はいきなり『我々の仲間になっていただけませんか?』と言われても困る。

今は、魔王城の城主なのだ。

それに、リリの相談をしないと、こんな重要なことは決められない。


「我々の仲間は、私とミカしかいません。

だから、魔王城の主たるアレン様に仲間になって欲しいと言うのは心苦しいところです。

が、アレン様は現状のままでいいと思ってますか?魔王城の運営がうまくできてない状況で」


確かにゼリエルの言うとおりだ。

魔王城の運営はうまくいってない。人手不足だったりして。

それに、外部環境も良くない。

前の魔王がまた大軍を率いて攻めてくる可能性があったり、盗賊がいたりする。

行き詰まりを感じていたのは確かだ。


「考える時間をくれないか?」


「できれば早くきめていただきたいです。申し訳ございませんが。

それに、あの弱い勇者はどうなってますか?

今後、勇者と別々の部屋になったと聞いてます。

すると、ますます勇者の身の危険が増えると思いますが……」


そう、リリさんの村人よりも弱い力からも、魔王城から出た方がいいと言うのはわかる。

魔王城にいるとまわりは敵だらけのようなものなのだ。

リリさんはいちお、勇者なんだし。


「うぅ〜ん。確かに。

だが、レリエルが色々とやってくれてたと思ってたのだが……。

魔界で2番目に大きい国と連絡を取り合ってたりして」


「魔界で2番目に大きい国とは友好関係にないのでそんなことはあり得ないと思いますが……。

それに、こないだ前の魔王が攻めてくるタイミンが良すぎたと思いませんか?

アレン様がいないときに攻めてきて」


「それは不思議に思ってたが……。

偶然じゃなかったのか?」


「あれは、レリエルが前の魔王と内通してたのですよ。

前の魔王が逃げたあと、レリエルとやりとりしてる間者を捕まえて聞き出したので間違いないです」


レリエルの行動を疑問に感じてきていた。

そんななか、そう言われるともっともな内容に聞こえてくる。


「わかった。

リリさんに相談させて欲しい」


「わかりました。良いお返事をお待ちしてます。

ただ、ミカをかくまっている以上、ここで待てるのは1日が限界です」


「わかった。また連絡をしにくる」


そうして、俺はゼリエルにこの部屋から兵舎に連れてってもらったあと、リリさんのところに瞬間移動をしたのだった。


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