不幸
(あぁ〜、なんかもう終わってる気がする。不幸だ。不幸過ぎる。
こっちの世界にきて楽しくやるつもりが、不幸続きだ。
どうしたらいいかわからない問題が山積してる)
俺は、今、自分の部屋のベットで寝ながら色々と考えていたのだった。
こっちの世界にきて数日、なにかするたびに不幸がやってきた。
あっちの世界と変わらない気がする。まぁ、こっちの世界では強力な能力を持っている分マシなのだが……。
【こっちに来てからの不幸一覧】
①勇者チート能力によって、リリさんの奴隷にされたこと。
それにより、俺はリリさんに呼び出されればその場所に行かなきゃいけなくなり、生殺与奪権はリリさんに握られている。
なんだか、昔の中国で西に行くっていうお坊さんのお猿さんへの扱いと似ている気がする。
②魔王城でリリさんの横暴を受けたこと。
それで、レリエルを俺の奴隷とすることになってしまった。
俺がレリエルに嫌がることをしなければいいのだが、なんだかんだで誰かを自分の奴隷にするってのはやな感じだ。
それに、俺は奴隷を持ったことはないし、あっちの世界でも奴隷なんて見たことがないからどう接したらいいかわからない。
③リリさんが死刑宣告を受けたこと。
俺がリリさんと一緒に人間界の教会に行ったら、天界人がいて、いきなり死刑宣告をリリさんにして、いきなり攻撃をしてきた。
いったいどうなってるんだか訳がわからないし、それでリリさんは精神的にまいって部屋でじっとしたままだ。ずっと。
④俺が占領した魔王城に戻ったら、いきなり大軍に攻め込まれてたこと。
なんだかんだで大軍に帰ってもらえた。
だが、この城の元魔王が大軍に関係している以上、また攻めて来るのだろう。
なんとか仲良くできないものだろうか?
って、俺がいきなり占領したから悪いのか……。
⑤天界人のアスタトロが仲間にならないかって言ってきたこと。
仲間にならないかっていうことだけで考えるとなんか良さそうなのだが、リリさんに人間界で死刑宣告をした奴と同じ天界人だから信用できない。
天界っていったいどんなところなんだろう。
普通に考えて、天界って、いい人の集まりみたいなところのはずだよな?訳がわからん。
⑥この魔王城がある国の統治をどうしていくかってこと。
人材が圧倒的に足りないらしい。
そういうことは、俺に聞いてくるなよなっ。
頼られたって、まったくわからないんだから。
勝手にやっといて欲しいぜ。
ドラマで上司が部下に言うセリフの『うまくやっといてくれたまえ』ってやつだ。
だが、この国が俺の国だと思うと、何かと口をだしたくなるというか、好き勝手にされたくない気がしてくるもどかしさ(これが支配欲ってやつなのだろうか?)。
⑦エミリーに呼び出され、襲われそうになったこと。
これは不幸なのだろうか?いや、違う。なんか、違う。
そうか、襲ってくるやつが足りないんだ。
女の子が俺に襲ってくるのが、圧倒的に足りない。足りないことが不幸過ぎる。
あっちの世界でライトノベルを読んだ時、ファンタジーものの主人公ってもっとハーレム状態になっていたはず。いやそうでなければならない。
どうすれば、そうなるのだろうか?悩みだ。
⑧レリエルが他国の要求に応じるために結婚を求めてきたこと。
俺はハーレムが欲しいが、まだ結婚をしたいわけでない。
そんなのは重すぎる。
まだ、高校に進学すらしてないんだぞ。俺は。
こっちの世界では関係ないのだろうか……?
こうやって簡単に考えただけで、8個も不幸があるなんて不幸すぎじゃないか?俺。
ていうか、どれも俺にとって重すぎる内容ばかりだ。
俺が忘れてたり、知らないうちに、不幸にまきこまてたりする可能性があるし……。
うぅ〜〜ん。全部他力本願っていうのはまずいか。
①〜⑥と⑧番は俺以外の奴らに考えてもらおう。
だから、仕方がない。⑦番だけ、俺が考えてやろう。
それに、⑦番だけは、誰かに相談しずらいしな。
だが、どうすればいいのだろうか?
広告を出したり、エミリーになにか褒美を与えればいいのだろうか……?
って、ダメだ。具体的なアイディアが全然思い浮かばない。
俺は魔王なんだから、自分が気に入った女の子を見つけたら力づくで奪って……。
いや、ダメだ。それは良くない。
けれども、気に入った女の子か……。
俺の周りに今、リリさんとレリエルとエミリーがいる。
リリさんはルックスはいいんだが、なんというか性格になんがある気がする。
レリエルはお姫様で高嶺の花って感じだ。あっちの世界だったら、出会うことは全くなかっただろう。
エミリーはクラスで一番可愛い女の子っていう感じだ。まぁ、同じクラスにいるからって、話すことはなかっただろう。
うぅ〜ん。
レリエルとエミリーで悩む。
だが、自由に選んでいいってことならやっぱり、
『レリエル』
だろうか?あっちの世界で絶対に出会わないような高嶺の花。
(んっ。なんか俺の体の上に重みが増したような……)
ふと、俺が布団をめくるとレリエルがいたのだった。
俺は、レリエルのことを考えていた時に自然と魔力を込めて、『レリエル』とつぶやいてしまったらしい。
それで、俺はレリエルと奴隷契約をしているから呼び出してしまったのだった。
レリエルは下着姿だ。ちょっと髪が濡れてる気がする。
風呂上がりなのだろうか?妙に色っぽい気がする。
そして、いい匂いがする。
「あの、いきなり呼び出して、どのようなご用件でしょうか?」
レリエルはいつもより丁寧な口調で聞いてきたのだった。
顔を赤らめてる気がする。
「あっ。私はアレン様の奴隷ですから、別に好きなようにしていただいて結構なのですが……。
その、男の人にこんな姿を見せるのは、初めてですから……」
レリエルは、さっき結婚を俺に迫ってたきた時は余裕があったのに、いきなり想定外の状況になったのでどうしたらいいのかとまどっているのだろう。
どこか緊張し、動揺している気がする。
って、俺も冷静ではいられず、どう接したらいいのか困ってる。
「あの……。
こんな時に急に呼び出したってことは、結婚を決めたってことで……」
俺が困っている間に、レリエルは冷静さを取り戻してきたのだろう、結婚の話に触れてきた。
俺はこの状況で、『決めたってことで』に続ける言葉として『違う』とは言いづらい。
なんか倫理に反する気がする。
この世界にどんな倫理があるかはわからないが。
「まぁ、いきなり呼び出してすまなかった。
それに、結婚となるという話がいきなりすぎて、もう少しお互いのことを知ってからでないと決められないなぁって考えていたら、間違って呼び出してしまったんだよ」
俺はレリエルにタンスから上着を出して、かぶせたのだった。
結婚の回答を求められている状態から、話をそらすことにしたのだった。
「そうですよね。
それで、私を襲おうとしたのですね?」
「いや違う。
あったかい紅茶でも持ってくるから、待ってて」
俺とレリエルはこの後、1時間ぐらい雑談したのだった。
そして、レリエルに自分の部屋に帰ってもらった。
なんか悪いことを気がするが……。
なんというか、こんな状況を作り出してしまうところが、俺は不幸に愛されていると思った。
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