修行 白編
九天の滝
「……。」
九天の滝で白は修行を開始していた。まずは九天の滝に打たれながら瞑想をするという修行だが。
「(思ってた以上に水が落ちてくるスピードが速いし、威力も半端ねえな。)」
そう感じながら白は瞑想をしながら、封印を解いていく。最初は水の勢いで首と胴体が別れたり、腕が取れたりしたが、何十回がしている内にそんなことはなくなった。
「(まあ、ほんの少しずつだが戻ってきた霊力で体を薄くコーティングしてるだけだけどな。)」
そう考えながら白は瞑想を続ける。だが白を近くで見ている妖怪がいた。
「ふーん、珍しい事をしている人もいるのね。」
妖怪はそう言い白に向けて掌をかざす。
「けど、目障りだから消えてもらうわ。」
そう言い妖怪は白に向けて弾幕を放った。その速度はそこら辺にいる妖怪が出せるスピードではなかった。
「思った以上に音が出たわね。あのうるさい蝿が来る前に移動しますか。」
妖怪の放った弾幕は滝にぶつかり、大きな音を立てた。白は避ける素振りを見せなかったため、直撃したと妖怪は思っていた。
「別になんとも思わないわね、人間の命なんてそこら辺に生えてる草と変わらないし。」
「そうかいそうかい、その台詞と似たような事を前に聞いたことがあるぞ?」
「っ!!」
妖怪の後ろにずぶ濡れ状態の白が立っていた。声を聞いた妖怪は振り向きと同時に白に殴りかかる。
「うおっ!!危な!!」
白はギリギリで妖怪の攻撃を避けて、妖怪の頭を叩いた。だが妖怪の頭を叩いた白の手はグニャリと折れ曲がった。
「無闇に殴りかかるもんじゃありません!女の子でしょ!?」
「うるさいわね、どうでもいいじゃないの白谷磔。」
「何故ばれたし!?っとそんなことより逃げるぞ!!」
白は一瞬で正体を見破られた妖怪に驚いていたが、天狗の気配を察知して、妖怪が来ていた服の襟を掴んで引きずりながら走る。
「あんた、力が落ちたんじゃないの?」
「その説明は後でしてやる!!取り敢えずこの洞窟に逃げ込む!!」
白は自分の寝床にしていた洞窟に避難し、掴んでいた襟を離した。
「つーか、なんでこんなところにいるんだよ夢月!?」
妖怪の正体は金髪の髪に咲夜と似たような色のメイド服を来ていた夢月だった。
「気まぐれに散歩してたのよ。そしたらあんたが滝で瞑想をしてたから殺してやろうと思ったのよ。」
「知り合いを見掛けたから殺そうっていう発送が恐ろしいわ。それで、本当に散歩の為だけにこっちに来たのか夢月?」
白が夢月にそう問い詰めると、夢月は白から目を逸らした。
「それよりも、なんであんたは仮面なんか着けてるのよ?それに、最初に会った頃よりも力が下がってるし。」
「色々あって力を封印されたんだよ。今は100%の内の2%しか出せねえの。」
そう言いながら白は鞄の中に入ってるビンの中身の豆を一粒取り出して噛む。すると、折れ曲がってた手が元に戻った。
「それに、幻想郷にいる人達から忘れられたから名前も白に変更している。」
「ふぅん、顔とかは変えられないから仮面で隠してる訳ね。けど、わかる人には分かるわよ。」
「分かってるさ、さて話は戻るが何で幻想郷に来てる?まさか姉妹喧嘩でもしたか?」
白が冗談半分に言うと、夢月は言葉を詰まらせた。
「図星か、何で喧嘩したんだ?」
「別にどうでもいいじゃないの、私が幻想郷に来て悪い?」
「悪くはねえけど、じゃあ夢月。もし妖精や妖怪が弾幕を放ってきたらどうする?」
「跡形もなく捻り潰すだけだけど?何か問題あるかしら?」
夢月がそう言い終わるのと同時に白は夢月の頭に拳骨を放つ。今度はしっかりと力を入れた為、夢月は頭を押さえて踞った。
「うぐぅ、何するのよ!?」
「問題大有りだアホ!!こっちにはちゃんとルールがあるんだ、それに従え!!」
「やだ、面倒くさい。」
夢月が不満顔で白の言葉を否定すると、白は夢月の目の前に立ち、両手で頭をグリグリする。
「従えないんだったらさっさと夢幻館へ帰れ!!」
「わ、わかったわよ従うわよ!!従うから頭をグリグリするの止めて!!」
夢月がそう言ったのを確認して、白は両手を夢月の頭から離した。夢月は頭がヒリヒリするのか若干涙目になっていた。
「何でこんなに力が強いのよ!?悪魔である私に物理ダメージを与えるなんて!!この悪魔!!」
「その台詞そのままブーメランで返してやんよ!!封印はされてても、裏技を使えば夢月くらいならダメージを与えることが出来るわ!」
「姉さんには違うメイド服を着てみてと言われるし、白には子供みたいな事されるし、もう頭に来た!!」
そう言い夢月は額に青筋を浮かべながら白に殴りかかった。
「ちょ!!待て!!いくら裏技で対抗出来るからと言って3分しかもたないんだぞ!!」
「修行に付き合ってあげるわ。ただし、虐殺という名の修行をね!!くたばれ!!」
そう言い夢月は妖力を解放して白を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた白の体は一瞬で爆発した。
「脆いわね、人間の体ってこんなに脆かったのね。」
「少しは手加減しやがれアホが!!」
「ふーん、殺っても直ぐに再生するんだ。これから白を殺しまくってイライラを解消するわ。」
「フランよりも恐ろしいわこの子!!だが、只で殺られる訳にはいかねえな!!」
そう言い白は顔面を殴ってくる夢月のパンチを足を払って避けて背中から倒れこむ。白は少し顔を歪めるが、避けた先の光景はなんとも可愛らしい光景が広がっていた。
「な!!」
「ふむ、絢や謙治が見たら発狂しそうだな。にしても、白い下着が、随分と可愛らしいじゃねえの夢月。」
「人間が、私のスカートの中を見るんじゃねえ!!」
そう言い夢月は顔を真っ赤にしながら白の顔面を踏み潰し、脳を破裂させる。
「言葉が汚いぞ夢月、もっと女の子らしい言葉を使わないと。」
「うっさい!!死ね!!くたばれ!!」
直ぐに体が再生した白が夢月の横に立ちながら言う。夢月はまだ少し顔を赤くしながら弾幕を放った。
「つーか狭い空間で暴れるな夢月!!天狗にバレるだろうが!?」
「知らないわよそんなの!!もし来たとしても捻り潰すだけよ!!」
その後、白は夢月を落ち着かせた。夢月は白をジト目で睨んでいた。
「ったく、能力が使えればもっと楽だったのに。で、これからどうすんだ夢月?出来れば夢幻館にお帰り願いたい。」
「嫌。しばらく帰りたくない。だから本当に癪だけど、白の所に邪魔するわ。」
「邪魔するんだったら帰ってくれ。」
「殺すわよ?」
「やれるもんなら、やってみ嘘ですごめんなさい!!だからその手に持ってる銃を降ろしてくださいマジで!!」
白は小石を回しながら夢月を弄るが、夢月が銃を取り出した瞬間、綺麗な土下座をした。
「ってか、その銃持っていてくれたんだな。」
「まあね、使いやすいから使ってるだけよ。それに、銃を使った方が、普通に弾幕を放つよりも威力が出るし。柄も結構お気に入りだし、って何ニヤニヤしてるのよ?」
夢月が銃を回しながら言ってると、白は夢月を見ながらニヤニヤしていた。
「いや、大切にしてくれてるんだなと思ってな。性格とか丸くなれば可愛いのにな。」
「何、私を口説こうとしてるの?バッカみたい。」
「と言いつつ照れてる顔になってるぞ夢月ちゃん、ツンデうぼわぁ!!」
白が言い終わる前に、夢月が銃を使って放った弾幕で白の下半身を吹き飛ばした。
「お前なぁ!!いくら死なないからと言ってな、痛いものは痛いんだぞ!?」
白がそう言い終わった後、下半身が再生した。
「……そう言えば、ここには異変というものがあるんでしょ?」
「まああるな。ちょくちょく起こるな。」
「ちょっと興味があるのよね。早く起きないかしら?」
「もうすぐ起きるぞ。」
白がそう言うと、夢月がニヤリと微笑んだ。
「ねえ、次の異変私が解決していいかしら?」
「駄目に決まってんだろ!!お前と戦った人が死ぬわ!!」
そう言い白は気配を察知して、天狗がいないことを確認して外に出る。
「これから何するのかしら白?」
「修行だよ。今はろくに力が使えないから身体能力を鍛える。それと今まであまり意識してなかった防御力を上げる。いやまてよ、夢月、今ストレス溜まってるんだろ?」
「そうよ、そこら辺にいる生き物を手当たり次第殺したいくらい溜まってるわよ。」
「そのストレス解消に付き合ってやるよ、試合形式でな。」
白はそう言うと、木刀を構えて姿勢を低くする。
「いいわよ、何十回も何百回も殺してやるわ。逃げ出そうとしても無駄だからね?」
「上等、強敵と戦うのがてっとり早く封印も解けるし強くなれるからな。かかってこいよ夢月。」
白と夢月はお互いニヤリとした表情を浮かべて、激突した。




