聖人の三つ目の能力
紅魔館
「えっ?」
最初に声を出したのはフランだった。無理もなかった、何故ならレーヴァテインが聖人の体に当たった瞬間に粉々になったからだ。
「どうしてレーヴァテインが消えたの!?一体何をしたのよ!?」
「……………。」
フランは聖人に聞いたが、聖人は下を向いて黙ったままフランの方へ歩き始める。
「「「「どうなってるのよ?」」」」
レミリア達が口を揃えて言った時、 聖人が何かを呟き出す。
「情けねえ、本当に情けねえ。俺は何時になったら約束を守れるんだ?」
「ふ、ふん!!あの玩具の事?あんな簡単に壊れたのが悪いのよ!!」
フランは聖人にそう言い放つが、その言葉を言った瞬間に聖人の体から銀色のオーラが溢れ出す。
「てめえ今何て言った?あんな簡単に壊れる奴が悪いだと?」
「そ、そうよ!!それの何が悪いのよ!?」
「ふざけるのも大概にしとけよ?てめえは、てめえは大切な人を失った事があるかぁぁぁぁぁ!!!」
聖人がそう叫ぶと、髪の色が銀色になりオーラを激しく点滅しだした。
「てめぇが何を考えてるのかは知らねぇ、何を思って人を傷付けているのかも知らねえ。けど、俺の大切な人を殺した。てめぇに生きる権利はねえ。ここでくたばってもらうぞクソ野郎!!!」
そう言い聖人は一歩前に踏み出した。
「アハハハ、スゴいスゴいヨ!!マダタッタクレル……ンダ…ネ。」
この時フランは感じた事のない恐怖に襲われていた。それは聖人からの殺気が凄まじいからだ。周りの空気がビリビリとして、ガラスの窓が揺れていた。
「スグニコワシテアゲルヨ!!ギュットシテ……。」
「不味い!!聖人避けなさい!!」
しかし、聖人は避けようとはせず、代わりにスペルカードを取り出した。
「幻苻『イマジネーションブレード』」
聖人がスペルカードを掲げた途端、聖人の刀が緑色に光り始めた。フランは一瞬木刀に注意を寄せたが、些細なことだと判断して無視する。
「ドカーン!!」
レミリアはこの言葉を聞いた瞬間目を閉じた。何故ならあの技はフランの目に入ったものを右手で握り潰せば粉々になるからだ。レミリアはそうなってしまったと思った。
パキィィィィィン!!!
「……えっ!?今の音は何!?」
「アレ?ナンデバクハツシナイノ?ナラモウイッカイヤルダケヨ!!」
フランはもう1回同じことする。レミリアは今度は目を閉じずに聖人を見た。フランが右手を握ると同時に聖人は前方の空間を斬った。すると前方の空間が歪み、その後、例えることが出来ない音が聞こえ、聞こえ終わったと同時に歪んだ空間も元に戻った。
「な、何なのよ……。」
レミリアは呆然とするしかなかった。なぜならフランのあれは絶対に避けれない。なのにどうして聖人は生きているのか?
「ナラコレヲツカウマデヨ!!禁忌『レーヴァテイン』!!」
フランはそれを聖人に向けて振った。しかし、聖人は刀を前に出す。
「無駄だ。」
レーヴァテインは木刀に触れたとたんに粉々になった。
「クッ!!コレナラドウ!?禁弾『過去を刻む時計』!!」
フランの周りから十字の形をした弾幕が現れて聖人に向かって飛んでいった。それと同時にフランも弾幕を放つ。
「アハハコンドコソコワレチャエ!!」
だが聖人は慌てず、十字の形をした弾幕を刀で斬りつけて粉々にして、他の弾幕もすべて粉々にした。
「ドウシテナノヨ!!」
その様子を空中で霊夢と紫は驚愕の表情を浮かべながら戦闘を見ていた。
「嘘!!どういうことなのよ!?」
「あれが聖人の三つ目の能力よ。『不可思議な力を無効にする程度の能力』よ。」
「どういうことよ?」
「霊力とか妖力とかの不思議な力を破壊することが出来るということよ」
「それチートじゃない!!」
「確かにあんな能力は初めて見たわよ。」
そう霊夢達が会話してる間に、フランの狂気は成りを潜め、地面に座りこむ。
「あっ……あっ……。」
フランはあのあと何度も攻撃したが、すべて粉々にされ、魔力や妖力も尽き座りこんでしまった。
「や、やめて……。」
「…………。」
だが聖人はフランの言葉を無視して刀を振り上げた。
「やめて!!殺さないでよ!!」
聖人はそれを無視して刀を降り下ろそうとした時。
「待って聖人!!」
レミリアはフランを庇うようにして前に立った。
「お姉様?」
「フランを殺さないで!!!お願いだから殺さないで!!」
レミリアは泣きながらそう言う、聖人の凄まじい殺気に耐えながら。
「どうして?私はお姉様を殺しかけたのよ?」
「それはフランの姉だからよ。手が非常にかかる妹だけど、フランがいないと悲しいからよ。とにかくフランは殺さないで!!!」
「…………。」
「私からもお願いしますわ。」
レミリアの横に咲夜も立ち、聖人からの殺気に耐えながら頭を下げる。
「咲夜!?貴方は来る必要はないのよ!?」
「いえ、妹様は大切な人です。それをお嬢様だけに守らせる訳には行きません。」
「咲夜の言う通りです。妹様は私達の大切な家族なんですから!!」
「そうよ、レミィ一人だけに守らせる訳にはいかないわ。」
「私もパチュリー様と同じです!!」
「咲夜、美鈴、パチェ、小悪魔……。」
いつの間にか美鈴、パチュリー、小悪魔といった紅魔館の人達がフランの前に立っていた。それを見た霊夢は安心した顔をする。
「これで解決かしらね。」
霊夢はそう言ったが、紫は聖人の方をじっと見ていた。
「…………。」
「紫?なしたのよ?」
「まだよ。霊夢、構えなさい。」
「どういうことよ?」
「見ていればわかるわ。」
レミリア達を見た聖人は殺気を収めながら木刀をしまった。
「ありがとう、聖人。」
「はっ?何を言ってるんだレミリア?悪いがフランはここで斬らせてもらう。」
「「「「「!!!」」」」」
聖人はそう言うと刀の鞘でレミリア達を殴り飛ばす。
「「「「きゃああああ!!!」」」」
レミリア達は突然の事だったので、抵抗出来ずに吹き飛ばされた。普通の状態なら耐えられるが、聖人は『オーバードライブlevel5』を解除していないためレミリア達は聖人の動きがみれず、吹き飛ばれたのだ。
「どうしてよ!!どうしてお姉様達を殴り飛ばしたのよ!?」
フランは聖人に向けて叫んだが、聖人は無視して鞘から刀を抜く。
「悪いな、お前はここで斬らせてもらわないといけない。」
「嫌!!殺さないで!!」
フランは涙を流し、体を震わしながら聖人に懇願するが、聖人はフランのその様子を無視して刀を振り下ろす。
「そいつは出来ない相談だな。じゃあな。」
「いやあああああ!!!お姉様ーーーー!!」
ドサッ!!
フランは全身から血を放出し、血まみれになって地面に倒れた。
「聖人、どういうことよ?」
「今すぐ答えなさい。」
霊夢と紫は聖人に言ったが聖人は気だるそうに刀をしまい、頭をボリボリとかく。
「てめぇらに話すことはねえよ。」
「ふざけるのも大概にしなさい!!霊符『夢想封印』!!」
霊夢はスペルカードを宣言し、七つのカラフルな巨大弾幕を聖人に向けて放つが、聖人は弾幕を避けようとはせず、霊夢を哀れむような目で見ていた。
「てめぇはバカだな。」
「何を言って、嘘!!何でよ!?]
聖人に向けて放った夢想封印が全部霊夢に向けて飛んできた。
「そんなものスキマで「バカだな、下を見ろよ。」!!」
紫が巨大弾幕をスキマの中に入れようとした瞬間、いつの間にか紫の足に刀が刺さっていた。
「くっ、避けるしかないわね!!」
「無駄だ。」
聖人は足で地面を蹴って霊夢が立っている足場を崩した。
「やば!!」
霊夢はバランスが崩れ、一瞬だが怯んでしまった。その間に巨大弾幕は霊夢の方へと向かっていく。
「霊夢!!くそっ!!」
紫は霊夢に向かって飛び込み夢想封印をすべて自分で受けた。
「紫!!どうしてよ!!」
「あなたがいないとこの先不味いからよ。」
「どういうことよ!?」
「心して聞きなさい。今、
何者かによって博麗大結界が一部壊れたわ。」
紫の言葉を聞き、霊夢は聖人を睨み付けるが、聖人は何の悪びれもない表情をしていた。
「!!」
「頼むわね、霊夢。」
「紫はどうするのよ。」
紫は自分の足に刺さっている刀を抜きながら、スキマを展開する。
「結界を直してくるわ。」
と言いスキマに入っていった。それを確認した聖人は紫の足に刺さっていた刀を拾い、血を払って鞘にしまう。
「聖人、あんたは許さないわ!!」
「勝手に言っとけ。さっさと消えろ。俺は今は霊夢に用はないんだからよ。」
「舐めた口調ね。私に勝てると思ってるのかしら?」
「そっかそっか。予想以上に間抜けな巫女だな。」
「何を!!」
霊夢は聖人の言葉に激怒したが、聖人はその隙に居合い斬りをした。
「霊夢は臨戦態勢も録に取っていない状態、かつ今の俺は『オーバードライブlevel5』を発動している状態、この状況で勝てると思ってるのか?今ので1つだな。」
聖人は一瞬の隙をついて霊夢の頭についていたリボンを斬った。
「!!!」
「さて、まだやるか?次はリボンじゃなくて腕や足を狙うぞ霊夢?」
「くっ!!」
霊夢は聖人の周りに結界を張り、去っていった。
「……ふう、嫌われ役はきついな。」
聖人は皆に聞こえないように呟き、右手に緑色の光を帯びさせて結界を殴って壊した。
「それよりあいつらが来るな。早くここから離れるか。早苗、本当にすまない。」
その頃、フランの周りにはレミリア達がいた。
「うぅ、ぐすっ、フラン。」
「すみませんお嬢様、私の力不足なばかりに。」
「いえ、咲夜さんはよくやったと思います。私が来るのが遅かったばかりに。」
紅魔館の人達が自分の情けなさに後悔している中、聖人はその様子を黙って見ていた。
「………………。」
「聖人、何でフランを殺したのよ?」
レミリアは泣きながら殺気を放ち、聖人に問い掛けるが、聖人は黙ったままだった。
「……………………。」
「黙るな!!答えろ聖人!!」
「返事をしたほうがいいですよ聖人。もし答えないのであれば、そのまま殺させていただきますよ?」
咲夜は激怒した表情で聖人を睨み付ける。咲夜だけではない、美鈴やパチュリーも咲夜と同じ表情をしている。
「…………………………。」
「フランの仇ィィィィィィィ!!」
痺れを切らしたレミリアは叫びながらスピア・ザ・グンクニルを聖人に向けて放つが手応えはなく、ただ消滅しただけだった。
「逃げられたようです。」
「ううっ、どうしてよ。何でフランが殺されなくちゃいけないのよ。フラン、返事をしてよ。」
「あれれ、何だか辛気くさいねぇ~。もっと笑顔になろうよ、折角の可愛い顔が台無しだよ~。」
レミリアの後ろから突然男の声が聞こえ、レミリア達が後ろを向くと、紺色のジャージの上着と黒色のジーンズを履いている少年が立っていた。
「誰だ貴様は!?」
「俺のこと?よくぞ聞いてくれました!!俺は女の子が大好きな人で~す。よろしくね~!!」
謎の少年は爽やかに挨拶するが、レミリア達は謎の少年を無視した。
「反応薄っ!?なら一つ耳寄りの情報を教えよう。そこの金髪の女の子は死んでないよ~。」
「嘘じゃないでしょうね?」
「本当だよ~。ただしばらくは起きないね。」
フランが生きている、その事を知れた時点で紅魔館の人達は安堵した表情になった。
「フラン、良かった。」
「確かに妹様は生きてます。気をよくよく確認してみたら僅かに感じることが出来ましたから。」
「じゃあ俺はそこの緑の女の子に用があるから、連れていっていい~?」
謎の少年は早苗をお姫様抱っこして何やら考え始める。
「早苗に何をする気ですか?」
「それはヒミツだよ~。でも大丈夫、悪いようにはしないから。ではではさらば~!!」
謎の少年はすごいスピードで早苗をお姫様抱っこしながら飛んでいった。
「まさか聖人は初めから殺すつもりはなかった。」
「そうなるわねレミィ。しかし、わからないわ。なぜ気絶させる必要があったのか。」
「まあ、いいわ。とにかくフランを安全なところに運ぶわよ。」




