スリ
(まぁ、何はともあれ今日は休憩の日だな。何もやることないし。
問題は山積だけど、焦ってもしかたがないことだらけだしな)
朝食を食べ終わったあと、レリエルが結婚の準備をすると言ってどっかに行ってしまった。
そのあと、リリさんに「元気になってよかったです」って言ったら、「レリエルに好き勝手させられないわ。誰がこの魔王城の主だかを知らしめなきゃ」という返答があった。リリさんの魔王城での横暴は終わったものかと思っていたが、何か陰謀でも考えてるのだろうか?(考えてないで欲しい)。
しかも、『誰がこの魔王城の主だか』って、俺だよ、俺。魔王の俺がこの城の主なの。
勇者が魔王になっちゃおかしいだろ。
それに、リリさんが魔王なんて目立つ役職になったら、いろんな人に命を狙われるのにどうする気なのだろうか?村人より弱いくせに。
で、リリさんもレリエルがいなくなった後に少し話して、自分の部屋にこもってしまったのだった。
そして、俺は1人。
元気なのに部屋で1人でいるなんてつまらない。
ってことで、俺は部屋から出たのだった。
とりあえず、兵舎の方に行くことにした。敵軍に命がけで一緒に戦うって言ってくれた兵士にもう一度会いたかったからだ。
エミリーを探すということも考えたが、やめといた。勝手に探して、レリエルの機嫌を損ねたくなかったのだ。なんか、俺の方が立場が弱いみたいだ。
そうして、兵舎の方に向かおうとしたが、場所がわからない。
それなので、迷路みたいな魔王城を適当に歩きながら、すれ違った人に道を教わりながら行ったのだった。
俺はこの魔王城の略奪者にもかかわらず、みな笑顔で接してくれた。
俺が怖いから笑顔で取り繕っているのだろうか?
まあ、力で奪ったので、見方によっては、恐怖政治をやっていると言えよう。
だが、そういうふうに思われたくわない。
大軍を1人で追い払った頼れる魔王様とかって思われたい。
そんなお便りを魔王城の従業員からお便りを待ってます。
兵舎に無事についたが誰もいなかった。
怠けてるのか?と思ったら、魔王城の近くの森で訓練をしているらしい。ゼリエルと一緒に。
怠けてるわけではなかったから、よかったが、俺は暇になってしまった。
城の中を歩き回って、働いているのを邪魔しちゃ悪いしな。
しゃあ、城下町でもまわってみるか。
あっちの世界の昔の将軍みたいに。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
城下町にある建物は以外としっかりとしており、レンガ造りの建物が多かった。
あっちの世界でファンタジー系のアニメに出てくるような街並み。
中世ヨーロッパ風の雰囲気と言ったやつだろうか?
なんで異世界というとこういう作りなのか不思議だ。
だが、建物の割には、人が少なかった。というよりはいない。
地方のさびれた商店街以上に人がいない。
ゼリエルが昨日言っていた、商人がいなくなってしまっているというやつだろう。
これをなんとか前の魔王以上に賑やかな国にしなければいけない。
魔王の中の魔王を目指すものとして。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『ドン』
俺に誰かがぶつかり、何も言わずにどっかに行ってしまった。後ろ姿から見ると俺と同じ歳ぐらいの女の子のようだ。
コートの中を探られる感じがしたから、スリなんだろう。
俺は魔王城にいてお金を持ってなくても何不自由なく暮らせるから、お金を持っていない。
だから、何も取られていない。
だが、アニメを見ているとこういうパターンってよくある。
そして、スリをしてきた女の子の仲間に入れてもらってイベントが起きるのだ。
そう考えて、暇だから少女を捕まえて、イベントを発生させることにしたのだった。
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