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出会い

《楠君、君の今後の一生をこの私にくれないか?》



俺は見知らない女性からいきなり声をかけられた。

綺麗な長い黒髪が特徴的な女性。

肌が白い。

どこか上品さを感じる。どこかのお嬢様なのだろうか。

制服は……。

俺が受験して落ちた高校の制服だった。


俺は、中学3年生。

受験結果を確認して帰る途中だった。

そして、できれば家に帰りたくないと思いながら歩いていたのだった。

なぜならば、中学を卒業した後、進学する高校が決まっていないからだ。

高校受験を失敗だなんて、俺の人生は終わったようなものだろう。


【思い返せば俺は、今までいいことはなかった】


その1:今回の高校受験

今回の受験は受験結果を見に行く前に、『落ちている』ことはわかっていた。

なぜならば、テストの解答欄を間違えたからだった。

俺は、テストが終わる5分前に答えの回答欄が1個ずれていることに気づいたのだった。

そして、回答を書き直しているうちに受験時間は終了したのだった。

ちなみに、事前の模試の時は合格間違いなしだった。

それなのに、受験で失敗するなんて落差が激しすぎて悲しすぎる。

なお、俺は他の高校も受験の申込みをしたが、受験日にインフルエンザになったりしていけなかった。

そして、中学卒業後、入学できる学校はなくなったのだった。


その2:部活の大会

俺は剣道部に所属していた。

その剣道部は、日本で厳しいと言われる練習を毎日してたのだった。

俺はその剣道部でなんとか頑張ってレギュラーに選ばれた。

それで、大会当日、俺は交通事故にあい大会に出場できなかったのだ。

ちなみに、俺はその事故によって後遺症をが残り、剣道ができなくなったのだった。


その3:運の悪さ

俺はくじ引きなどの運試しで、一回もあたりを引いたことがない。

しかも、いつも引くのは一番下のものばかりだった。

ある意味すごいことかもしれないが、こうまで運気が悪いと悲しくなってくる。


その4:その他、様々な不幸がたくさん(伝えきれません)

歩いているだけでお金や大事なものをいつも落としたり、修学旅行に行けなかったり、友達ができなかったり、買ったゲームが始めて数秒後に壊れたり……。


ーーーそう考えると、俺の人生は不幸そのもの。

誰かが不幸な目にあったと言う話をしていたら、俺は同様のことそれ以上の不幸があったと話すことが今までできた。

それなので、不幸自慢をしたら一番を取れる自信があるね。

いや、そんな自慢なんていらねぇ〜〜〜。



そうして、俺は目の前の知らない女性の言葉を思い出す。

まず、俺は目の前の女性と会ったことはない。断言できる。

今まで、こんなに綺麗な人と話したことはない。

それなのに、俺の名前を知っていた。なぜだ?

そして、そんな謎の女がいきなり俺の『今後の一生をこの私にくれないか?』と言ってきた。

こんな場所でなく、ロマンチックな場所であれば、プロポーズという意味で取れなくもないだろう。

こんな綺麗な女性から言われたら、すぐに『うん』って言ってしまいそうだ。

だが、今はそんな状況じゃない。

街中の普通の道路なのだ。ロマンチックのかけらもない、ごく普通の日常にありふれた道路。


謎の女が言ってきた言葉は、どんな意味なのだろうか?

言葉通りに受け取ると、命をよこせとか、奴隷になれとかそういう意味になるのだろう。

謎の女は、人間に見えるけど実は悪魔か?いや、そんな非科学的なものはこの世にいないはず……。

なんにせよ、いつも通り不幸の始まりなのだろうか?


「ーーえ〜っと、どういうことでしょうか?」


「そのままの意味だ。今後の一生を私に使って欲しい。

君は、この世界を脱出したいと思ったことはないか?」


謎の女は俺を真直ぐ見て言ってきた。

言っていることは常識はずれだが、真剣に話しているような印象を受ける。

俺の不幸を呼ぶ力は、ついに頭のおかしい人まで呼び寄せるようになってしまったのだろうか?

だが、脱出したくないかと言うのはどういうことだろう。

本当にこんな不幸な世界から脱出できるなら……。

とても魅力的な話だと思う。

いわゆる『転生』ってやつだろうか?


「脱出したいとは……。

脱出するとどうなるのでしょうか?」


仮に脱出できるとしても、脱出先が今以上に不幸になったら意味がない。

どうなるのか先に知っておきたい。

俺は不幸を呼ぶ男なんだ。


「どうなるかは、わからない。

だが、確実に言えるのは、この世界で不幸であれば不幸であるほど好条件を与えられる可能性がある世界になる。

楠君は、私が色々調査してきた中で一番不幸な人生を送ってきている。

どうする?」


謎の女は今度は笑顔で俺を試すような表情で言ったのだった。

俺の目を見て。

俺は目があったので恥ずかしくなって目をそらしてしまう。

謎の女の目は、ルビー色でとても綺麗だ。


「ーーすみませんが、やめときます」


俺は少し考えて断ることにしたのだった。

今まで何かをやっていいことなんてなかった。

だから、俺にとって良さそうな話であっても断っておいたほうがいいだろうと判断したのだ。

過去の流れから、『何かやろうとすれば不幸になる』これは俺の格言だ。


「ふふっ、ふふふふふふふふふふっ」


謎の女は、俺が話した後、口元を少し開き三日月の形を作った。

そして、笑い出した。

アニメとかで悪役が笑うような声だ。


「この私が君に断られたことを想定してきてないとでも思っていたか?

今後の一生を私に使ってくれるのであれば、私が通っている高校を合格させてやろう」


「ーーえっ」


「私は、高校の理事長の孫だ。

そんなこと簡単にできる。

もしよかったら、これから学校に行って証明してもいいが……。

どうする?」


俺は今まで不幸にあってきたせいか、簡単に信じることはできなかった。

が、今の俺は家に帰りたくない。

謎の女についてって、確認だけでもしてもいいかもしれない。

俺は今までさんざん不幸な目にあってきたんだ。

これぐらいいいことがあってもいいことがあってもいいじゃないか……。


「わかりました。

学校に行きます。

ところで、お名前を教えていただけませんか?」


「あぁ、申し遅れてすまなかった。

藤原 若菜だ。よろしくな」


俺は藤原さんに着いて行くことにしたのだった。


そうして、藤原さんと一緒に歩き学校に着いたのだった。

俺がさっき絶望を味わった場所。

不幸のどん底を味わった場所になる。

合格を発表した掲示板には、もう人だかりはなく、誰もいなかった。

俺はもう一度確認すれば、俺の番号があるのではないかと思い見に行きたくなった。

が、やめた。

なぜならば、最初に確認した時に、何十回と確認したけど俺の番号はなかったのだ。

また、辛い気持ちになるだけなのだ。


学校の入り口を入り、応接室に連れて行かれた。

応接室の中には、高級そうな置時計があったり、学校の生徒が大会で優勝したトロヒィーだろうか色々置物があった。


「ちょっとソファーに座って待っていて欲しい」


俺は藤原さんに言われるまま、ソファーに座ったのだった。

ソファーは革張りで、程よい固さがあり、座り心地はよかった。

学校にくる偉い人の来客用にも使われているのだろうか?


俺が座って落ち着きなく応接室の中を観察していると、大人女性が入ってきた。


「もう少々お待ちくださいね」


大人女性は笑顔でそう言って、お茶を置いていったのだった。

お茶は熱かったので最初は飲めなかったが、藤原さんを待っている間に冷めてきて飲めるようになったのだ。


(まだ、こないのだろうか?)


もう、かれこれ30分近く待たされている。

お茶も飲み終わった。

もうやることもない。

どうなっているんだ。

確かに、受験に落ちた俺を合格させるなんて時間がかかるのかもしれない。

が、そろそろ一言くらい状況を話しに来たっていいはず。

そう考えながら、俺が不安になってきた時だった。


「遅くなってすまなかった」


藤原さんは、ファイルを持ってきたのだった。

さっきお茶を持ってきてくれた大人女性と一緒に。

あの中に、入学の契約書のようなものが入っているのだろうか?

俺は期待が膨らみワクワクしてきた。

待たされただけあって。


「ここにサインして欲しい」


藤原さんが俺の前に出した紙のタイトルは、『入学承諾書』だった。


「『入学承諾書』とは、受験に合格した者が、学校に入学するために書くものだ。

君の場合、特別に授業料免除もつけておいたがどうする?」


俺は入学承諾書を見た瞬間に動きがとまってしまったのだ。

喜びのあまりに。しかも、授業料免除だなんて……。

藤原さんは俺の動きがとまってしまったので、俺を説得するために『入学承諾書』の説明をしたのだろう。

だが、あまりにも好条件すぎる。

『入学承諾書』にサインした後に、払う対価が不安になる。

だが、俺は『入学承諾書』にサインするしかない。

でなければ、俺の人生は終わってしまうのだから……。


「書きます」


俺は『入学承諾書』にサインをして、藤原さんに渡したのだった。

そして、藤原さんはその紙を大人の女性に渡す。

大人の女性はそれを持って応接室から出て行く。


「では、君の残りの一生をもらうぞ」


藤原さんは立ち上がり、学校の地下に連れて行かれたのだった。

お読みいただきましてありがとうございました。


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今後ともこの作品をよろしくお願いいたします。

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