囚われた博麗の巫女
サブタイトルは、霊夢が誰かに捕まったという意味ではありませんので。
寺子屋
「疲れはとれたか?」
「はい!体調はバッチリです!」
葉はジャンプをしながら言った。
「そうか、きっと霊夢も戻ってきてるはずだ。宿に行けば3人と合流出来ると思うぞ。」
「お世話になりました慧音さん!」
「私も久々の来客でとても嬉しかったよ。また寄ってくれ。」
「はい!それじゃ行ってきます!」
「行ってらっしゃい、気を付けてな。」
葉は元気よく、寺子屋の玄関を開けて魔理沙達がいる宿に向かった。
「おはようございます。」
「おっす。」
「おはよう。」
居たのは魔理沙と咲夜だけで霊夢の姿はなかった
「あれ?霊夢さんは?」
「まだ戻ってないぜ。」
「……一晩中様子見っておかしくないですか?」
「まあそうだけど……。」
「まあ心配すんなって。霊夢なら大丈夫だ。」
二人はさほど心配していないようだった。
「でも……。」
「大丈夫だって。」
魔理沙は葉にそう言うが。
「探しに、行きませんか?そ、その守られてばっかりの私が言うのは図々しいとは思うんですけど。霊夢さんを、探したいです。だって、強いなら尚更一晩中も様子見っておかしくないですか。」
葉は真剣な表情で魔理沙と咲夜に訴える。
「それに、ものぐさな性格みたいですし、好き好んで一晩中も……。」
「じゃあ探しに行くわよ。」
そう言い咲夜はベットから立ち上がる。
「い、いいんですか!?」
「えー、面倒くさいぜ……。」
魔理沙は頭を掻きながら言う。
「じゃあ魔理沙は留守番ね。」
「わ、わかったよ。私だけ除け者にしないでおくれよ……。」
「……ありがとうございます。」
葉は二人に深々と礼をする。
「霊夢も結構モテるのね。」
「これは良太、頑張らないととられるぞー。」
「じゃ、行きましょう。迷いの竹林は人里からすぐ見える竹林よ。」
迷いの竹林
「……不穏な空気ね。」
「あぁ、なーんかやな予感がする。」
竹林には邪気な空気が漂っていた。
「(全然わからないや。えっと……。)」
葉は足元の雑草にどんな空気が漂っているのか聞くことにした。
「これはひょっとしてひょっとするかもな。」
「あの霊夢が易々と負けるとは思えないけど。」
「全く、面白いことばっかり起こってくれるもんだぜ。」
魔理沙にしてはこれくらいの事は面白いの部類に入るらしい。
「葉、気を付けて。絶対にはぐれないようにするのよ。」
「はい、はい。」
葉は咲夜の言葉は耳に入ってなかった。
「随分と気楽な奴だ。じゃ、行くぜ!」
魔理沙と咲夜は先に進んだが、葉はそれに気付かないで雑草と話をしていた。
「へぇ、もうここに住んで50年。その割に大きくならないんですね。あ、私が言っちゃいけませんね。身長140あるかないかですから。」
相当小さいようだ。
「で、やっぱり今のここはおかしいですか?」
雑草はなぜおかしくなったのか説明する。
「そうですか、ここ最近……。え?仲間がいなくなってる?そんなことは。」
そう言い葉は前を見たが、既に魔理沙と咲夜の姿はなかった。
「なぜだろう、いつもわたしは、おいてけぼり」
葉、字が余ってるぞ。それ川柳になってない。
「なんだがこういう扱いに慣れてしまった気がします。」
雑草は葉をMなのかと問いただす。
「ち、違いますよ!!前もこういう事があったからですよ!!」
雑草は冗談だと言う。
「冗談なら言わないでくださいよ~。で、今から急げば間に合いますか?」
雑草は間に合わなくもないと言うが、お前一人じゃ危険だとも言う。
「危険?やっぱりそうですよね。でも行かないと魔理沙さんと咲夜さんに悪いですし。」
雑草はやれやれと言いながら困った時に言う言葉を葉に伝える。
「え?困った時に言う言葉があるんですか?わかりました!ありがとうございます!」
雑草は気を付けてと言う。
「よっし!頑張って追い付くぞ!」
「とは言ったけど、なんか嫌だなぁ。」
葉は進みながら感想を呟く。と、前方にやたらでかい妖怪が佇んでいた。
「えっと……。話を聞いてくれるタイプの妖怪さんでしょうか?」
だが妖怪は雄叫びをあげながら葉に近付く。
「ダメ、でしょうか?でも、いつまでも霊夢さんにおんぶや抱っこでいいはずがない。」
そう言い葉は勇猛果敢に妖怪に攻撃しまが、避けられて金棒でカウンターをくらってしまった。
「がっ!!」
葉は後ろに吹き飛ばされ、地面を転がった。
「……むちゃくちゃ痛い。」
そりゃそうだ、腹に思いっきり金棒で殴られたのだから。
「何でこんなに私って弱いのだろうか……。」
そう嘆いてる間にも、妖怪は葉にとどめを刺そうと近付いてくる。
「本当は、無関係の人は巻き込みたくはなかったけど……。ごめんなさい、助けを呼びます!!」
葉は思いっきり空気を吸って。
「助けてーーー!!!フジヤマヴォルケイノーーーー!!!」
いよーーっぽん!!
「その効果音はいらないわよ!!」
突然、葉の前に炎を纏った女性が現れた。
「ほんとにきた!?」
「私にやられたいのは……あなた?」
妹紅は掌に炎を出しながら葉に聞く。
「え、いや私じゃ……。」
「っていうか軽く殴っても構わないわよね?てか殴ってもいい?」
妹紅は眉間にしわをよせながら拳を握り締める。
「え、いや、なんで?」
「何?人のこと辱めて何?」
「え?だって雑草さんや木さんがそう呼べば助けてくれるって。」
「木?……まあいいわ。」
妹紅は雄叫びをあげてる妖怪の方を向き。
「とりあえず今はこの暴れん坊を……。」
「あ、わ、私も。」
葉はヨロヨロとしながら妹紅の隣に行く。
「動かない方がいいわよ。既に骨の2、3本は折れてると思うし、口から血を出してるし。」
「へ?もげばっ!!」
葉は変な奇声をあげて倒れる。
「すごく……痛い……デス。」
「……なんなのかしらこの子。」
妹紅は苦笑いをし、妖怪の方を改めて見る。
「異変が起こる前から暴れてたみたいだけど、やっと見つけたわ!!慧音の教え子も襲ったりしたでしょ、悪いけど消えてもらうわ。」
妖怪は雄叫びをあげて金棒で妹紅に殴りかかってきたが、妹紅はそれを避けて。
「1発で燃やしてあげるわ!!不死 火の鳥 鳳凰天翔!!」
妹紅は全身に炎を纏い、妖怪に向けて炎を不死鳥の形にして放つ。妖怪は避けられず直撃した。
「やった?」
けど、妖怪はまだ消滅はしてなかった。
「ったく、しぶといわね。それじゃ!!」
妹紅は炎の温度をあげて妖怪に火の柱を放つ。
「これで、消え去れ!!」
妖怪は炎に焼かれて灰になって消えた。
「大丈夫だった?」
「あ、はい。」
葉は普通に起き上がり、妹紅をずっと見つめていた
「体は大丈夫なの?普通に起き上がってるけど」
「…………。」
「おーい?」
「はっ、えっと、大丈夫です。」
「……私が怖い?」
妹紅は葉が自分の事を怖がってると思っていた。
「へ?」
「なんでもない。(いまいち考えが掴みにくいわね)」
「あ、あの、えっと。」
葉がそう言った時。
「おーーい。」
魔理沙と咲夜がこっちに向かってきた。
「お、やっぱり妹紅だっか。派手な音がしたからすぐわかったぜ。」
「久し振りね魔理沙。」
「葉もここにいたのね。」
「す、すみません……。」
「なんだ、魔理沙達の知り合い?」
妹紅は葉を指差しながら尋ねる。
「いや、全然知らない。」
「ひどいですよ!!私の事をもう忘れたんですか!?」
「冗談だ、知り合いだぜ。」
「そ、怯えてるみたいだし、後は頼んだわ。」
妹紅はそう言い去っていった。
「大丈夫?」
「はい、なんとか……。」
「随分ひどい目にあったように見えるけど?」
今の葉は顔に擦り傷が数ヶ所あり、服も所々破けていて、太股から血を流していた。
「大丈夫です。栄養のある土があるところならいくらでも治りますから!」
「……服は直らんだろ。」
「き、気合いで!」
「無理よ。」
「わ、私自身タフなので気にしてないです。」
「で、話題を変えるけど、妹紅に助けてもらったのか?」
魔理沙は帽子から水の入った瓶を取り出して、飲みながら聞く。
「はい、かっこいい人ですね。あ、女性に言うことじゃないですよね。」
「でもお前、妹紅に怯えてたんだろ?あ、咲夜も水いるか?」
「魔理沙の帽子に入ってる水なんて飲みたくないわよ。」
咲夜は水の入った瓶を魔理沙に戻した。葉は不思議そうな顔をして。
「え?全然ですけど……。」
「だってあいつが言ってたぜ?まあ不老不死は普通じゃないからな。うん、この水上手いな。」
「へぇ、不老不死なんですか。幻想郷じゃ珍しいことなんですか?」
「確かに、そんなに大げさにすることでもないけど」
咲夜は困った表情で答える。
「葉も慣れてきたな。じゃあ何で妹紅は勘違いをしたんだ?」
「さぁ?ただ、あんなに炎を出してどうして服が燃えないんだろうって思ってたんですけど。」
葉がそう言った時、魔理沙は飲んでいた水を豪快に吹いた。
「ゲホッ!!ゴホッ!!ふ、不老不死には驚かなくてそっちには疑問を持つのか。」
「相変わらずわからないわね。葉は。あと魔理沙、鼻水垂れてるわよ。」
「皆さんは疑問に思わないんですか?普通あんだけ燃えてたら服が全焼して裸になっちゃいますよ?」
「ま、今度会ったら聞いてみればいいさ。近々会いそうな気がする。」
魔理沙はそうどや顔で言ったが、鼻水が垂れてるのでいまいち決まっていなかった。
「今度は絶対にはぐれないようにね。」
「は、はい!(もしかして、服の中にさらに服を着てるのかな?お兄ちゃんも燃えてなかったし。)」
「葉、また置いてくぞ?」
「す、すみません!!」
しばらく道なりに進むと、開けたところに出た。
「ここって……。」
「ああ、見ての通り。」
そこには上下左右に分かれ道があった。
「分かれ道ですね。」
「葉を捜すか、右か左か真っ直ぐかで悩んでたところだったんだ。」
「私捜すの迷ってたんですね。自分で迷子になったからなんとも言えないんですけど……。」
「まぁ、迷子になる程度の能力は置いといて、どの道に行ったらいいと思う?」
「変な能力付けないでください!!」
葉はそう言い咲夜に詰め寄るが、咲夜は葉の頭を押さえる。
「むぎぎぎぎ、ち、近付けない……。」
「葉、そういうのは後にして、植物に聞いてくれないか?」
「う~。じゃあ、えっと。この足元の雑草さんに聞いてみます。」
少女聞き取り中……。
「で、なんだって?」
「巫女さんは東に行ったらしいです。」
「というと、あっちね。」
「道中の植木さんに聞けば、道を教えてくれるそうです。」
「さっすが葉だぜ。」
「私は聞いてるだけですよ。」
そう言ってるが、葉は嬉しそうな表情をする。
「あら。今この状況においては、葉の能力はこの上なく有効よ?」
「そうそう!!」
「さ、行きましょう。」
「葉、次はどこに行ったらいいんだ?」
「えっと、次は北に行ったらしいです。」
「葉、北ってどっちだ?」
「下ですよ下!」
葉は自信のある顔でそう答える。
「馬鹿……。上よ上。」
咲夜は呆れた顔で言う。
「上下左右で言うな。あと葉、お前マジで寺子屋に通え。」
「次は東ですね。」
「葉、最初に言ったから間違えないとは思うが、東ってどっちだ?」
「何度も間違えませんよ!左です!!」
「…………。」
「……右よ。」
魔理沙は哀れみの目で葉を見つめ、咲夜は少し不機嫌な顔で本当の方向を教える。
「…………。」
葉は泣き出しそうな顔で魔理沙を見詰める。
「いや、まぁいいって。……試した私が悪かった」
「致命的ね。1回ナイフを頭に刺した方がいいんじゃないかしら?」
「あぁ、お二人の視線が憐れみに満ちていく……」
「ここは北ですよ魔理沙さん!!」
葉は視線で私に聞いてくださいっていうオーラを出す
「聞けっていう視線だな。」
「聞いてあげたら?」
「そうだな。1回くらい当ててもらわないとな。葉、北ってどっちだ?」
「はい!左です!!」
葉は自信満々の笑みで答える。
「正解だ!だから上に行こうか!!」
「すごいわね葉!!正解だって!」
「はい!……アレ?」
北に進むと、霊夢が鈴仙と向かい合っていた。
「お、あれは!」
「霊夢!?」
「魔理沙達なの!?」
霊夢は鈴仙の方を見ながら聞く。
「……随分やられたな霊夢。」
霊夢の姿は袖が無くなっており、ノースリーブ状態になっており、スカートも所々破けていた。
「ウドンゲに遅れをとるあなたではないでしょ。」
「…………。」
鈴仙は咲夜の言葉を聞いた瞬間、咲夜の懐に潜り込み弾幕を撃った。
「!!!」
だが咲夜はとっさにナイフを取りだし、弾幕を後ろにそらす。
「悪かったよ鈴仙。でもいきなり襲い掛かってくるのは……。」
けど鈴仙には聞こえてないみたいだった。
「聞こえてないだろうな。咲夜を襲ったのはその名前で呼んだからじゃなさそうだ。」
「今のこいつはヤバイわよ。本気で殺しにかかってくる。」
「そういう殺伐としたのはごめんだぜ。」
「全く同意ね。でも来るからにはやるしかないでしょ。」
霊夢は傷を治療しながら言う。
「それに……。」
魔理沙がそう言うのと同時に鈴仙は目から平衡感覚を狂わす波長を流す。
「来たわね……。」
「本当に気持ち悪いわね。」
「えっ?え?」
「慣れだ慣れ。」
「まあいいわ。葉、あんたは無理しないように。」
霊夢は顔をしかめながら言うが、葉は平然な顔をしていた。
「え?……いや、頑張ります。」
「あんたこれ初めてでしょ。これで無理してまた戻されたりしたら……。」
「いや、あの、何がですか?」
「何ってお前?なんともないのか?」
「なんともないって、何がです?」
葉は訳が分からないって顔をしながら聞く。
「こう、ぐらぐらって揺れたりしないの?」
「揺られる?地震でも起こしているんですか?」
「本当に何もないみたいね。」
「…………。」
鈴仙は自分の能力が葉に効いてないとわかったみたいで葉だけを見詰める。
「な、なんですか?そんなにじっと見つめないでください。」
「よくわからないが、葉にも全く効いてないみたいだな。」
「ま、それならそれでいいわ。さっさとその兎の化けの皮を剥ぐわよ!!」
霊夢はそう言い御札を鈴仙に投げ付ける。だが平衡感覚を狂わされているので全然当たっていなかった
「ちぃ、面倒ね。」
「これなら当たるぜ!恋符 ノンディレクショナルレーザー!!」
魔理沙は狙いをつけるのは無理だとわかってたので、全方位にレーザーを放った。
「ッ!!!」
鈴仙は多少被弾したが、そこまで大きなダメージを与えられなかったようだ。
「精度が悪いぜ。」
「本当に厄介ね。」
鈴仙は弾丸の弾幕を大量に放ってくる。
「普段のウドンゲよりも威力が高いから気を付けて!!」
「先言ってくれ!!」
霊夢は忠告したが、一足遅く魔理沙が被弾した後だった。
「いてて、当たりところが悪かった……。」
どうやら左肩に当たったらしく、魔理沙は左肩を押さえて踞る。
「…………。」
鈴仙はチャンスと思ったのか、魔理沙のいる所に弾幕を放つ。
「ヤバッ!!」
魔理沙はとっさに避けようとしたが、左肩が痛み、反応が遅れてしまったが。
「させませんよ!!」
葉が魔理沙に当たる弾幕だけわずかにそらした。
「すまんな葉。」
「いえいえ、私はこれくらいしか出来ませんし。あ、治してあげますよ。葉符 深緑の温もり」
葉はスペルカードを使って魔理沙の左肩を治す。
「サンキューな。」
そう言い霊夢と咲夜の所に行く。
「悪い、遅れたぜ。」
「やっと来たのね。さあ、けりをつけるわよ。」
「勝機はあるのか?」
「どうやらウドンゲはただ弾幕を放ってくるだけなの。スペルカードを使ってこないのよ。」
咲夜はナイフを投げながら説明する。
「そうなのか!!」
「だから一気に決めるわよ!!」
「まず私が先に行くわ。奇術 ミスディレクション!!」
咲夜は時を止めて鈴仙の所に行き、ナイフを使って切り刻む。鈴仙はやみくもに弾幕を放ち、咲夜に当てようとするが、時を止めれるので容易に避けていく。
「次は私だな。恋符 ノンディレクショナルレーザー!!」
次に魔理沙は全方位のレーザーを放ち、鈴仙の動きをさらに制限する。
「終わりよ!!夢符 封魔陣!!」
青と赤の弾幕がクロスしながら鈴仙に襲い掛かる。鈴仙は魔理沙と咲夜のスペルによって動きを制限されていたので避けられず直撃した。
「終わったかしら?」
鈴仙はピタリと動かなくなった。
「はぁ、全く、手間かけちゃってもう……。」
そう言い霊夢がお祓い棒をしまった時。
「ッ!!!」
鈴仙が最後の抵抗といわんばかりに大量の弾幕を霊夢に向けて放った。
「「霊夢!!」」
魔理沙も咲夜も安堵していた時、急に鈴仙が霊夢の至近距離で弾幕を放ってきたので、対応出来なかった。
「霊夢さん!!」
葉は間に合わないと思いながらも霊夢に向かって走り出し、助けようとする。
「キャッ!!」
霊夢はもう体はボロボロだったので体が言うことを効かず、動けなかったので、腕を前に出すことしか出来なかった。
「(このままじゃ霊夢さんに当たってしまう!!)」
もう駄目だと皆が思った時!!
「銃符 カットオール!!」
突然霊夢の上空から銃弾が放たれて、霊夢を守るかのように弾幕の壁が出来た。
「大丈夫ですか!?」
銃弾を放った人物が霊夢の前に降ってくる。
「りょ、良太!!」
「…………。」
バタッ
鈴仙は最後の抵抗も防がれたので、力が抜けたように倒れていった。
「霊夢さん!!大丈夫でしたか!?」
「ったく良太、遅刻よ。」
「すみません、俺一人で異変の調査に向かっていたので。霊夢さんに言いたい事があって捜していたところこの場面に遭遇したものですから。」
良太は申し訳なさそうに頭をかきながら説明する
「でもちょっとしか見ませんでしたが、鈴仙さんの様子がおかしかったですよね?」
「確かにいつも違う感じがしたな。まあ、そんなにやりあってる仲じゃないけど。」
「今回の異変はこんなところまで深刻なのね。」
「全くだわ、はぁ……疲れ……。」
霊夢はそう言い後ろにいた葉に向かって倒れた。
「っとと……。大丈夫ですか霊夢さん!?」
葉は足をプルプルさせながら、一生懸命霊夢を支えていた。
「流石にちょっと疲れたかもしれないわね……。」
「…………。」
霊夢は葉に支えられて、まばたきをした時、急に睡魔が襲ってきた。
「あれ……、なんだか急に眠く……。」
「疲れたんですよ。鈴仙さんと一緒に宿に運びますから。」
「いや、でも、なんか、ああ、でも……。」
「その妖怪の言う通りにした方がいいですよ。」
良太はそう言い銃をしまった。
「あ、あなたは?」
「俺か?俺は泊谷 良太。よろしく。」
「良太さんですね。私は瀬笈葉って言います!あれ?じゃあ良太さんが霊夢さんの恋人の相手?」
「そうなるかな。」
「じゃ、じゃあ良太さんが運んだ方が!!」
葉は霊夢を良太の所に持っていこうとするが。
「いや、葉さんが運んでください。霊夢さんが気持ち良さそうに寝ていますから。」
「で、でも……。」
「それに、さっきまで不安定だった霊夢さんの気配が葉さんに支えられた瞬間、落ち着いたから。ここは葉さんが運んでください。」
「わ、わかりました!!」
「じゃあ私はウドンゲを運ぶぜ。」
魔理沙は鈴仙を脇に抱えて歩き出す。
「魔理沙、その運びかた重くないの?」
「魔法で体を強化してるから大丈夫だぜ!葉、行くぞ。」
「は、はい……わ、わかりました!」
葉はフラフラしながら霊夢の体を支えながら歩き出した。
「(無事に着けるかな?)」
霊夢が葉に支えられて感じたもの。
とても温かく、とても安らかで……。
何かに温かく抱き締められているような……。
不思議と安心できる。そんな、温かい気持ち。
良太に抱き締められているのと同じくらい安心できて、それ以上に温かった。
その後、葉達は人里に戻り、霊夢と鈴仙を宿屋に寝かせた。そして、その深夜。
ザッザッザッザッ……。
葉は一人で人里を散歩していた。
「……。今日は月が綺麗です。疲れているはずなのに、何で寝れないんでしょう?」
葉はその答えを考えながら月を眺めていると。
「夜更かしは健康に良くないわよ。」
葉の隣に霊夢が来た。
「霊夢さん、体はもう大丈夫ですか?」
「ちょっと疲れが出ただけでしょ。」
「そうですか……。よかった。」
葉はほっと胸を撫で下ろした。
「……その、あれよ。」
「……?」
霊夢は恥ずかしそうにそっぽを向きながら。
「……助けてくれてありがと。」
「えっ?助けたのは魔理沙さんや咲夜さんや良太さんですけど?」
「様子を見に行こうと言ったのは、葉なんでしょ?」
「でも、私も妹紅さんって人に助けられましたし。私一人じゃ、何も出来なかったです。」
葉は恥ずかしそうに笑いながら答える。
「……自分を卑下することないわよ。」
「え?」
「もっと近くに来なさい。」
霊夢は手招きしながら言う。
「……葉。」
「はい?」
「……一緒にスペルカードを作ってあげる。」
「え、そんな。私……センスないって。」
「私が教えるんだから大丈夫よ。助けたいなら、いつまでも自分が弱いままじゃいられないでしょ。」
そう言い霊夢は葉に白紙のスペルカードを渡す。
「はい。そうですね。」
「さっさと始めるわよ。」
「は、はい!」
少女達スペカ作成中……。
「葉、あんたって何が好き?」
「へ?そうですね……、腐葉土とか結構好きですけど。」
「じゃあ嫌いなものは?」
「葉っぱを食べる虫ですかね。」
「そうね……。あとは……。」
霊夢は何か言おうと必死に考える。
「急にどうしたんですか?」
「ん?いや、葉の事にちょっと興味が沸いたというか……、魔理沙には絶対に内緒よ?」
霊夢は少し顔を赤らめながら言う。
「は、はぁ?」
「あんまり人の事聞かないからどんな事を聞いたらいいかって思っただけ。」
「良太さんの事もあまり聞いてないんですか?」
「……そうね。良太でさえもそんなに質問とかしたことなかったわね。」
「そうですか、困りましたね。私が何か教えられることなんてないです。」
葉は苦笑いをしながら言う。
「そうなの?」
「慧音さんにも、私には歴史がないって言われちゃって……。」
「え……。」
「どうしました?」
「あ……、いや、何でもないの。続けて。」
霊夢は咳払いをする。
「そうですか、えっと……?」
「(歴史がないってどういうこと?記憶がないってわけじゃないわよね?今こうして会話してるし。葉、あんたはただの妖怪じゃないの?)」
霊夢は一人でそう悩んでいると。
「あっ……。」
「ん?どうしたの?」
「出来ました!出来ましたよ!!」
そう言い葉は霊夢にスペルカードを見せる。
「えっ?もう!?慣れてきたのかしら?」
「かもしれないです!」
葉は喜びのあまり、跳びはねながら。
「やったー!!2枚目のスペルだーー!!」
葉は跳びはねた後、霊夢の周りを無邪気に走り回っていた。その姿を見て霊夢は。
「……。(考えすぎね。葉はやっぱり何かを企むような妖怪には見えない。ただの妖怪じゃなくても、今喜んでる葉はきっと……。)」
「~~~♪」
「ん?どうしたんですか?そんなに上機嫌で?」
散歩していた良太が葉にそう訪ねる。
「良太さん!!2枚目のスペルカードが出来たんですよ!!しかも今出来たんです!」
「すごいじゃないですか!!」
そう言い良太と葉はハイタッチをする。
「さ、もう休むわよ。」
「あ、もうちょっと余韻を……。」
「明日に響くわよ?」
「……わかりました。もう寝ます。」
葉は宿の方に向かう。
「わかればいいのよ。」
「おやすみなさい。」
そう言い葉は部屋に戻った。
「……見てたんでしょ?」
「な、何の話ですかね?」
「私と葉のやり取りを最初から見てたんでしょ?」
「ち、ちがっますよ!!」
「噛んだってことは見てたのね。」
「うっ……。見てました。」
良太は逃げられないと思ったのか、素直に白状した
「私って駄目ね。良太と一緒に居て少しは素直になれたかなって思ってたのに。」
「そんな事ないです。ただ霊夢さんが不器用なだけです。性格はそう簡単には直りません。けど、直そうと思って行動しただけすごいですよ。」
「……あのね良太。良太は葉を見てどう思った?」
良太はしばし考え込み。
「悪い妖怪には見えませんでした。けど、とても優しい心を持っているとは思いましたね。」
「そう、葉に支えられて眠った瞬間、とても温かくて優しい気持ちに包まれたみたいだった。」
「……多分葉さんは何かを持っているんでしょう。人々を温かく包み込む、そんな気配を感じましたから。」
「私もそう思うわ。さあ、もう寝ましょう。」
そう言い霊夢と良太は宿屋に戻った。
磔side
「……上手くやってるみたいだな。」
俺は建物の陰から葉と霊夢のやり取りを見ていた。
「それにしても月が綺麗だな。」
夜空は雲1つない空だった。こういう時に酒を飲みたくなるね。
「で、出てこいよ慧音。」
俺は前を見ながら言う。
「……なぜわかったのかは聞かないでおこう。」
「そうかい。」
「でだ、単刀直入に聞こう。お前は何者だ?」
何者?こいつ、歴史を見たな。
「お前も葉と同じように歴史がない。それにさっきからずっと葉を見ていただろ?」
あー、凡ミスしちまった……。
「答えろ、お前は何者だ?」
「何者ねえ、ただの旅人だよ。」
「しらばっくれるな。本当は私は知っている。」
何を知っているのやら。
「お前、葉の兄だろ?」
慧音には隠す必要もないか。
「そうだ、葉の兄の白谷磔だ。」
「やはりな。ではなぜこそこそと葉を見ている?」
「お前に言う必要はない。」
「詳しく聞きたいところだが、もう夜も遅い。さっさと帰るがいい。でもその前に1つ聞きたい。」
何だ?面倒な事なら無視しよう。
「葉の優しさをどう思う?」
「どう思うか、別にいいんじゃないのか?」
「私はあの優しさは捨てた方がいいと思っている。あの優しさで幻想郷で生きていくのは無理だと思う。」
ふんふん、なるほどねぇ。
「確かにその考えもあるが、俺はそうは思わない」
「何故だ?」
「詳しくは言わねえよ。ただ、強いて言うなら、優しさは弱さじゃない。」
そう言い俺は空間移動で人里から出る。今日はどこに泊まろうかねぇ。




