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グループ

「待て」


さっき俺にぶつかってきた女の子に走って追いつき、手をつかんだのっだった。

髪の色はブラウン。後ろで髪を縛っており、肩ぐらいの長さだ。

顔はとびっきりかわいいというわけではないが、整っている印象を受ける。

学校でいうと運動神経が良く、陸上部にいそうな印象を受ける」


「なんだよ。

別に何も取ってないんだから、捕まえるなよ」


あれ、目の前女の子はスリしようとしたことを、自分から認めちゃったよ。

俺がどうやって認めさせるか色々考えていたにもかかわらず。


「いや、犯罪を犯した以上、警察に突き出す」


俺はこの女の子の事情を聞き出すために、『警察に突き出す』と脅してみることにしたのだった。


「犯罪?、警察?、笑っちゃうね。

この国にそんな言葉なんてないようなもんじゃないか?

そんなことを言っているお前も、こんな人気のない裏道で女の子を捕まえて変なことをするつもりだったんだろ?」


この女の子はさげすむように言ってきた。

まるで犯罪者を見るかのように。

っていうか、俺はまだなにもやってない。むしろ犯罪を犯したのは女の子の方なのだ。

確かに裏道の人気のないところで女の子を捕まえていると、間違った方向で勘違いする者も出てくるだろう。

こうして、冤罪が生まれていくのか……。

それに、『犯罪』と『警察』を疑問系で言ってきたのは、全然機能をしていないってことだろうか?


「いや、そんなことはない。

って、いうか、なんでスリな……」


俺が『なんでスリなんかを?」と聞こうとした瞬間、ナイフが飛んできた。俺が女の子を捕まえている手に向かって。

そして、俺はナイフを避けるために、女の子を離した。

女の子の仲間なのだろうか?


「そこにいる女の子をもらおうか?」


男達が10人くらいいる。ガラが悪そうだ。

それぞれ、棒とかの武器を持っている。

女の子は男達を見て、背中に手をまわし、30cm程度の小刀を出し、なにも言わずに男達に斬りかかった。


「おぉっと、いきなり斬りかかってくるなんて、行儀がなってないな。

こないだ俺達から奪った物を返してもらうぜっ」


男達は女の子の小刀をかわしながら、攻撃の体勢を整え、棒でふりかかる。

女の子は確かにこういった場所での戦闘に慣れているようだが、男達の人数が多く圧倒的に不利だった。

男達の攻撃を受けて、動きが徐々に鈍ってきている。

このままでは、女の子はやられてしまう。


「俺達の争いに関わってくるなよ。お前も痛い目にあうことになるぞ」


俺は女の子に振り落とす棒をつかみ、守った。

俺は女の子を助けることにしたのだった。どっちがちゃんとした理由で動いているかわからない。

だが、


「複数の男達で女の子を襲うなんて、褒められた行為とはいえないな」


と思って、女の子を助けることにしたのだった。

この言葉もあっちの世界にいるときに小説を読んでて言ってみたかったセリフだ。

そして、俺は男から棒を奪い取り、薙ぎはらい、数人まとめて吹き飛ばしたのだった。

男達は俺に勝てないと思ったのだろう、その一発で逃げてったのだった。

よかった。よかった。これで、女の子とゆっくり話せる。


「もう大丈夫だよ」


俺はそう言いながら、女の子がいる方を見た。


(あれっ、いない……)


女の子はいなくなっている。

俺が男達をたおしているときに逃げたのだった。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「おい、おい。

せっかく助けてあげたのに逃げちゃうなんてひどくないか?」


俺は女の子が逃げてしまうことも想定して、魔力の気配を覚えておいて、追跡したのだった。

そして、また裏道の人気がないところ。


「ふん。

お前も私を襲おうとしてるんだから、一緒だ。

そんなに私のことが気に入ったのかい?」


女の子は俺を笑いながら、やや見下しながら言ってきた。

おそらくこういう場面での対応方法も慣れているのだろう。


「いや。そういうわけでなく……。

その……、食べ物に困ってて、盗賊の仲間にいれてもらえないかって思って……」


女の子はさっき俺のコートの中をさぐって、お金を持っていないことを知っている。

それに、男達から『俺達から奪った物を返してもらうぜっ』って言われていた。

女の子が裏道で襲われている状況から、1人では男達から物を奪えないだろう。

それなりの盗賊の集団だと推測される。

そう考えて、俺は仲間に入れてもらうように頼んだのだった。


「私達は盗賊なんかじゃない‼︎」


女の子は急に怒った表情をして、大声で言ったのだった。


「……えっ?」


スリををやったり、人から物を奪ったりしているのに盗賊じゃないってどういうこと?

せっかく仲間に入れてもらうチャンスだと思ったのに、怒らせて、失敗してしまったのだろうか?


「すまない。大声を出して。

食いぶちを探してるってことだが、やられている私なんかを助けて、なんでさっきの男達につかなかったんだい?」


「女の子を複数の男達で襲うような卑怯な行動は俺の心情に合わない」


俺は女の子に向かって、目を見ていった。

女の子も俺の目を見てくる。


「わかった。お前、この国に最近きた奴だろ?

正直言って怪しいけど、強い奴は不足しているから、私から頭領に話しておいてやる。

今日の18時ごろ、ここに来れるか?」


女の子は俺にそう言って地図を見せてきた。

こないだ敵軍が来た時に俺が戦った場所の近くなのでわかる。

それに、やはり警戒して、すぐに隠れ家に連れてってくれないのだろう。


「わかった。

けど、『さっきの盗賊なんかじゃない』ってどういうこと?

どんな集まりなのか教えて欲しいのだけど……」


「うっ……。

ーーー、ーーーー。

どいせお前のことだ。教えないと警察に突き出すとか言い出すんだろ?

それに、逃げたって捕まえに来るし」


「まぁな」


俺は女の子に言われたほどそんなにしつこい性格ではない。

でもせっかく話してくれる雰囲気になったのだ。

流れに乗っておこう。


「この国にには、政府に属さないグループがいくつかある。

その中で大きいのは3つ。

1つ目は、私達のグループ。300年位前にこの国を治めていた魔王一族のグループになり、復権を目指している。

つまり、前の魔王の先祖がたおした魔王の一族ってことだな。

このグループは、昔の魔王から続いているだけあって仲間は多い。農民や商人、それこそ魔王城の兵などにもいると聞いているわ。

2つ目は、今の魔王にたおされた魔王の残党。

前の魔王が逃げて、こないだこの国を取り返しに大軍を率いて戻ってきたんだが、結局今の魔王に勝てず、行き先を失っているやつがケッコーいるわ。

そいつらが、集まって食べるためにいろんなことに手を出しているらしい。

3つ目は、小規模の国の軍隊に匹敵するほどの力があると言われている盗賊のグループ。

襲っている相手に規則性があるっていうものや、少人数先鋭のグループとも言われているが実際の目的や正体は謎とされているわ。

ざっとこんなところかなっ。

で、わかった?

私達はただ単に、金品を奪っているんじゃなくて、政権を取り返すために活動しているの。

だから、盗賊と一緒にして欲しくないわ」


俺はこの時、聞かなければよかったと思った。

なぜならば、魔王城の運営が人手不足で大変って言われている中、厄介なグループが3つもあるということを知ってしまったからだ。

でも、知ってしまった以上、せっかくだから仲間に入れてもらって、内情をよく知っておいたほうがいい

そのことによって、将来なんか問題が発生した時に、俺の仕事が楽になるのかもしれないし。

それと、今の魔王というのは俺のことを言っているのであろう。

俺はまだ魔王としてちゃんと就任していない。

が、魔王をたおした者が魔王になるのが自然だから、もうそう言われているのだと思った。


「わかった。仲間に入れてもらえるように、頭領によく言っておいて欲しい。

それと、俺は、ア……。

アシムと言う。よろしく頼む」


俺は、『アレン』と本当の名前をなのって、前の魔王をたおした者だとバレるのを懸念して偽名を使ったのだ。


「そう、期待して待っててね。

私は、ミカエルよ。ミカって呼んでね。

もし、私のおかげで入れたら、私に食事でもおごりなさいよ」


ミカはそう言って、どっかに走って行ってしまったのだった。



お読みいただきましてありがとうございました。


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