紅霧異変2
霧の湖
ルーミアを倒した後、良夢と魔理菜は霧の湖の上空を飛行しながら攻撃してくる妖精や毛玉を撃墜していく。
「お母さん、紅魔館まであとどれくらいですか?」
「そうね、ここの霧の湖の先だからもうちょっとしたら着くわよ。それにしても、何か懐かしいわね。」
良夢と質問に答えながら霊夢は昔を懐かしむかのように呟いた。
「あの頃は私と魔理沙だけだったのにねぇ。」
「そうだな。でも今じゃこんなにいるぜ!おっと魔理菜、倒し損ねた敵がいるぜ?」
「本当だ!サンキュー母ちゃん!」
魔理沙は霊夢と同じように昔を懐かしみながら、魔理菜にアドバイスをする。
「あのー、霊夢さん?前からやってくる敵、何かちり紙みたいな敵ですけど、何ですかあれ?」
「気にしたら負けよ良太。ツッコミたい気持ちは分からなくもないわ。」
良夢と魔理菜が撃ち落としている敵は、ちり紙のような形をした敵だった。良夢と魔理菜は特に気にしないで撃墜していく。
「ん?なんかおかしいぜ、前の異変ならこの辺りで大妖精が来るはずなんだが。」
「そうなんですか霊夢さん?」
良太は霊夢に聞くが、霊夢は頷きながらため息をついた。
「そうよ、ここら辺でいきなり現れたのよ。でも困ったわね、ボムが補充出来ないじゃない。」
「補充出来ないなら、何処かから借りてくしかないぜ。ところで霊夢、あの三人組は?」
「逃げ……てないわね。でも空を飛べない人がこの霧の湖を渡ることが出来ないはず。」
霊夢はそう言い辺りを見渡した時、良夢が唖然とした表情で霊夢に近付いた。
「お母さんお母さん!!下です、下にいますよ!!」
「下って、普通の人間がいるは……そういう方法があったわね。でも普通はしないわよ!?」
霊夢達の下、つまり白と絢と海二は霧の湖を霊夢の飛行スピードに合わせながら泳いでいた。
「「「オラオラオラオラ!!」」」
「……何で私達の飛行スピードと同じくらいのスピードで泳げるのに、どうして飛べないんだぜ?」
白はクロール、絢は背泳ぎ、海二はバタフライで泳いでいた。それを見た霊夢と魔理沙と良太は唖然とする。
「ヒャッハーー!!きもてぃーーー!!まるで海水ようげらば!!」
「「ブルアァァァァ!!」」
白と絢と海二の泳ぐ先に氷が張ってあり、それに気付かず三人は激突し、沈んでいった。
「母ちゃん母ちゃん!!あの三人沈んでいったぜ!?助けないのか!?」
「んー、何か助けなくても這い上がって来そうな気がするぜ。それより魔理菜、氷があるって事はあいつが来るぜ。」
「そうね、にしても霧の湖ってこんなに広かったかしら?」
魔理沙が魔理菜に警戒するように促してる時、霊夢が辺りを見渡しながら言った。
「そうなんですかお母さん?」
「んー、霧も出てきて見通しも悪くなってきたし、もしかして私って方向音痴かしら?」
「いや、それはないぜ霊夢。迷ったら勘で行動して目的地に辿り着く奴が方向音痴って有り得ないぜ。」
霊夢が方向音痴と呟いた時、魔理沙が苦笑いしながら霊夢の言葉を否定する。
「でも紅魔館ってこの辺りだった気がするが、もしかして移動でもしたのか?」
「そうなのか母ちゃん?あと今はおおよそ夏なのに、何でこんなに冷えるんだぜ?」
「ふふ、現れたわね!!道に迷うは妖精の所為、そしてもう二度と陸には上がらせないよ!!」
霊夢達の前にどや顔のチルノが現れたが、霊夢達はやっぱりという表情になった。
「お前か!寒いのは!」
「暑いよりはいいでしょ?霧雨ま、ま、ま、霧雨ま!!」
「霧雨魔理菜だぜ寒い奴!!」
魔理菜は自分の名前を間違えられたチルノに空き瓶を投げ付けるが、チルノは空き瓶を凍らせて湖に落とした。
「寒い奴、それは何か違う!!」
「いっぱいいっぱいなんだろ?」
「チルノさん?案内してくれませんか?紅魔館の場所を知ってるんですよね?」
良夢は空中で地団太を踏んでいるチルノに訊ねるが、チルノは怒った表情で良夢の方を向く。
「あんた、ちったぁ驚きなさいよ!!目の前に強敵がいるのよ!?」
「標的?チルノさん、自分の実力を再認識したほうがいいですよ?見ていて可哀想です。」
「ふざけやがって~!!霊夢とは違う感じでムカつくわね!!あんたらなんて英吉利牛と一緒に冷凍保存してやるわ!!」
チルノはバカにされた怒りで良夢と魔理菜に弾幕を放つ。
「うわ、最初はちょっと濃い弾幕を放ちますね。」
「でも、大きく避ければ問題ないぜ!!」
良夢と魔理菜は左右に大きく動きながら良夢はアミュレット、魔理菜はマジックミサイルを放つ。
「弾幕はこれだけじゃないよ!!」
「だろうな、あれだけだったら面白くないぜ!!」
チルノはそう言い全方位弾を放ち、良夢と魔理菜がいる所の全方位弾の隙間に自機狙い弾幕を放つ。
「魔理菜!!」
「分かってるぜ、小さく避けるんだよな良夢!!」
良夢と魔理菜は全方位弾幕を抜けた後、左に小さく動いて自機狙い弾幕を避ける。
「この弾幕を初めて見て避けれるなんて、あんたらムカつくわ!!」
「怒ってる暇はあるのか?隙だらけだぜ?」
怒っているチルノに魔理菜は弾幕を集中させる。それを喰らったチルノはスペルカードを取り出す。
「ここからが本番よ!!氷符 アイシクルフォール!!」
「おっ!使って来やがったな!!」
チルノは自分の前方に弾幕を放ちながら自分の横にも弾幕を放つ。
「何だ、簡単なスペルじゃないか。」
「魔理菜油断しないで、あの横に放った弾幕がこっちに来るわよ!!」
「うおっ!交差弾幕かよ!」
良夢と魔理菜は最初は驚いたが、難なく弾幕を避けながらチルノに弾幕を放つ。
「うぎゃ!!痛いじゃない!!」
「よし、スペルブレイクしたな。」
「アタイはサイキョーなんだ!!あんたらなんかに負けないわよ!!凍符 パーフェクトフリーズ!!」
チルノはカラフルな円型の弾幕を大量に放つ。それを良夢と魔理菜は小さく避けながら攻撃する。
「さっきのよりも簡単だな!!」
「その余裕もそこまでよ!!サイキョーのアタイの考えたスペルの心火はここからよ!!」
「チルノさん、心火ではなく真価ですよ。」
チルノが良夢と魔理菜に指を指すと、チルノの放った弾幕が停止した。そしてその後、青い弾幕を放った。
「よっと、弾幕を停止させるのは面白いがそれじゃ私には当たらないぜ?」
「ふふふ、ここからが本番よ!!」
チルノがそう言うと停止していた弾幕が動きだし、良夢と魔理菜を襲った。
「わわっ!!それってありなんですか!?」
良夢はグレイズをしながら回避し、魔理菜は隙間を見つけながら移動して回避した。
「わははは!!見たかアタイのサイキョーのスペル!!」
「チルノ、もうスペルブレイクしてるぜ?」
「……雪符 ダイヤモンドブリザード!!」
チルノは魔理菜に指摘されて慌ててスペルを使った。チルノの放つ弾幕は円型ではなく米粒弾幕になり、不規則に動きながら二人に迫る。
「当たれ当たれ当たれーー!!」
「チルノ、スペルっていうのはこういうものの事を指すんだぜ!!恋符 マスタースパーク!!」
魔理菜は八卦炉から虹色の巨大レーザーを放ち、チルノの放った弾幕を打ち消しながらチルノの体を包み込んだ。
「イギャーーーーー!!」
レーザーが消えた後、黒い煙をプスプスと上げながら涙目になっているチルノがいた。
「何よ魔理沙のマスタースパークと同じくらいの威力って!!」
「どんなもんだ!!」
「お母さん、また勝ちましたよ!!」
魔理菜はチルノに向かって胸を張ってどや顔をし、良夢は笑顔で霊夢の所に行った。
「まあ及第点って所かしらね。まだまだ動きに無駄が多いわよ良夢。でも良くやったわ。」
そう言い霊夢は良夢の頭を撫でる。それを見ていた良太も良夢の頭を撫でる。
「魔理菜、良くやったぜ!!」
「ありがとうだぜ母ちゃん!!」
魔理沙と魔理菜はニコッと笑いながらハイタッチをする。それを見ていたチルノは霊夢達にバレないようにスペルカードを取り出す。
「認めないわ、アタイはサイキョーなんだ!!喰らえ瞬間冷凍ビーム!!」
「良夢危ない!!」
チルノは良夢に向かって氷のビームを放つ。それを見た良夢は目を瞑り、良太は良夢の前に立ち銃を取り出そうとするが、下から斬撃が現れてレーザーを打ち消した。
「誰よ!?アタイのレーザーを消した奴は!?」
「おいチルノ、スペルカードルールを忘れたのか?敗者は勝者に従う。今のはルール違反だ。」
良夢達の下には氷が張ってある所に白が立っていた。
「うるさい!!アタイはサイキョーなんだ!!あんたが邪魔するならまずあんたから凍らせてやる!!」
そう言いチルノは白に向けて氷のレーザーを放った。それを見た良夢と魔理菜がスペルカードを取り出そうとするが、霊夢がそれを制した。
「お母さん!?どうして止めるの!?いくら妖精が弱いからと言っても普通の人間よりは強いよ!?」
「分かってるわよそんなの。でもあの三人組は普通じゃない。助けなくてもいいって私の勘が言ってるのよ良夢。」
「ここは白さんの実力を見るために見守りましょう。」
良太は良夢と魔理菜にそう言い、取り出しかけた銃をしまう。
「おい仮面野郎!!あんたは霊夢や魔理沙みたいな力を感じない!!アタイのレーザーで凍ってしまえ!!」
「おいおい、こんなことわざがあるのは知らないのかチルノ?能ある鷹は爪を隠すって。」
そう言いながら白はチルノのレーザーを避けながらスペルカードを取り出した。
「スペルカード?どうせアタイのレーザーには勝てないよ!!」
「まっ、御披露目と行きますか。凍符 エターナルブリザード改!!」
そう言い白は自分の前に白い弾幕を一つ出現させる。それを見たチルノはゲラゲラと笑い出す。
「スペルを使って弾幕一つ?アタイをなめてるの?」
「弾幕一つで充分なのさ。さてここからが本番だ。」
白がそう言うと、白い弾幕が凍っていった。そしてどんどんと白い弾幕に氷が付き初め、大きくなっていった。
「そんなもんで、アタイのレーザーを消せるとは思わないことね!!」
そう言いチルノは氷のレーザーを白に放つ。対する白は空中で体を二回回転させ、凍らせた弾幕をチルノに向けて思いっきり蹴り飛ばした。
「瞬間冷凍ビーってアタイのレーザーが消される!?」
白の蹴り飛ばした弾幕はチルノのレーザーを打ち消しながらチルノに向かって飛んで行き、チルノに当たった瞬間に弾けとんだ。
「ギャーーーーー!!やなかんじーーーーー!!」
チルノは空に向かって吹き飛ばされていった。それを見ていた霊夢達は驚愕の表情で白を見ていた。
「あれが普通の人間なんですかお母さん?」
「絶対違うわね。何よ弾幕を蹴り飛ばすって、色々と規格外ねあの白っていう人。」
「勝負したら面白そうだな!!なあ魔理菜!?」
「わ、私は遠慮しておくぜ母ちゃん。」
「皆さん紅魔館が見えてきましたよ!!」
良太の指差した方に紅魔館があった。それを見た良夢と魔理菜が一目散に飛んでいった。
「うう、すっかり冷えました。冷房病になりそうです。魔理菜、早く行こう?」
「半袖だと体に悪いな!!あそこだとお茶も出してくれそうだぜ!!」
「二人とも待ちなさい!!って聞いてないわね。」
「まあまあ霊夢、私達が追い付けばいいだけの話だから行こうぜ?」
霊夢と魔理沙は苦笑いを浮かべながら良夢を追いかけていく。良太は絢と海二を湖から引き上げている白の所に向かっていった。
「ブアックショイ!!ああ、すっかり冷えたぜ。」
「絢大丈夫?僕の出す炎で暖まる?」
「やめとけよ海二、っと良太か。」
「白さん、貴方達は何者なんですか?見た目は普通の人間と変わらない。感じる力だってそうです。なのにスペルの威力は霊夢さん達と変わらない。本当に何者なんですか?」
良太は警戒しながら白に訊ねるが、白はストレッチしながら良太の方を向く。
「まだ言えないな。言わなきゃいけない時になったら言う。それよりも、霊夢達を追い掛けないと見失うぞ?」
「…………。」
良太は腑に落ちない表情をしながら霊夢達を追い掛ける。
「白、スペルを使ったのかなぁ~?」
「まあな、何処かの馬鹿がスペルカードルールを破ったからな。お仕置きとしてスペルを使ったんだよ絢。」
「それよりも、早く霊夢さん達を追い掛けない?」
海二がそう言うと、白と絢は屈伸を始めた。
「普通に追い掛けてもつまらないな、よし絢、紅魔館まで競争と行こうぜ?」
「負けないぞ~?」
「二人とも置いていきますよ?」
白と絢がメンチを切っていると、海二が先に紅魔館に向かって泳いでいた。
「「待ちやがれこの野郎!!」」
「うわああああ!!何で水の上を走れるんですかぁ!?僕走れないんですよ!!」
白と絢は水面を蹴り飛ばしながら海二を追い掛け、海二はトビウオのように跳ねながら紅魔館に向かっていった。




