夏と言えば
あの後、宴会は夜中まで続いた。流石に騒ぎすぎたらしくもう皆疲れきった顔だった。
「片付けはどうします?」
「うーん、もう眠いから明日でいいや。」
聖人のこの言葉で宴会はお開きとなった。そして各自空いている部屋に入った。幸い未来の守矢神社にはたくさんの空き部屋があったため全員が入れる事ができた。
聖人は早苗と佳苗、絢斗は妖夢と有夢などといったそれぞれの恋人とその子供と一緒に寝ることになった。だが一人だけ困っている人物がいた。
「俺どうするー?」
謙治だった。咲夜と咲の所に行きたいらしいが、まだ警戒心が残ってると考えているらしく一人呆然としていた。
「………………立って寝るか。」
どのような考えの結果でそういう寝かたき決めたのかは知らないが、謙治は外に立ってある柱に寄りかかって寝ようとする。
「はぁ、咲夜とその子供と一緒に寝てみたかったもんだ。いや、寝たあとにこっそり忍び込めばいいんじゃね?」
「そんなことしましたらお母様からナイフが飛んできますよお父様。」
「だよなー、ってまだ寝てないんか?」
謙治が横を向けば眠たそうに目を擦りながら立っている咲がいた。
「咲夜はどうした?」
「ここにいましてよ?」
咲の後ろに咲夜が腕を組みながら立っていた。
「おおう、二人ともお揃いのようで。で、用は何かな?また俺をハリセンボンにするのかな?」
謙治は大きな欠伸をしながら訊ねる。
「いえ、制裁はさっきので終わらせましたから。」
「おろ?そんなのでいいのかい?」
これには謙治は驚きを隠せなかった。てっきりもっと絞られると思っていたらしい。
「宴会の間に聖人が貴方の心を読み、本心を探ってくれましたから。」
「あいつそんなことも出来るのか、いや、あいつも出来るから当たり前か。」
「本当に反省しているみたいですね。」
「まあな、って言ってもまだまだこんなので許されるとは思えないがな。」
「そういうことだ。」
「「「???」」」
突然、暗闇から謎の声が聞こえてくる。その声の主は段々と謙治達に近付いていく。
「ん?あんたは確か……。」
「レミリアだ。時弥謙治、お前に言い渡す事があって未来に飛んできた。」
「お嬢様!?どうしてここに!?」
「なに、ほんの少しの間だけ意識を未来に飛ばさしてもらっただけよ。」
レミリアは驚きを隠せない咲夜に向かって言う。その後、謙治の方を向き。
「さっき八雲紫とお前の処罰をどうするかを決めてきた。お前の処罰は……。」
「ここで殺すとかか?」
「そうしたいのは山々なのだがな、ここでお前を殺すと私の見た運命が変わってしまう。」
「で、どうなるんだ?」
「お前を紅魔館の執事として死ぬまで働いて貰うことになった。」
レミリアはどや顔で言ったが、足が小鹿のようにぷるぷる震えていた。
「足がぷるぷる震えているぞ、よく耐えましたねーえらいえらい。」
謙治はレミリアを頭をなでなでした。それが気に食わなかったレミリアは顔を真っ赤にしながらじたばたする。
「あ、頭を撫でるな!!ここまで完璧だったのに!」
「そうは言っても顔はひきつってるし、足が震えてたからな。」
「五月蝿いわね!!」
レミリアは咄嗟にグングニルを作り出し、謙治に刺そうとする。
「お嬢様!!!」
「はいはい、落ち着こうね。」
それを謙治は慌てる事なく、一枚のカードを取り出して、受け止める。
「ふん、思った通りだ。中々の腕らしいな。」
「光栄だな、さてその俺が執事になる件だが、別にいいよ。」
「ほう、普通なら嫌がると思っていたのたがな。」
「まあ、俺も正直な話断りたい。だが、これで少しは罪を償えるなら喜んで受け入れるさ。それに……。」
「それに?」
「そこには咲夜がいるんだろ?俺は咲夜が入ればどこにでも行ってやるさ!!」
謙治は咲夜に向かってそう言い放つ。咲夜はそれを聞いた瞬間、顔を真っ赤にした。
「そそ、それは、つつつままりり?」
「ククク、面白い男よ。咲夜をあんな風な顔にしたのは貴様が初めてよ。」
「それって、お父様がお母様にこくは「そんなのあるわけないわ!!」??」
「大体今まで敵だったのよ!?そんなやつにここ告白されてもうう嬉しくないわよ!!!」
そう言い残して咲夜は時を止めて部屋に戻ってしまった。
「……フラれたぜ。」
「いや、咲夜は正直になれていないだけ。告白されたのだって恐らく初めてだろう。」
「なあ、レミリア?運命が見えるらしいが、どんな運命が見えたんだ?」
「それを言ったら面白くない。強いて言うなら、お前と咲夜の運命だな。」
「気長にやっていくかぁ。」
「では、私は失礼します。」
咲はそう言い残して去っていった。
「私も失礼させてもらおう。」
レミリアも何処かに消えていった。
「さて、地べたで寝ますか。夏で本当に助かったな。いや、朝どうしよう?」
「……ないないない!!!絶対にあるわけないわ!!私があんな奴なんかを……。」
咲夜は部屋に戻った後、一人でブンブン顔を横に振りながら考える。
「あいつは敵だったのよ!?そんなやつの事なんか……。」
だが咲夜は謙治の顔を思い出す度に顔を赤くする。
「…………もうなんなのよ。」
「それが一目惚れというやつですよ。」
「咲、私はどうすれば?」
「今ここで無理に決めなくてもいいと思います。よく真剣に考えてからでも遅くはありませんよ。」
「……そうね、でも先ずは寝るわ。」
「そうですね、お休みなさい。」
その様子を磔は遠くから見ていた。
「まあ、完全には嫌われてはいないだろう。咲夜は自分の気持ちに正直になれていないだけだな。」
そう言い磔はお酒を飲む。そして、しばらく考え込み。
「あいつらが帰るのは二日後、その前に思い出を作ってやらないとな。」
「そうそう、思い出が必要だな。」
「うおぉい!!?いきなり現れんなよ!!」
突然、磔の目の前にスキマが現れ未来の聖人がのっそりと顔を出した。
「悪い悪い、お詫びにその計画を手伝ってやるよ。」
「悪いな、で、俺の考えてる計画は、今の季節は夏だろ?」
「そうだな、夏真っ盛りだな。」
「で、暑いだろ?それで涼しみながら思い出を作る方法を考えたんだよ。」
「なるほど、あれか!?」
「そう、あれだ!!というわけで今から取りかかるぞ!!」
磔はそう言いある場所に向かって飛んでいった。




