最終決戦(中編)
月
「無駄な決意だ、お前がどんな考えであろうと何も変わりはしない。」
「てめえには言われたくねえな、無理矢理依姫を操ってるてめえにはな。」
体のあちこちから出血している磔が、ウガヤフキアエズノミコトを睨み付けながら言うが、ウガヤフキアエズノミコトは鼻で笑い飛ばす。
「世界を救うためなら致し方ないことだ、俺様はこの世界を救う。人間は大人しく寝ていな。」
ウガヤフキアエズノミコトが両手を広げながら言う。それを磔は斬撃をウガヤフキアエズノミコトの頭に向けて飛ばす。
「この世界を救う、か。お前はこの世界を全ての事を把握してるのか?どれだけの人が助けを求めているのか知ってるのか?」
磔からの問いをウガヤフキアエズノミコトは斬撃を避けながら考えていた。
「なるほど、興味深い意見だな。」
そう言いウガヤフキアエズノミコトは顔をニヤリとさせる。その瞬間に磔の左腕を食らおうと地面から鮫が飛び出してくるが、磔は左手で鮫の鼻を殴り飛ばす。
「俺の力を使って世界を救おうとしたのか、でもさせねえよ。」
磔はそう言い左腕に白金色のオーラを宿す。そして、額には虹色の炎が出現していた。
「……まあいい、お前の意見は世界を救ってから考えることにしよう。」
ウガヤフキアエズノミコトはそう言い、磔に向けて弾幕を放ち、磔の左腕を刈り取ろうとする。だが、磔はウガヤフキアエズノミコトの攻撃を全て受け流していく。
「世界を救ってやると言ってる奴に世界を救う権利はない。」
「それは俺様が決めることだ。」
二人はそう言いながら激突した。磔がアルジェントカーテナでウガヤフキアエズノミコトの体を斬ろうとするが、ウガヤフキアエズノミコトは体を捻って回避する。
「俺様とお前とでは戦闘力が違いすぎる。ただの人間が神に勝てるわけがない。」
ウガヤフキアエズノミコトは自身の周りを浮遊していた鮫を刀の形に変化させ、磔の首を斬ろうとする。
「おい、ウガヤフキアエズノミコト。1つ言っとくぞ。」
そう言い磔はウガヤフキアエズノミコトの刀を右手で掴んだ。
「人間なめんじゃねえ!!」
「舐めてはいない。お前を舐めているのだ!!」
ウガヤフキアエズノミコトは磔に衝撃波を放つが、磔はしゃがんで回避する。続けてウガヤフキアエズノミコトは追尾弾幕を磔に放つが、磔は左手で追尾弾幕を殴って消滅させる。
「なるほど、さっきのスペルの集いし願いは強化スペルか。そして、その左腕に纏っているオーラは不可思議な力を無効化するといったものだな。」
「それがどうした?」
「中々に恐ろしい力だと思っただけだ。今のお前の左腕に触れれば力を失うからな。」
そう言っているが、ウガヤフキアエズノミコトは余裕そうな表情で磔を見ていた。まるで勝利を勝ち誇った顔をしていた。
「だが、無意味だ。所詮人は神には勝てない。どんなに足掻こうが俺様には勝てんよ。」
「やってみなきゃ……!!!」
磔は一歩踏み出した時、いきなり激痛が身体中に走り、磔は倒れた。
「何、で!?まさか!!」
「お前だけじゃないんだよ、不可思議な力を無効化する力を持っているのは。俺様も持っているんだ、神だからな!!お前の絆を繋ぐ程度の能力は無効化した!!その能力が泣ければ集いし願いの次のスペルは使えない!!」
そう言いウガヤフキアエズノミコトは磔に巨大な雷撃を喰らわせる。磔はいきなりの激痛で反応が遅れたため、雷撃をもろに喰らってしまった。
「不可思議な力を無効化する力は俺様の方が強かったな。だが誇りに思うが良い、人間相手に力を使ったのは初めてだからな!それに、しばらくは不可思議な力を無効化出来なくなったぞ、どうしてくれる!?」
そう言った後、ウガヤフキアエズノミコトは高らかに笑いながら磔を踏みつける。それを磔は意識が飛びそうなのを抑えながら聞いていた。
「(最後の希望のスペルも無効化された。ハイパーソウルモードじゃあいつには勝てない。万事休すか、ごめんな依姫。)」
「(おーおー、絶望してるなぁ。お前らしくないんじゃないのか磔?)」
磔が絶望していると、脳に誰かの声が聴こえてくる。
「(あれだけ俺に説教しておいて絶望するのか?)」
「(うっせーな聖人。どうしようもないから絶望してるんだよ。ってか何で話しかけてくんだよ?)」
「(もう一人の俺を助けにきちゃ駄目なのか?やれやれ、磔は絶望の逆境から何時だって逆転していったじゃねえかよ。)」
聖人にそう言われて磔は思い出す。白谷磔になってから数々の逆境を越えてきた。月で依姫と戦った時、未来での幻想郷で黒幕と戦った時、サリエルと最初に戦った時、どの逆境も磔は乗り越えてきた。
「(けど、今回の相手は希望論でなんとかなる相手じゃねえ。わかってんだろ?)」
「(その度に色々な事をしていったじゃねえかよ。アクセルモードを進化させていったり、時間を引き伸ばした所で修業したり、色々な世界を飛び回っていったり。)」
そこまで言って聖人は一呼吸置いた。
「(まだ、可能性はあるだろ?ハイパーソウルモードより上の進化が。誰にも見せてない進化があるんだろ?)」
「(……聖人に説教されるとはな。)」
「(今まで散々されてきたからな。そのお返しだ、ほらさっさと倒してこい。)」
「(言われなくても!!)」
幻想郷
「ちぃ、面倒くさい役割を受けちまったもんだ!!」
そう言いながら斬撃を避けている男、終始終作は愚痴を溢しながら溜息をつく。
「出番があまりなかったからここで良いところを見せるぞ、って思ってたのによぉ。」
終作は無表情の依姫が飛ばしてくる斬撃、衝撃波、炎を両手で弾きながら依姫に近付き、蹴りを放つ。
「こんな面倒臭いことになるとは思ってなかった、うおっと!」
終作の放った蹴りは依姫の刀に受け止められ、終作の足元から先の尖った柱が出てくる。それを終作は避けて弾幕を放つ。
「誰か~!!ヘルプに入って~!!俺一人じゃ辛いよ~、たーすーけーてー!!」
終作がそう叫ぶが、ただ声が反響するだけだった。その隙に依姫は終作の懐に潜り込んでボディブローを放つ。
「むっ、いつの間に潜り込んでいたか、でも甘いね~。」
終作は依姫の放ったボディブローを右手で受け止め、ハイキックを放つ。依姫は防ぐ事が出来ず、数メートル吹き飛ばされた。
「俺を殴ろうだなんて百年早ぃぃぃ!?痛った!!」
終作がどや顔していた時に、依姫のボディブローを受け止めた右手に殴られた衝撃が走った。しかも1秒置きに衝撃が走った。
「痛い痛い!!これは意外と痛い!!」
終作は霊力で右手に来る衝撃を消し、左手で頭をかいた。
「これは磔のスペルの技じゃねえかよ。しかもご丁寧に不可思議な力を無効化する能力付きかよ。こりゃ、余裕ぶっこいてる場合じゃないね。」
終作は右手の調子を確かめていると、目の前に螺旋状に回転しているレーザーが現れた。終作は自分の前に次元の裂目を出現させ、レーザーを違う次元に放り込んだ。
「本気を出せば依姫の洗脳なんて余裕のよっちゃんで解除出来るけど、それじゃあ駄目なんだよなぁ。ここは磔達の世界だし、磔達が解決しないとな。」
終作がそう言ってると、終作の上から雷が墜ちてくる。その雷は終作に直撃し……てはなく、終作の体をすり抜けていった。
「今は依姫が他の所に行かないように時間を稼ぐ事しか出来ないか。まあ、その間に磔達が異変を解決してくれれば、俺の勝ちって事だな。」
そう言い終作はニヤリと顔を歪めて、向かってくる依姫と対峙する。
冥界
「全く、雑魚が多すぎて面倒だなぁ。」
「そうだね、ボクもそう思うよ。でも動けるのはボクと悠飛しかいないからねぇ。」
悠飛とウィットは突然暴走し、白玉桜に攻撃してくる幽霊達を撃退していた。
「幻想郷で死んだという事になったら、白玉桜に連れてくる魔法を皆に掛けたけど、まさかあんなことになるなんて。」
「ガブリエル、相当な力を持っているわね。ウィット、魔力は大丈夫!?」
「全然平気だよ~!!」
ウィットの言ったあんなこととは、幻想郷で死んだ事になった絢斗達は白玉桜で保護するという形をとっていたのだが、ガブリエルの力によって目が覚めなくなっていた。
「ボクと悠飛は死んでないから動けるんだけどねぇ。」
「あ~もう数が多い!!ウィット、スペル使うわよ。天飛翔 星之勾玉!!」
悠飛がそう言うと、悠飛の周りに大量の妖力弾が出現し、幽霊の所に飛んでいった。その速度はやたら速く、幽霊達は回避動作をする前に妖力弾に当たる。しかも当たった瞬間に爆発も起こした。
「うわぁ、えげつないスペルだねぇ。」
「よし!!これで終わってない!?」
悠飛が一息つこうとした瞬間に地中から幽霊達が大量に出現し、西行妖の方へ飛んでいった。
「ね、ねえ。なんかボクとんでもない予感がするんだけど?」
「奇遇ね、私もよ。」
二人がそう言ってると、西行妖は幽霊達を吸収していく。全部の幽霊を吸収し終わった時、西行妖から大量の狂気が放たれる。
「この狂気はまずい!!」
ウィットが慌てて絢斗達が眠っている所を結界で防ごうとするが、ウィットが結界を張る前に緑色の結界が張らさっていた。
「あいつを説教し終わった後、目が覚めたから外へ出ようとした瞬間これかよ。」
緑色の結界を張った人物、泊谷聖人がウィットに向かって歩いてくる。
「聖人!!狂気は大丈夫!?」
「大丈夫大丈夫、以前にこれよりも強い狂気を纏っていたからな。これくらいなんともない。」
「嘘は付いてないみたいだね!!」
悠飛がそう言うと、聖人は黙って頷く。
「ウィット、俺の代わりに結界を張ってくれない?」
「どうし!!わ、わかった!!」
ウィットが理由を聞こうとするが、何をするか察知出来た為、聖人の言う通り、聖人が張った結界を解除し、自分の結界を張った。
「聖人が出てきて大丈夫なの?フォローはしてあげられないわよ?」
「要らねえよ。」
聖人はそう言い刀を抜き、地面に刺す。すると、聖人から緑色と青色のオーラが出現する。
「磔だけが強くなった訳じゃねえよ、俺だって強くなってんだよ。それを見せてやる。」
「そのオーラはアクセルモード、でも何かが違う!!」
「ご名答。この技はアクセルドライブモード、2つの強化スペルを組み合わせたスペルだ!!さてガブリエル、てめえの思い通りにはさせねえぞ!!」
「これは、頼もしいね!!聖人、西行妖の暴走を止めるわよ!!地上をお願い!!」
悠飛はそう言い西行妖に向かって飛んでいき、聖人は走って西行妖に向かっていった。
再び月
ウガヤフキアエズノミコトは動かない磔を見下ろしていた。
「さて、白谷磔。最後に言い残す事はあるか?」
ウガヤフキアエズノミコトは鮫を刀に変形させて訊ねるが、磔は黙ったままだった。
「まあ、お前の妻は俺様の「勝手に決めつけんじゃねえよ。」まだ死んでなかったッ!!」
ウガヤフキアエズノミコトは磔から蒼色のオーラが出現した為、後ろに下がった。
「はぁ、俺って有言不実行だな。」
「そのオーラはアクセルモード!!だがお前は捨てたはず!!なのに何故!?」
ウガヤフキアエズノミコトは警戒していた。捨てたはずのアクセルモードのオーラが出現している。何故なんだと。
「完全には捨ててねえよ。封印しようと思ってただけだ。けど、封印している場合じゃなくなったからな。」
磔がそう言うと、蒼色のオーラ以外に白金色のオーラも出現した。
「お前、一体何をするつもりだ!?」
「未完成の技だ。匙加減間違えれば力が暴発して死んでしまう技。成功率は五%未満だ、けど!!」
磔は拳を握り締めて立ち上がると、更に緑色のオーラも出現させる。
「そういや何をするつもりなのか話してなかったな。ある技を3つ重ねて発動させている。」
磔はそう言い、すべてのオーラを消した。
「失敗か、どうやら俺様の心配は杞憂だったようだな。」
ウガヤフキアエズノミコトは冷や汗をかきながら磔の顔を見る。磔はニヤリと笑みをみせていた。
「残念、成功だ!!」
磔がそう言うと、蒼色、白金色、緑色のオーラが出現した。さっきよりもオーラが大きくなっていた。
「出来たぜ、アクセルモード、ソウルモード、オーバードライブモードを組み合わせた技が完成した!!危うく体が爆発するところだったぜ。」
「そ、そんなもの虚仮威しだ!!」
「虚仮威しかどうかは自分の目で確認するんだな!!」
そう言いウガヤフキアエズノミコトと磔は再び激突する。




