新たな世界への旅立ち
今回で一区切りです。感動ものにしようと思ったけど全然上手く書けねえ。
聖人の部屋
「それじゃあ10日後に迎えにくるわね、言っておくけど逃げても無駄よ。」
「いや、逃げないから。」
紫なら遠くへ逃げてもどこまでも追ってくるだろうしなぁ。
「悔いのないようにしなさい。もう2度と戻って来られないのだから。」
そう言って紫はスキマの中に入っていった。ここは俺の部屋。帰ってきたのか、この世界に。
「はぁ、出来ればこの世界に居たいけど無理だろうなぁ。」
まあ、この世界にいてもつまらないんだが。幻想郷はとてもワクワク出来る世界だし、女性ばかりという点を除いてな。
「とりあえず寝るか。明日からやることが一杯だな。」
時刻は夜の12時だったので寝ることにした。宴会で皆が騒いでいるのを見たら疲れたからな。
「おやすみ~」
朝起きてからやることがたくさんあった。まず高校に退学届けを出し、クラスメートに退学する理由を言った。幻想郷のことは伏せてだけどな。そう言うと友達は泣き出した。でも早苗には言わないでおくことにした。理由?のちのちわかるさ。そして三日後にパーティーを開くことになった。
それから家の契約を打ち切ったり、パーティーなどに参加したり、友達と遊びに行ったりした。友達家で泊まりをして、朝まではしゃいだりもした。
あいつらに何か買って行こうと思いデパートで飲み物やお菓子、お酒など必要なものを買った。主婦達の目線が痛かったがな。え?なにあいつ、一人でどんだけ買ってるの?的な。
それから荷物の整理や持っていくものなどを鞄に積めたりとあっという間に過ぎていった。
そして出発の日の朝。
早起きしてあいつのところへと向かった。もちろん早苗のところである。
徒歩で10分歩いたところに神社があった。神社の名前は守矢神社って言うらしい。
境内に入ると早苗は掃除をしていた。
「朝から精が出るな。その姿を見るのも今日で最後か。」
神社の本殿に近付くと、掃除していた早苗がこっちを向いた。
「あら、朝早くから珍しいですね。何か用事でも?」
掃除の手を止めて話しかけてきた。
「今日は、早苗にお別れを言いにきた。」
「そう、ですか。」
早苗はこの言葉を聞いた後、少し悲しそうな顔をしていた。まあいきなりそんなこと言えばそういう顔になるよな。
「多分しばらくは会えないと思う。」
「……………。」
なぜ会えないのかを説明した。早苗は終始黙ったままだった。
「今までありがとう。」
「……………。」
「あの二人によろしくな。」
一応だが、守矢の神様二人とは面識がある。数回程度だけどな。
「わかりました、気を付けて。」
「じゃあまたな。」
そう言い神社を後にしようとしたが早苗に手を掴まれた。止めないでくれ、未練が残っちまうから。
「どうしてまたな、なんですか?」
早苗は不思議そうに言った。普通はじゃあなとかだからな。
「また会えるかも知れないからな。」
その方が面白いじゃないか。人生何があるかわからないしな。今度こそ神社を後にしようとしたが早苗は俺の手を離してくれなかった。
「………かないで。」
「??」
早苗が何かを言いたそうだったので、掴まれた手を振りほどくのを止める。
「……行かないでよ。」
早苗は泣いていた。今まで泣いたことがなかった早苗が泣いた。当然か、いきなり友達がもう会えないかもしれないって言ったんだからな。はいそうですか、って受け入れられるわけないか。
「別に一生会えないってわけじゃないだろ?」
そう言い早苗の頭を撫でる。ひょんなことでまた会えるかもしれないし。
「それでもいかないでよ!!」
早苗はさっきよりも泣いていた。早苗とは長年の付き合いだしな。
「大丈夫だ。また会える。」
とにかく早苗を慰めようと頭を撫でる。こんなことしか出来ないなんて情けねえ。
「本当に?」
「ああ、本当だ。」
「嘘つかないでよ!!」
別に嘘はついてるつもりじゃない。さっきも言ったが何が起こるかわからないからな。
「じゃあそろそろ行かなくちゃ。」
「……………。」
早苗は涙を流したまま、俺の手を離してくれた。ごめんな早苗。
「元気でな。」
「はい、聖人も、お元気で。」
そう言った後、泣いている早苗の頭を撫でた後、その場を後にした。泣き叫ぶ早苗の声から背けながら。
家に着いたのは午前9時頃。
「俺だって辛いよ。」
気が付けば涙が出てきた。今は家にいるからよかったが、神社で俺まで泣いてたらやばかったな。
「泣いてる場合じゃない、泣いてたら親父に怒られる。」
そう自分に言い聞かして早苗宛に手紙を書いた。親父と言っても義理の親父だけどな。
「手紙は、まあこんなもんか。」
「そろそろいいかしら聖人?」
書き終わったあと、紫が目玉空間の中から現れた。
「準備はいい?」
「ああ。あっ、一つ聞きたいことがあるんだが?」
重大な事を聞き忘れてたよ、下手したら死ぬかもしれないからな。危ない危ない。
「何かしら?」
「こっちの世界のお金はあっちの幻想郷で使えるのか?何か換金とかしないといけないのか?」
「そのまま使えるわよ。」
「ほっ、使えなかったら1文無しだったな。」
財布の中は、よし、ちゃんとはいっているな。
「そろそろいいかしら。」
「悪い、待たせたな。」
紫は先にスキマに入った。それを確認したあと和室に向かう、あそこは俺以外の人には見せなくないからだ。和室に入り、襖を開けて掛軸の近くに行く。そこにあったのは親父が残した刀だった。
その刀の名前は『真桜剣』と言って親父が長年使っていた刀だ。
「親父、借りてくよ。」
そう言い親父の写真に向かって礼をする。黙って持っていったら天誅されそうだし。
「元気でやれよ皆。」
俺は着替えが入った鞄二つと、お菓子や飲み物が入った段ボール、刀と医療道具と調理器具が入った鞄をもってスキマに入った。
早苗宛の手紙は家に残して。
早苗は聖人が離れた後、自分の部屋に籠っていた。
「うぅ、うわあぁぁぁぁぁん!!!」
今まで出したことのない声を出して泣いた。泣き叫んだ。
「どうしてなの、何でいなくなるの!?」
このまま聖人とずっと一緒にいたかった。他愛もない話をずっとしていたかった。でもそれはもう叶わない。
「えぐっ、ひっく、私だってそっちに行きたいよ。私も連れて行ってよ聖人。」
あの笑顔はもう見れない。あの優しさはもう感じることができない。涙は止まらなかった。
本当は抱き付きたかった。でも出来なかった。
「どうして離れるの?私の何がいけなかったのよ。答えてよぉ聖人。」
早苗が泣いていると誰かが部屋に入ってきた。
「どうしたんだい早苗?」
早苗の保護者兼守矢神社の神様でもある八坂神奈子が早苗の部屋に入った。
「すみません神奈子様、今は放っておいて下さい。」
「何があった早苗?」
神奈子が早苗が泣く理由を尋ねようとするが、早苗は弱々しく首を横に振るだけだった。
「言えません。すみません。」
「早苗がそこまで泣くって事は、もしかして聖人のことかい?」
「どうして知ってるんですか!?」
早苗がガバッと顔を上げて神奈子に尋ねるが、神奈子はやれやれと首をくすめる。
「あれだけ早苗が朝から大声で泣いてたらわかるのさ。早苗、聖人にどうしても会いたいかい?」
「会いたいです!!」
早苗の返答を聞き、神奈子はニコッと微笑む。
「よっしゃ、じゃあ準備するよ!!」
「準備って、何の準備をするのですか?」
「それは秘密、後で教えるから早苗も準備を手伝ってくれるかい?」
「わかりました!!」




