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違和感

「まあ、みんな楽しくやれるように、仲良くしましょう」


レリエルはそう言って、朝食の時間は終わったのだった。


「エミリーは朝食の食器とか片付けてすぐに私のところにきなさい。

そうねぇ〜。今から10分くらいかな?」


レリエルはそう言って楽しそうに、鼻歌を歌いながら行ったのだった。

なにかたくらんでいるような様子だ。


「今から10分以内なんて大丈夫なんか?」


ここを片付けて食器を置きに行くだけでも10分はかかってしまう。

明らかに嫌がらせのような制限時間だ。


「いいえ。10分以内には……。

なんでもありません。大丈夫ですから……」


『10分以内には』の後に続く言葉は、『終わりません』が続くのだろう。

朝、エミリーはレリエルに口答えをしていたが、すでになんらかの刑罰を受ける覚悟でやっていたのだろう。

どうせ刑罰を受けるくらいなら、言いたいことを言った方がマシだと……。


「わかった。俺も手伝うよ」


俺は目の前にある食器を片付けだした。

かわいそうな気がしたのだった。

それにエミリーのような可愛い女の子によく思われたいっていう下心がちょっとはあった。


「いいえ。大丈夫です。

それに、もしご主人様に手伝ってもらったことがばれたら……」


エミリーは、泣きそうな声で徐々に声を小さくさせながら言ったのだった。


「わかった。なんかあったら、俺にすぐに言えよ」


エミリーは、クラスにいたら一番可愛いと思うような女の子。

なんかあったら力になってあげたい。


「ありがとうございます。

でも、なんでご主人様は私にそこまで優しくしてくれるのですか?」


エミリーは、涙目で、俺に聞いてきた。

可愛い。正直守ってあげたくなる。


「ーーーうっ……」


だが、俺は、あっちの世界の学校のクラスにいたら一番可愛いだろうなと思ったからと素直に言っていいものか悩んで、言葉を詰まらせた。

そして、どう伝えていいものか、悩み、ほおを人差し指で2、3回かいた。ポリポリと。

俺のことを見ていたエミリーはなぜか次第に顔を赤らめて、下を向いて、ボソボソっとつぶやきだした。


「ーーーあの……。

やぱり……。

いやっ……。その……」


「んっ、どうしたの?」


「私の体が欲しいからなのですか?」


エミリーは下を向いていた顔を俺の方を見て、必死に言ってきて、抱きついてきた。

胸があたってやわらかい。


「ーーーえっ、えっ……。

どうしてそんなことに?」


俺は考えもしなかったことを言われて混乱している。


「だって、今日の朝、私の体を『ジィーーー』っと見てましたし。

下着姿で抱きついたとき、とても嬉しそうな顔をしてましたし。

今だって……」


エミリーが俺の左手を右手でつかみ、胸にあてた。

やわらかい。できれば、利き手の右手で感触を味わいたかった。

いや、いや。ダメだ。相手が弱っているのを利用して、こんなことをしては。


「いや、俺は、そんなに『ジィーーー』っと見てたか?

嬉しそうな顔をしてたか?」


俺は左手を引っ込めて、とりあえず疑問に思ったことを聞いた。


「『ジィーーー』と私の体を舐めまわすように見てました。

私はとっても恥ずかしかったのですが、メイドがご主人様にさからってはいけないと思い、必死に我慢をしました。

これではもう、お嫁にいけない。

ご主人様。責任を取っていただけませんと……」


エミリーは、涙を一粒こぼしながら上目づかいで言ってきた。

この行動はさすがに演技で、俺を騙そうとしてるんじゃないか?と思った。

なんだかんだで、最初からエミリーの行動は変だ。

俺の部屋にいきなりきて、部屋に誘ってきた段階で。

だが、恋愛をしたことのない奥手な俺は、自分から積極的に女の子に対してアピールできない。

だから、こうやって可愛い女の子から積極的にアピールされるのは、正直、嬉しい。

嬉しすぎる。たとえ、罠だとしても。

魔王城にいる女の子で、レリエルも俺にアピールしてきてくれてるが、なんとなくお高いというか、上から目線というか、疲れるというか……。

なんとなく俺がレリエルの気持ちを理解して、積極的にせまってきてって感じだ。

だが、エミリーのアピール方法は違う。

俺が何もしなくていい。

エミリーから全部行動を仕掛けてきてくれる。

そこまで俺のことを想ってくれるなら、騙されてもいいって思ってしまう。

騙してきてるのかどうかわはわからないけど。


けど、


「責任とは?」


と俺は言ってエミリーをじらす。

なんて言ってくれるか楽しみだぜ。


「ーーーえっ……」


あれ、何も言ってくれない。

でも、言葉を詰まらせて、顔を赤くして、じっと下を向いている。

そんな姿も可愛い。

しかも、エミリーはメイド服を着ている。

ご主人様と危ないメイドの関係って感じだ。いけないことをしているような。

確かにいけないことをしているのだろう。

俺にはレリエルという婚約者がいるんだし……。


『ドン、ドン、ドン』

「エミリーはいる?いるんでしょ?」


レリエルの怒った声が聞こえてきた。

時計を見ると、20分くらいすぎてしまっている。

時間を気にしないで、エミリーとのやりとりを楽しみすぎた。

もしくは、俺がレリエルのことを考えたのがまずかったのか?

声には出してないが、噂をすればなんたらというやつだ。


『ドン、ドン、ドン』

「さっさと、開けなさい」


レリエルがドアをたたく力が強くなり、声も大きくなった。


「あれっ?

いつも勝手にドアを開けて入ってくるのにどうしたんだろう?」


俺は不思議に思ってつぶやいた。


「あぁ〜。

邪魔者が入ってこないようにちゃんとドアの鍵を閉めたのですよ。

ちゃんと勇者様の言いつけを守りました」


エミリーは笑顔で言ってきた。褒めて、褒めてという言葉が聞こえてきそうだ。


「確かに邪魔も……。じゃない。

エミリー。どうするつもりなんだ?」


確かにせっかくの楽しい時間を台無しにした邪魔者だ。

だが、そんなことを言葉に出せない。

俺はエミリーを心配そうに見た。


「ご主人様。助けてください」


エミリーはそう言って俺を強く抱きしめてきた。

可愛い女の子から必死に抱きしめられて、助けを求められるのは、男として悪くない。

いや、とっても嬉しい。守りたくなる。

だが、エミリーは俺をうまく利用するつもりだったのだ。最初から。

これを騙すととるかは、論議がありそうだが、あまりいいこととは言えない。

どう対応するか困る。エミリーを助けるか、助けないか。

助けない場合には、レリエルに引き渡す。そしてレリエルが、エミリーを調理 (お仕置き)をすることになるのだろう。鞭打ちとか。

俺がやりたい放題したいエミリーの体に対して。

……、……。

そんなことはダメだ。絶対にさせてはいけない。

鞭打ちするなら俺がやる。せめて、俺の前でやってくれ。

って、俺にはそんな趣味はないが、鞭打ちにさせてたまるか。

じゃあ、あの怖そうなレリエルからエミリーを守る価値があるのだろうか?

レリエルがドアを何度も叩いてる音が聞こえる中、俺はふと、エミリーの顔を見る。


『んっ?』


エミリーは、俺がエミリーを見たことを不思議そうに、首を傾げ、上目づかいで見てきた。

可愛い。

男心をくすぐる。


「私を助けてくれましたら、ご主人様に身も心も捧げ、精一杯尽くします」


エミリーは上目づかいのままそう言った後、ほおを押しつぶすように抱きしめてきた。

エミリーの言ったことは、俺にとって十分守ってあげるに値する言葉だった。

エミリーは、意地悪をしながらこき使い気に食わないことがあったら全身鞭打ちにするレリエルより俺につかえた方が楽だろうと思っているのだろう。

が、俺はそんなエミリーの損得勘定があるとは気づいていたが、気づかないフリをした。自分の心に対して。


「じゃあ、なんてレリエルに伝えよう?」


俺はエミリーに聞かずに自分で考えるつもりだったが、こんな状況が初めてだったので、ついつぶやいてしまったのだ。


「大丈夫です。ご主人様。

ちゃんと考えてあります」


エミリーは俺のつぶやきを聞き逃さず話しかけてきた。


「んっ。何?」


「『この女は、俺のもんだ!誰にも手を出させねぇ』っておっしゃっていただければ大丈夫だと思います♡」


なんだこのセリフは?なんか方向性を間違ってる気がするぞ。

だが、俺自身でセリフが思い浮かばない以上、そのまま言ってみるか。


「わかった」


俺がそう答えると、エミリーは満足そうな顔をした。

そして、俺がドアを開ける。


「ノックしたらちゃんと開けなさいよね」


部屋に入ってきたレリエルは、まず俺を怒った。

レリエルの怒り具合がすごかったので、右足を一歩引いてしまった。

怖すぎる。顔つきというか、怒りのオーラがでている。


「エミリー。私が言ったことを守れないなんて、アレン様がどんなにかばったてお仕置きするからね。

覚悟しなさい」


レリエルはものすごく怒った顔でエミリーを見て言った。

エミリーは俺の背中に抱きついてきた。

エミリーのなんかこういうところがいいんだよなぁ〜。

頼ってきてくれるって気がして。

俺をうまく利用するための行動かもしれないけど……。


「ご主人様。早く」


エミリーは俺の耳もとで小さく呟いた。

レリエルはエミリーの態度が頭にきたらしく、エミリーに近づき髪を引っ張た。

それを見て、俺はレリエルの手をつかみ、エミリーから教わった言葉を言う。


「この女は、俺のもんだ!誰にも手を出させねぇ」


レリエルは『ぽかーん』とした。

あまりにも予想外の言葉だったのだろう。俺も言ってみて、すごく違和感を感じた。

だが、こういう修羅場に慣れているであろうレリエルは、頭の中で色々考え、どうしてこうなったか正しい解答を導き出す。


「エミリー。アレン様をたぶらかしたのね。

ふぅ〜ん。いいわ。後で覚えてなさい」


レリエルはそう言って、すぐにどっかに行ってしまったのだった。

エミリーは、『べー』ってレリエルが見えなくなるまでして、してやったりという顔をしている。


「ありがとうございます。ご主人様。

これからも誠心誠意尽くしますね」


エミリーは笑顔で、満足そうに言ってきたのだった。

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