最終決戦(前中編)
「一人いなくなったか。まあいい、貴様ら三人が居なくなればこの世界は我の物になるのだからな。」
「ごちゃごちゃうっせえよガブリエル。」
そう言い放って霊斗は龍滅剣・王武を抜いてガブリエルに斬りかかる。ガブリエルは右側の羽で防ぎ、そのまま右側の羽で霊斗を貫こうとしたが、羽はピクリとも動かなかった。
「時間を斬ったか。その剣は時間、空間を斬れるそうだな。」
「一撃でよくわかったもんだ。」
霊斗は龍滅剣・王武を左手に持ちかえ、右手でガブリエルの顔面を殴ろうとしたが、霊斗が持っている剣で受け止められる。
「その剣、想像したか。」
「我の力は想像、貴様程度の力の物なら想像出来る。」
そう言いガブリエルは霊斗から離れ、空間を蹴って霊斗に斬りかかる。霊斗も縮地を使ってガブリエルに斬りかかる。
二人の剣がぶつかり合う。だが、ぶつかり合った音は響き渡らなかった。何故なら次元を超越した速さで二人とも剣を振るってるため、音が発生しなかった。
「おい、俺も混ぜろよ。」
霊斗とガブリエルがぶつかる時、その間に零が割り込んだ。普通次元を超越した速さでぶつかっている二人を止めようとしたら跡形もなく消し飛ぶが、零は神姫以外の干渉を受けない為、左手でガブリエルの剣を、右手で霊斗の剣を受け止めた。
「水くせえじゃねえか霊斗、俺も戦闘に混ぜろよ?」
「わかったよ零。神姫は参加しないのか?」
「姫ちゃんはある準備があるからな。後々来るさ。」
そう言い零はガブリエルにアッパーを喰らわせる。だがガブリエルは吹き飛ばされず、顎で零の拳を受け止めた。
「温い攻撃だ。」
ガブリエルは溶岩を想像し、霊斗と零に向けて放つ。
「そんなんで俺を殺せると思ってんのか?」
零はよっこいせーっという力を感じない声で右拳を振るう。すると突風が現れ、溶岩を消し飛ばした。
「零、俺の方に突風を出すな!!」
「メンゴメンゴ、面倒くさいから全方位に突風を起こした。姫ちゃんには当ててないぞ。」
「ふざけた野郎供だ。」
そう言いガブリエルは手から水滴を出し、空に向かって放つ。
「何してんだ?」
「貴様達を殺すのは骨が折れる。だがら貴様ら以外の人を殺すことにしたのさ。」
ガブリエルがそう言うのと同時に神姫が零の所にやってくる。その表情は焦っていた。
「大変です兄さん!!冥界に避難させた人達が、狂い始めました!!」
「何!?」
「さあてどうする?このまま我の相手をするか、味方を助けに行くか、どっちをとるのかしら?」
ガブリエルは顔を歪ませながら笑うが、ガブリエルの顔のすぐ横をレーザーが通り抜ける。霊斗がガブリエルにレーザーを放ったのだ。
「お前を倒すに決まってんだろ。それくらいで俺の友人や弟子を殺せると思うなよ?」
「霊斗の言う通りだ。ガブリエルは俺らの友人を舐めすぎだ。」
「準備が整ったので私も参戦します。兄さん、いいですよね?」
「どれだけ信じても無駄だ、我ら天使には敵わない。それを思い知らせてやる!!」
月の都市
「ここに多分、現れる筈だ。」
磔は瞬間移動で月の都市に来ていた。本来なら侵入者扱いされるところだが、磔は月の住人となってるので、玉兎が磔を見付けても捕らえようとはしない。
「磔さん!どうなされたんですか!?」
玉兎の一人が磔の元にやってくる。磔は時折月の軍隊の教官をしているので、教え子が挨拶に来るという事はよくあった。
「丁度いい、いいか、早急に月の住人を避難させろ。」
「どうしてですか?」
「それはな。」
磔がそう言いかけた時、月の都市の上空に巨大な大剣が現れた。長さは50キロメートルくらいで、剣の根元が見えなかった。
「現時点で避難命令を出してる時点で手遅れだ。」
ウガヤフキアエズノミコトの声が響き渡った瞬間、大剣が上から下へ降り下ろされた。
「!!!」
磔の近くにいた玉兎達は無駄だと分かっていながら身を屈めた。空気が揺さぶられ、ひこうき雲のようなものが生み出された。
あの巨大な大剣が降り下ろされ、地面に直撃してたら月の都市は消滅していただろう。いや、月の軸に影響を及ぼす程の一撃。
「オオオォォォォォォォ!!!」
だが白谷磔が左腕を突き上げて大剣を受け止めた。ミシミシと嫌な音が響き渡ったが、磔はそれを無視して能力で大剣を粉々にする。
「(骨が折れたか?いや、そんなこと確認している場合じゃねえ!!)」
「磔さん!!」
「俺に構うな!!避難しろ!!」
磔が玉兎にそう叫び、避難を促す。そうしている間に磔の目の前にウガヤフキアエズノミコトが現れる。
「俺様に勝てると思ってるのか?」
「うっせぇ!!」
磔はそう言いレーザー弾幕を放つが、ウガヤフキアエズノミコトが左手を前に突出す。するとウガヤフキアエズノミコトの後ろに巨大な鮫が現れて磔の放ったレーザーを飲み込んだ。
「何だよ、それ?」
「俺様の力さ、それよりいいのか?そんなにボケッとしていて?」
ウガヤフキアエズノミコトが左手を握り締める。すると鮫が磔に向かって突進する。磔は真桜蒼剣・改を前に出し、防御しようとしたが、鮫の突進を抑える事が出来ず後ろに数メートル吹き飛ばされる。
「ふんっ。」
磔は刀を地面に突き刺して静止する。その間にウガヤフキアエズノミコトは磔を追撃しようと駆け出すが、急に動きが止まった。
「なるほど、突破するには少々堅い壁だったらしいな。」
「かはっ!!ゲホッゲホッ!!」
磔は自分が吹き飛ばされる瞬間に自分とウガヤフキアエズノミコトの間に結界を張っていた。その為ウガヤフキアエズノミコトは追撃出来なかった。
「けど、普通に突破出来る壁だ。あまり俺様を舐めるなよ?」
ウガヤフキアエズノミコトが左手を振るった後、結界が弾けとんだ。
「ッ!!乱符 スピンシュート!!」
磔は螺旋状に回転したマスパをウガヤフキアエズノミコトに向けて放つが、またしても鮫が磔のスペルを防ぐ。
「蹴符 ディフュージョンシェル!!」
磔は続けて前方に蹴りを放ち、衝撃波を放つ。だがウガヤフキアエズノミコトは蜘蛛の巣を払うように左手を振るう。それだけで衝撃波が無くなり、逆に磔の方に飛んでくる。
「ごっこ遊びは俺様には通用せんぞ?」
「くっそ!!」
磔は衝撃波に備える為に超技術「肉鎧」を発動させ、衝撃波に耐える。その後、ウガヤフキアエズノミコトの鮫が飛んでくるのを左腕で受け止める。
「うぐっ!!おおおお!!」
磔は左腕でウガヤフキアエズノミコトの鮫を後ろに逸らし、ウガヤフキアエズノミコトに向けて走り出す。
「絆符 夢想杯翔!!」
磔は背中に霊力で出来た羽を生やしてウガヤフキアエズノミコトに向けて突進する。このスペルは弾幕や結界などは効かない。当たったら致命傷を負うほどの威力の突進だが。
「そんな子供騙し、俺様には通用しない。」
「!!!」
磔は嫌な予感がしたため、咄嗟に急ブレーキをし、ウガヤフキアエズノミコトの正面から離れようとするが一歩遅く、ウガヤフキアエズノミコトが投げた水のナイフが体全体に突き刺さった。
「神力で付けられた傷は簡単には治らない。終わったな。」
「どっ、ぼ。」
あまりの痛みに磔は声を出すことが出来ず、地面に倒れそうになるが、すんでの所で踏みとどまる。
「絆符 集いし願い。」
磔はそう言いウガヤフキアエズノミコトの顔面に向かって右手で殴ろうとする。だがウガヤフキアエズノミコトの所に戻ってきた鮫に阻まれた。
「遅い、遅すぎる。俺様には止まって見えるぞ。」
そう言いウガヤフキアエズノミコトは磔の前に立ち、左手で磔の顔面を殴り飛ばし、一瞬で磔に刺さっていた水のナイフを抜き取った。磔は全身から血を吹き出しながら数十メートル吹き飛ばされ、うつぶせになって倒れた。
「くくっ!!はは!!流石は神の力。ここまで力が膨れ上がるとはな!!」
「うる……せえよ。」
月の都市にウガヤフキアエズノミコトの高笑いが響き渡るが、磔はそれを無視して立ち上がる。全身から血を流しながら。
「愉快な奴だ。」
ウガヤフキアエズノミコトはそう言い鮫を自分の真上に泳がせながら言う。
「今までどれだけの人や妖怪や神の為に立ち上がってきた。どれだけの異変を解決するために、その力を振るってきた。本当にお前は愉快な奴だ。」
ウガヤフキアエズノミコトは左手を動かしながら言う。
「1番愉快なのは多くの他者に即発され、自ら危地に赴いておきながら結局全ての成果や報酬はお前へ蓄積されているって所だな。」
「てめえは何が言いたい?」
磔はウガヤフキアエズノミコトを睨み付けながら言う。対するウガヤフキアエズノミコトは涼しい顔をしながら言った。
「お前は自分の行動等が本当に正しい事だと、確信を持っているのか?」
「何、だと?」
「お前が今まで行ってきた事と、俺様が今やろうとしている行動は根本的には変わらない。お前は他人が必死に積み上げてきた努力を粉々に砕くようなやり方だ。俺も同じような事をしている。手段に差はない、そして俺には確信がある。俺様の行動が絶対的な善の到達を意味するとな。」
「そのために、依姫が苦しめられても放っておけと言いたいのか!?」
磔は一瞬も迷わずに反論する。
「なら、俺様を止めるお前は善だと言いたいのか?」
「善かどうかなんて問題じゃねえんだよ。依姫が苦しんでる。今起きてる異変のせいでたくさんの人が泣いたり苦しんでる。立ち上がりたいと思うのはそんなにおかしいことか?」
「……。」
「少なくとも大勢の人や妖怪が苦しんでるのを見てみぬふりをして、自分の利益の為に行動しているような野郎にいちいち文句を言われる筋合いはねえんだよ!!」
磔は声を荒げながら叫ぶ。だがウガヤフキアエズノミコトは笑いながらリモコンを磔に見せる。
「まったく、お前は本当に愉快だな。」
「何が言いたい?何故ニヤニヤ頬を緩めやがる?」
「その台詞、お前が嘘をつき続ける俺様の妻の前でも言えるのか?」
ウガヤフキアエズノミコトの言葉を聞いた磔は肩を震わした。
「このリモコンを通して、俺様の妻とさっきまで繋がっていた。情報も共有していた。お前が本当にそう思ってるなら何故俺様の妻に白々しい演技を続けている?」
「(こいつ!!気付いて!!)」
「お前はある誓いで俺様の妻と行動しているが、それが本当に俺様の妻にとって救いになってるのか否か、審判が下るのが楽しみだ。まあ、その前に殺すんだかな。」
そう言いウガヤフキアエズノミコトは動揺して動けないでいる磔に、上で泳いでいた鮫でボディプレスを喰らわせる。
ズドン!!と言う巨大な音が響き渡り、ウガヤフキアエズノミコトは鮫を自分の後ろに移動させる。磔は鮫に押し潰され、倒れていた。
「(くっそ、あの野郎の言葉が頭に響く。)」
磔は薄れ行く意識の中で考えていた。
「(あの野郎を倒した所で依姫が救われるのか?俺は、俺は依姫を騙し続けてきたんだ。立ち上がった所で俺は何が出来る?)」
1番好きな相手は豊姫だった。依姫と結婚したのは依姫を守るという誓いを豊姫としたからだった。磔は好意を依姫に向けてはいなかった。
「……。」
磔は暫くボーっとしていた。その時間は僅か1秒ほどだった。だが1秒経過した後、誰かの声が聞こえてきた。
「何が理由だ、何が正当性だ。そんなもん、欠片も必要ねえんだよ!!筋の通った論理的で正確性のある動機がなければ立ち上がっちゃいけないのか!?」
「(この声は、快の声、か。)」
快の声が聞こえた時、磔に再び力が戻る。まるで快の声が磔に力を分け与えてるかのように。
「お前の大切な人が苦しんでるんだ!!いつもの笑顔を浮かべることが出来ねえんだ!!それだけで戦えよ!!」
「(これは、健二か。)」
「言い訳なんか考えてんじゃねえよ!!それ以上の合理的な理由なんてのをウジウジダラダラと探してんじゃねえよ!!」
「(彰……。はは、その通りだな。)」
磔は両手両足に力を込めて再び立ち上がる。どれだけ血が吹き出ようが、傷が開こうが、それらを無視して磔は立ち上がろうとする。
「他人に全部任せておけばそれで何もかも解決すんのか!?泣いてほしくない人が泣いてるんだ!!助けてくれって言えずに耐えてるんだ!!それだけで立ち上がる理由になるだろ!!」
「(その通りだよ、良太。)」
「正しいから守るんじゃねえ!!ルールブックや規律に書いてあるから仕方無く助けるとか、そういうもんじゃねえだろ!!」
「(耳が痛いぜ、絢斗。)」
磔はフラフラになりながらも二本の足で立ち上がる。
「俺が!!この俺がただ助けたいだけなんだよ!!だったら止まる必要なんかねえだろうが!!」
「(謙治……。)」
「お前はどうなんだ!?大して知らない他人を勝手に持ち上げて、自分の大切な人を預けて自分は逃げる。それで全部満足出来んのか!?」
「(そうだよな聖人、まさしくそうだよな!!)」
「また立ち上がったか、お前が立ち上がる事で、俺様の妻が苦しむということがまだ分からねえのか!?」
ウガヤフキアエズノミコトは大声で磔に向かってそう叫ぶ。
「確かに俺は最低だ。依姫を騙してきたくそ野郎な人間だ。依姫を苦しめたからもう依姫に顔を会わせてもらえないかもしれない。」
磔はウガヤフキアエズノミコトの言葉を受け止めた。けど、その上でハッキリと次の言葉を言い放った。
「でも、だからと言ってな!!頭を下げる相手はてめえなんかじゃねえんだよ!!」
「ふっー、これは中々しんどいね。」
終始終作は依姫を守りながらゴリラやゴキブリとかと戦っていた。涼しい顔をして戦っていたが、突然険しい表情になった。
「……事態はのんびりと待ってくれないようだな。」
終作がそう言うと、突然ゴパッ!!と言う爆音が響き渡った。終作はその事が予測出来たため地面に踏みとどまれた。
「おいおい、これはマジでやべえ。」
爆音を起こした者は依姫だった。だが意識は無く、何者かに操られているようだった。
「地上人を発見。これより……浄化体勢に移ります。目の前の地上人の能力の解析、及び浄化に必要な手段を構築します。」
「霊斗、零、神姫、磔、急いでくれよ。こいつは俺一人で完全に抑え込むのは骨が折れそうだ!!」




