聖人VS桜
あの後、冥界にいる人達を復活させ、異変は解決された。
「ほんじゃま、異変解決を祝って!」
『乾杯!!』
ガブリエルとサリエルを撃退した翌日、闘技場の宴会ルームに皆集まって宴会を始めた。
「飲めや飲めや!!今日は無礼講だぜー!!霊夢、お前も飲めよ?」
「ちょっと魔理沙!?一気に飲み過ぎよ!!」
「この天ぷらうめぇ!!最高だ!!」
「それは良かったよ幻真、まだまだあるからたくさん食えよ。」
「あー、うるせぇ。」
皆が酒を飲んだり食べ物を食べてワイワイしている中、磔は人がいない所で考え事をしていた。
「どうしたんですか磔さん?何かを考えているようですけど?」
「妖夢か、いやちょっとな。それよりも皆騒いでるから妖夢も騒げよ。」
「妖夢、一緒に飲まない?」
「はい咲夜さん!!あれ?謙治さんはどうしたんですか?」
いつも一緒にいる謙治の姿がないことに疑問を持った妖夢は咲夜に訊ねる。咲夜は呆れた顔をして調理場を指差した。
「終夜と料理対決してるわ。どちらがより多く料理を作れるか競ってるわ。」
調理場の方は、包丁や具材や調理器具を操って料理をしている終夜と、四人に分身して料理をしている謙治がいた。
「やるな謙治!!だがこの勝負は頂くぜ!!」
「そうはいかねえな終夜!!この勝負、勝つのは俺だ!!毎日100食作ってる俺の料理スピードをなめるなよ?」
「甘いな!!俺は110食作ってるんだよ謙治!!」
「いや、実は俺120食作ってるんだよ終夜!!」
「ふっ、本当は俺は130食作ってるんだ!!」
謙治と終夜はそう言い争いながらも料理を作るスピードを上げていく。
「あれは、近づけませんね。」
「ええ、だからあっちに行って飲みましょう。」
「よ~うむ~!!こっちこっち!!」
「咲夜、こっちに来て飲むことを許可するわ。」
「さくや~!!こっちこっち!!」
幽々子とレミリアとフランが一緒に飲んでいたらしく、咲夜と妖夢を手招きし、二人はそっちに向かっていった。
「行きましょう咲夜さん!」
「ええ、そうね。」
咲夜と妖夢は仲良く話ながらレミリア達の所に向かっていった。その光景を磔は切なそうに見詰めていた。
「どうした磔?そんな悲しい顔をしてんだ?」
「霊斗か。そうだな、霊斗には言っておくか。」
磔の隣に霊斗が現れ、磔に声をかける。磔は日本酒を一気に飲み干し、霊斗の方を向く。
「今から言う事は誰にも言わないでくれよ?」
「分かってる。師匠を信じろって磔。」
「俺と絢斗と彰と謙治は不老じゃなくなった。寿命が普通の人間に戻っちまったんだ。」
磔がそう言うと、霊斗は驚いた表情になったが、すぐに真顔に戻した。
「ガブリエルにやられたのか?」
「恐らくな霊斗、だから今は不安で仕方がねぇ。豊姫や依姫、春姫や夏姫を置いて死ぬ事を想像すると宴会を楽しむ気にならねえんだ。」
そう言い磔は豊姫達の方を向く。豊姫は地底の住民の人達とワイワイしながら酒を飲んでいる。依姫は紅魔舘と白玉桜の住民と話しているし、春姫と夏姫はチルノや大妖精やルーミア達と遊んでいた。
「改めて不老になる方法はあるんだろ磔?」
「魔法使いになって捨虫の魔法を覚えるか、仙人になるか、蓬莱の薬を飲むか。方法はあるけど、俺が不老じゃない事を豊姫達が知ったら二度と一緒に暮らせなくなるかもしれねえんだ。」
「だったら早い内に解決すればいいじゃねえか。ったく、そんなことで悩んでたのか。こりゃ指導が必要だな。」
霊斗はため息を付き、指を鳴らした。すると宴会に参加していた人達が闘技場の観客席にワープされた。
「あーー、皆突然の事で驚いてるかもしれないが聞いてくれ。このまま宴会を楽しむのもいいが、それと平行して中途半端になっていたトーナメント戦を再開しようと思う。異論はあるか?」
霊斗が皆にそう訊ねると、歓声が上がった。つまり、OKということだろう。
「あと、大戦相手は俺が決めるからな!じゃあ早速始めるぞ!飲み食いしながら見てて構わねえからな。最初はこの二人だ。」
霊斗がもう1回指を鳴らすと、聖人と桜が決戦場のフィールドに現れた。
「最初は聖人対桜。解説は俺と磔と零でするからな。」
「俺もやるのかよ霊斗。まあいいけどさ。」
「姫ちゃんと一緒じゃねえとい「じゃあ一緒でいいぞ。」サンキュー霊斗!!」
「ルールはどちらかが気絶するか、キブアップするまでだ。そんじゃ、スタート!!」
霊斗の合図とともに聖人と桜は刀をぶつけ合い、鍔迫り合い状態になった。
「まさかあんたと戦う事になるなんてね。私を楽しませてくれるわよね聖人?」
「さあな、俺としては桜と戦いたくはなかったんだけどな!!」
そう言い聖人は自分の刀、真桜剣に力を込めながら地面を蹴る。すると衝撃波が現れ、桜は少し後ろに吹き飛ばされた。
「剣符 イリュージョンソード!!」
聖人は真桜剣に白色のオーラを纏わせ、桜に向けて刀を振るう。すると刀から鎌鼬を現れて桜に向かってくる。
「鎌鼬ね、そんなもので私を倒せると思ってるのかしら!?」
桜はそう叫び、桜の花弁の形をした弾幕を鎌鼬に向けて放つ。桜の放った弾幕と鎌鼬がぶつかり、消滅はせず桜の花弁の弾幕が倍になって聖人を襲う。
「あー!!そうだった、桜の弾幕は相殺しようとすると倍になるんだった!!」
聖人は真桜剣で弾幕を弾こうとするが、寸での所で思い出し弾幕を全て回避する。
「想符 フレアスパーク!!」
「当たると思ってるの?」
聖人はオレンジ色のレーザーを桜に放つが、桜はステップでフレアスパークを避けて、硬直している聖人の脇腹を斬った。
「くっ!!やっぱり当たらないか!!」
「ねえ、本気出してよ。その状態の聖人と勝負しててもつまらないわ。」
桜はソードブレイカーを回しながら聖人に言う。聖人は脇腹の傷を治しながらため息を付く。
「分かったよ。桜のお望み通り本気を出してやるよ。想符 アクセルモード4!!」
聖人はそう言い、緑色のオーラを纏わせ屈伸する。緑色になったのはオーラだけでなく、目の色も髪の毛も緑色になった。
「少しは楽しめそうね。私をがっかりさせないでよ?」
「はいはい。んじゃ行くぞ!!」
聖人はそう言い桜に向かっていく。その光景を磔と霊斗は焼き鳥を食べながら見ていた。
「アクセルモード4、これで桜と対等かねぇ。どう思う磔?」
「聖人が勝ちますよ絶対!!」
磔が霊斗の質問に答えようとする前に、磔の後ろから早苗が現れて霊斗の質問に答えた。
「急に現れるなよ早苗。」
「えへへ、すみません。磔さんはどちらが勝つと思いますか?」
「んー、わかんね。それより早苗、神奈子と諏訪子はどうしたんだ?」
磔がそう言うと、早苗は明後日の方向を向いて頬をぽりぽりとかく。それを見た磔は追及するのは止めておいた方がいいと理解した。
「私は桜って人が勝つと思うなぁ。」
にとりが胡瓜を食べながらそう言う。それを聞いた早苗はにとりの肩を掴んで前後に揺らす。
「ちょっとにとりさん!?聖人が桜さんより弱いって言いたいんですか!?」
「ひゅい!!おお落ち着いてくれよ盟友!!」
「早苗、そこの河童を放してやれよ。」
磔がそう言うと、早苗はにとりの肩を掴んでいた手を離した。
「助かったよ。私は河城にとりって言うんだ。挨拶が遅れてごめんよ白谷磔!!」
「お前、にとりと会ってなかったのか?」
「そういう霊斗はここの世界のにとりと会っていたのか?」
「会ってるぞ。ちょっと用事が合ってな。」
「霊斗が持ってくる胡瓜は最高に美味しいからね。その代わり色々な器械を弄らせてもらってるよ。」
「ちょっとにとり!!置いていかないでよ!!」
にとりの後ろから雛が走ってくる。それを見た零が自分と神姫に結界を張った。
「ごめんごめん。磔に挨拶していなかったからさ。」
「久しぶりだな雛、中々会いに行けなくてすまないな。」
「本当、ずっと待っていたのよ?まあ今日はその分、お話するからね?」
雛はくるくる回りながら磔をジト目で見る。磔は苦笑いしながら頭をかく。
「さて、せっかくだしここで聖人と桜の試合を見ていくか?」
「勿論です!!ここなら聖人を思う存分応援出来ますから!!」
「私もここに残るよ。磔に色々聞きたいことがあるからね!」
「私も磔とお話したいから残ります。」
早苗、にとり、雛はそう言い磔の後ろの席に座る。
「さて、試合の方はどうなってる零?」
「ん?今の所は互角だな。聖人が使ったスペルを桜が使って攻撃してる。聖人は新しいスペルで桜を攻撃してるぞ磔。」
試合を見てみれば、桜が聖人に向けてオレンジ色のレーザーを放ちながら、鎌鼬も放っている。聖人は超技術 縮地を使いながら回避していた。
「相変わらずうざいわね、その超技術は!!」
「人のスペルを真似して放ってくる桜の方がうざいけどな!!しかも威力は俺のより倍増してるし!!」
「うるさいわね!!神羅「知を貪るもの!!」
桜はそう言い想符 アクアウェーブと剣符 雷光斬のスペルの弾幕を聖人に放つ。つまり、大量の弾幕と雷が聖人に襲いかかる。
「っち!!幻符 イマジネーションブレード!!」
聖人は真桜剣に緑色のオーラを纏わせ、桜が放った弾幕を斬り捨てる。真桜剣に当たった弾幕は全て粉々になった。
「へぇ、ならこれならどうかしら?」
「なにがって、うわっ!!スキマも使えるのかよ!?」
聖人の横からスキマの様な空間が出現し、そこから葉っぱ型の弾幕が放たれた。
「ねえ磔、桜ってどんな人なの?」
「今聞くのかよ雛。白狐の妖神と人間のハーフで、ありとあらゆる術を操る程度の能力だ。ちなみに不老不死な。」
それを聞いた雛とにとりは驚いた表情になっていた。
「そそそんなのと聖人は戦っているのかい。早苗、これは勝てそうにないよ。」
「勝てます!!聖人は絶対に負けません!!」
早苗は少し興奮しながらにとりの肩を揺らす。
「わかったから!!わかったから肩を揺らさないでおくれよ!!」
「早苗さん!!」
雛が早苗をにとりから離して止める。にとりは酔ったのか少し顔色が青かった。
「まあ、多分聖人が勝つと思うけどな。そうだろ霊斗?」
「そうだな磔。桜には申し訳ないけど、聖人はまだ全開で戦っていないからな。」
「あれか。あの状態の聖人は桜より強いからな。」
霊斗と磔と零がそう話してる間、早苗とにとりと雛は頭に?マークを浮かべていた。
「磔さん、あれって何ですか?」
「見ていればわかるさ早苗。そろそろ使うと思うからな。」
磔がそう言うと、決戦場から大きな音が上がり、煙が舞っていた。煙が晴れると得意気な顔をしながらソードブレイカーを肩に乗せている桜と、折れた真桜剣を見詰めている聖人の姿があった。
「何で、何で真桜剣が折れたんだ!?」
「私のスペル、刀符 オールブレイクで折ったのよ。」
桜がそう言うと、聖人の全身から血が吹き出た。
「折れて動揺している間に斬らせてもらったわ。」
「くっ!!」
聖人は桜に向けて足を垂直に伸ばして斬撃を放つ超技術 斬脚を使い攻撃するが、桜はソードブレイカーで斬撃を弾き飛ばして聖人の鳩尾を殴って吹き飛ばす。
「はぁ、ぜぇ、ぜぇ。」
「聖人と私の相性は最悪よ。いくら聖人が想力で他の人のスペルを使っても、私もそれを使えるんだから。」
片膝を付いている聖人に向けて桜は首を鳴らしながら言う。その後、桜はソードブレイカーをしまい、スペルカードを取り出す。
「陰陽 陰陽刀 開花。これで終わりにしてあげるわ。」
桜は桜色の刀を作り、聖人に向かって突撃する。陰陽刀が聖人の首に触れる瞬間、聖人は銀色のオーラも纏わせて陰陽刀を掴んだ。
「まさかこれを使うことになるとはな。2回目だから発動するかどうか怪しかったが、発動出来て助かったぜ。」
そう言い聖人は桜を蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた桜の体は粉々になったが、すぐに再生して戻通りになった。
「今のは衝撃粉砕ね。でもその急激なパワーアップ、アクセルモード5かしら?」
桜は冷や汗をかきながら聖人に訊ねる。それを聞いた聖人は首を横に振る。
「違うな、これはアクセルモードとオーバードライブは合わせたスペル、アクセルドライブだ!」
「けど、ただパワーアップしても私には勝てないわよ?」
桜がそう言った瞬間、桜の周りだけ温度が下がった。
「な、何をしたのよ聖人!?」
「チルノの能力を使っただけだ。さらにそれだけじゃねえぞ?想符 殺人ドール!!」
そう言い聖人は桜に大量のナイフ弾幕を放つ。桜はそれを避けようとするが、体がほんの少ししか動かず体全体にナイフが刺さった。
「うっ!!一体何をしたのよ!?」
「輝夜の能力で桜の体の動きを限界まで遅くしたのさ。今の俺は他の人の能力を使うことが出来る。さてどうする桜?ギブアップするか?」
「ちなみに能力は併用して何個使えるのよ?」
「今は3つだ。アクセルドライブlevel3を発動してるからな。最高5つまで併用出来る。」
聖人の答えを聞いた桜は刺さっていたナイフを抜き、陰陽刀を構えた。
「そんなものを隠していたなんてね。けど、私は不老不死よ?ギブアップなんて言わないわよ?」
「だったら、奥の手を使うまでだ!!想符 サンクスパーク!!」
聖人はそう言い白色のレーザーを桜に向けて放つ。
「魔理沙の能力とパチュリーの能力とレミリアの能力を合わせたサンクスパークを喰らえ!!」
「絶対に当たるようにしたのね。なら白霊 無想天生 斬!!」
桜はそう言い陰陽刀でレーザーに向かって突きをしながら突撃する。レーザーは陰陽刀に触れた瞬間にまっ二つになった。
「マジかよ!!めっちゃ強化してあったのに!!」
「このスペルはどんな物も両断出来るのよ!!」
聖人は慌てて咲夜の能力を使って逃げようとするが、何故か時を止めることが出来なかった。
「無駄よ!!空間に影響する能力は無想天生 斬の前では発動出来ないわよ!!」
「くっ!!想符 四重結界!!」
聖人は自分の前に結界を張るが、陰陽刀が結界に触れた瞬間にレーザーと同じくまっ二つになった。
「終わりよ!!」
だが聖人は陰陽刀に触れる前に瞬間移動で桜の後ろに回った。その後、右手を握り締めた。
「逃げられ、た。あ、れ?力が、入ら、ない?」
桜は止まって聖人の方を振り向いた時、力なく倒れていった。その様子を見て聖人はホッとため息をついた。
「フランの能力で桜の霊力や妖力を破壊した。上手くいって良かったよ。キブアップするか?」
聖人がそう言うと、桜は力なく首を縦に動かした。
「勝者、泊谷聖人!!」
「やったやった!!聖人が勝ちましたよ!!」
早苗は聖人が勝った嬉しさでぴょんぴょん跳び跳ねていた。それをにとりと雛は苦笑いしながら見ていた。
「磔もアクセルドライブ?を使えるの?」
「いや、あれは聖人だけが使えるんだ雛。さて、この次の試合もここで見るか?」
「違うところで見るわ。久しぶりにお話出来て楽しかったわ磔。またお話しましょう!」
そう言って雛はくるくる回りながら歩いていった。
「じゃあ私も違うところで見るね。またね磔!!」
「今度そっちにお邪魔するからな!」
にとりも胡瓜を食べながら歩いていった。早苗はしばらくぴょんぴょん跳ねたあと、ハッとして走っていった。
「ん?どうしたんだ早苗は?」
「聖人を迎えに行ったんだろう。さて、次の試合に出る人を発表するぞ!!」
そう言い霊斗は指を鳴らす。決戦場に現れたのは、快と蒼だった。
「次は快対蒼、ルールは前の試合もと一緒だ。じゃあスタート!!」




