紅魔館へ
妖怪の山の麓
「やっとここまで着いたわね。」
「ここって何処ですか?」
「妖怪の山って言うところの麓だな。」
「へぇ~そうなんですか。」
そんな雑談をしながら葉達は進むが。
「ここってこんなに霧濃かったか?私の記憶にも霧がかかったのか?」
「んなわけないでしょ!それと記憶にかかるのは霧とは言わないわよ。」
普段ではあり得ないほどの霧の濃さだった。葉はキョロキョロ見回し。
「すごい霧ですねー……。いつもこんな感じなんですか?」
「いや、普段はもうちょっと視界が良かった気がしたんだけど……。」
「だよなー、こりゃ巫女の出番か!?」
「妖怪の仕業って言いたいの?」
「他に何か思い付くのか?」
魔理沙の疑問に霊夢は少し考えて。
「……ふぅ。わかったわよ、一応気を付けながら行けばいいんでしょ。」
「便利屋の苦労、ここに見たりって感じだな。」
「こういうのは良太に任せてたからねぇ。」
「良太も働かされてるなぁ。よくこんな巫女を好きになったもんだぜ。」
ドゴォ
「あー?」
霊夢は魔理沙の言葉に苛ついたのか、魔理沙の足下の地面を踏みつけた。そこには深さ数十センチのクレーターが出来ていた。
「じょ、冗談だって……、さ、行こうぜ。」
魔理沙は霊夢から逃げるようにして、先に進む。
「逃げるな!!待ちなさい!!」
魔理沙を追いかけるようにして霊夢も進む、葉はというと。
「へぇ、そうなんですか。ここに生えて10年が経ったんですね。」
近くの雑草と話をしていた。霊夢と魔理沙が先に行ったのに気付かずに……。
「私なんか、まだ誕生したばかりなのに……、えっ?仲間の人が先に行っちゃった?」
葉は前方を見る。そこには霊夢と魔理沙はいなかった。
「これは、あれですね、あはは……。」
葉はしばらく現実逃避をし。
「霊夢さーーん!!魔理沙さーーん!!どこいったんですかーーー!?」
霧に向かってそう叫ぶが、何も返答はなかった。
「ど、どうしよう……、置いていかれちゃった。」
葉はさっき話をしていた雑草に。
「ど、どうしましょう!!……今から急いで追いかければ間に合いますか?」
葉は他に生えていた雑草にも話をして。
「間に合うんですね?はい、じゃ、じゃあ急いで追いかけます。また会いましょう!」
葉は雑草にお礼を言って走り出した。
「とにかく、お二人に追い付かないと……、大丈夫かなぁ……。」
そう言いながら更に濃くなってきた霧の中をビクビクしながら進んでいく。
「うぅ、もう何も見えないよ。」
足元がギリギリ見えるか見えないかまで、霧は濃くなっていった。
「霊夢さーーん!!魔理沙さーーん!!」
再び叫ぶが、やはり何も返答はなかった。
「うぅ、……急がないと。」
幸い道幅は狭いみたいなので、葉は前だけみて進んでいくが、しばらく進んでいくと。
「痛!!」
何かにぶつかったようだ。その何かとは……。
「いてて、何かにぶつかった?……ってひゃあ!?」
どうやら妖怪にぶつかったらしく、妖怪は怒り狂っていた。
「よ、妖怪さん!!ご、ごめんなさい!!許してください!!き、霧で前が見えなかったんです!」
葉は必死に弁解するが、妖怪は葉の言った事は怒り狂っているので、耳に入らず、葉の体に噛みついた
「ぎゃー!ダメダメ私食べたって草の味しかしないし美味しくないよ!!妖怪さんのお腹を壊しちゃうだけだよ!!」
だが、妖怪は葉に噛みつくのを止めなかった。
「私はむしゃむしゃもっさもっさな食感だからお願い私を食べないでー!!」
葉の願いは妖怪には届かず、噛みつくのを止めない。まるで君が瀕死になるまで噛みつくのを止めない!!みたいな感じだった。
「いやぁぁもうダメぇぇぇぇ!!!」
葉は妖怪を振りほどき、来た道を全速力で走って逃げ出す、妖怪も逃がさないと言わんばかりに葉を追いかける。
「はぁ、はぁ、……ふぎゃ!!」
「痛たた、一体何が……?」
葉はまた何かにぶつかってしまったようだ。
「挟み撃ち……!?もう無理ごめんなさい霊夢さん魔理沙さん、私はここでつままれるみたいです。」
葉はもう諦めムード全快だった。
「諦めんなよ!!……というのは冗談として、生憎私は妖怪を食べたりしないわよ……。」
「……へ?」
そこには完璧で洒落なメイド長が立っていた。
「こんな視界が悪いのに、どうして走るの?危ないでしょう。」
「え、い、いや、だって、妖怪に食べられちゃうから……。」
「……妖怪って?」
咲夜は葉の後ろにいる妖怪に指を指し。
「それかしら?」
「うぅ、万事休す……こうなったら私の命に代えても……!!」
葉は咲夜を庇うようにして立ち。
「ここは私が押さえます!!さぁだから早く逃げべでくじゃ……。」
「………………。」
「…………噛んだ。」
葉の行動に咲夜は呆れながら。
「私は下級妖怪に守られるほど、弱くはないつもりなんだけど……。」
「……?」
突然咲夜の雰囲気が変わりだしたが、葉は何が起きたのかわからないようだった。
「悪いけど、いつものように対応しているわけにはいかないの。」
咲夜は両手の人差し指と中指と薬指の間でナイフを持ちながら。
「そこをどいてもらうわ!!!」
そう言い咲夜は妖怪の前に立つ。葉も咲夜の隣に立つ。
「……手伝ってくれるの?」
「あ、だ、ダメですか?」
「…………(逃げてたのに、まあいいわ。)ありがとう、無理はしないで。」
「はい!!(優しくて親切な人だなぁ……。)」
そうやり取りしている間に妖怪達が迫ってくる。咲夜は慌てずに妖怪の頭目掛けてナイフを投げる
「(一瞬見ただけで狙ったところに投げれるなんて凄いなぁ……。)」
次々と咲夜は妖怪にナイフを投げた。葉は咲夜の倒しそこねた妖怪に扇子を使って攻撃する。
「お、終わったかな……。」
葉は扇子をしまい、咲夜のところに行こうとするが
「!!危ない!」
「へっ?」
突然妖怪が起き上がり葉に噛みつこうとしたが、その前に咲夜がナイフを投げて阻止した。
「油断しないの!!ちゃんと確認してから武器とかしまうこと、いい!?」
「ご、ごめんなさい……。」
「もう……。」
そう言い咲夜はナイフをしまった。
「お強いんですね!!」
「メイドだから。」
咲夜はしれっとした表情で答える。
「(え、そうなの?)」
葉は半信半疑だった。
「さて、紅魔館に戻らないと……。」
「紅魔館の人なんですか!?」
「えぇ、それが?」
「えっとですね、私も紅魔館に向かってる途中なんですよ。」
葉はそう咲夜に言う。咲夜は何を考えたのか知らないが、呆れた表情で。
「……あなたじゃ、美鈴ですら突破出来ないと思うけど。」
「美鈴?」
葉は何を言ってるんだこの人は?的な目で咲夜を見つめる。
「あー、いや、確か美鈴も寝込んでたかしら……」
「???」
「とにかく、今、紅魔館はとても招かれざる客を接待している余裕はないの。また今度にしてくれないかしら?」
「で、でも、霊夢さんや魔理沙さんも一緒ですし」
「なんですって!!?」
咲夜は飛び掛かるようにして葉に詰め寄る。
「ひゃ!?」
「あ、あの二人が来るとろくなことにならないと言うのに……。」
咲夜はしばらく頭を抱えていたが、何かを決心したようで。
「こうしてはいられないわ!!」
咲夜は急いで懐中時計を取りだし。
「道中気を付けて!それじゃ!また!」
「え、あの、ありがとうございました。」
「どういたしまして!!」
そう言い咲夜は消えるようにして去った。
「……消えた?幻想郷はすごい人達ばっかりなんだなぁ。」
葉は少しの間、感傷に浸っていたが。
「っと、私も早く二人に追い付かないと!!」
そう言い葉は走り出す。
「はい、終了。」
「二人でかかるのは反則だったかもな。」
「いーのよ。異変が解決出来れば。」
霊夢と魔理沙はそこら辺にいた妖怪を倒し終わっていた。
「葉ー、もう出てきていいぜ。」
魔理沙は後ろを向いてそう言うが、そこに葉の姿はなかった。
「……あれ?」
「あれ?じゃないわよ!全く葉の気配をかんじないわよ!?」
「ま、まさか霊夢……。」
「な、何よ?」
「あまりに貧困極まったからって葉を食うことはないだろ……?」
「ふん!!」
ドグシャ
霊夢は魔理沙の言った事に冗談だとしても苛ついたのだろう。魔理沙を思いっきり殴り飛ばす、が、魔理沙は腕をクロスさせて防御する。
「痛てて……冗談だって。」
変な音が鳴ったにも関わらず魔理沙は腕を伸ばしながら言う。
「あんたが言うと冗談に聞こえないのよ。にしてもまずいわねぇ、置いてきたのかしら?」
「お!なんだ、お前が心配するって珍しいな。」
「私をなんだと思ってるの?」
「聞きたいか?ならば聞かせてしんぜ……。」
「言ったら覚悟することね。」
霊夢は魔理沙を脅すが、魔理沙は気にしてないようで
「ぐーたらしていて、他人にあまり興味がなくて、お金に目がなく、良太の事になると、顔を真っ赤にして聞いてくる脇巫……おわっ!!」
「死ぬ準備は出来たかしら?」
魔理沙が最後まで言う前に、霊夢は魔理沙の周りに結界を張り、スペルカードを持っていた。
「悪かったから!!謝るから!!それだけはやめてくれ!!」
「ったく、二度目はないわよ。」
霊夢は魔理沙の周りの結界を解除した。
「あんたはそのひねくれた口をなんとかしないといけないようね。」
「とても神に仕えてるとは思えない発言だぜ。今更だけどな。」
魔理沙がそこまで言うと少しずつ霧が晴れ始める
「お、そろそろ霧が晴れるか?」
「そしたら探索ね、どっかの妖怪に食われてなきゃいいんだけど。」
「あいつ、そこらの下級並みだもんな。」
など、これからの事について話していると、完全に霧が晴れて、太陽が見えた。
「おぉ、晴れた晴れた、おてんと様が拝めるぜ。」
「さて……、ん?」
霊夢が何かの気配に気づき、後ろを向く。魔理沙も同じように向く。向いた方向には。
「や、やっと……お、追い付きました。」
へろへろになりながらも歩いていた葉の姿があった
「よぉ!」
「どうしてはぐれたの?」
「ちょ、ちょっと雑草さんとお話してたら……」
葉は苦笑いしながら説明する。
「あんた……。」
霊夢は溜め息をつきながら呆れた表情をした。
「よく無事だったな!!襲われたりしなかったのか?」
「おもいっきりむしゃむしゃ食べられそうになっちゃいましたよ!!でも紅魔館の親切なメイドさんが助けてくれて……。」
「「???」」
葉の言うことを聞いていた二人だったが。
「紅魔館に親切なメイドなんて居たっけ?」
「いるわけないぜ。人の顔を見ればナイフを投げつけてくるメイドはいるけど。」
「あ、あれ?とっても親切なメイドさんだったんですけど……?」
「見間違いじゃないの?名前は?」
霊夢は葉にそう聞くが。
「聞いてません。お二人の名前をだしたら血相を変えて行ってしまって。」
「おいおい、私達が行くからって言ったら歓迎しろって言ってるようなもんだぜ。」
「有名人は辛いよ、って感じね。」
「へぇ!じゃあ、あのメイドさんはお二人の歓迎の準備をしなきゃって帰ったんですか。道理で急いでたわけですね!」
どうやら葉は霊夢達が言ったことを変に理解してしまったようだ。
「そうだな、派手な歓迎があるかもなー……。」
「ま、今は何か揉めてるわけでもないし。そんな派手には……。」
霊夢は魔理沙の方を向く。
「(そういえば、魔理沙が紅魔館から本を盗んできたばかりなのよね。)」
霊夢は頭をかきながら。
「葉、いざとなったら魔理沙を盾にしていいから」
「いい加減私以外のヤツが原因になってほしいもんだぜ!!」
「じゃあ行きましょう!何故か霧も晴れましたし」
葉はそう笑顔で言う。
「(人の苦労も知らずに……。)」
「(でも、あーいう笑顔は悪くないな。)」
「(笑顔じゃ、腹は膨れないってね。)」
「(素直じゃないなー。)さ、行くぜ!」
「はい!」
そう言い葉達は進む。
「なんだ、通せんぼか?」
しばらく進んでいき、霧の湖にでる直前の道に妖怪が通せんぼしていた。
「命は大事にしておいた方がいいと思うわよ。」
「霊夢さん……やる気満々ですね。」
霊夢が首を鳴らしながら相手を挑発する姿を見た葉は少しひいていた。
「こういう通せんぼの度に蹴散らして押し通ってきた、その名も博麗霊夢!なんちゃって。」
「その上、物を盗む。霧雨魔理沙ってね。ま、なんにせよ。」
「ここを通らないと紅魔館に行けないからな。蹴散らすぜ!」
「(魔理沙さんもなんか嬉しそう……。もしかして、幻想郷ってそんな人ばかり!?)」
葉は心の中でそう思っていた。
「そうた!霊夢、アレやってみようぜ!」
「アレ?」
「この前チルノを二人がかりで遊んだ時に、お遊びで使ったアレだよ。」
「え、あんなの実践に向かないわよ。」
霊夢は嫌そうに言う。
「二人がかりで遊んだ?」
「ま、物は試しって言うだろ?行くぜ! 」
「比重は明らかにあんたの方が重いから私は別に構わないけどね。」
「じゃあ行くぜ! 連携符 封陣落魔砲!!」
霊夢が妖怪に結界で攻撃し、怯んだ隙に魔理沙が上空からレーザーで攻撃する。
「決まったな!」
「決まったな!じゃないわよ!!明らかに効率悪いでしょ!?」
ダメージは普通のスペルを使った時と、大して変わらないようだった。
「普通にやるわよ。夢符 封魔陣!!」
「へいへい、わかったよ。恋符 ノンディレクショナルレーザー!!」
結局、いつものスペルを使い、妖怪を倒した。
「いっちょあがりっと。」
「どうした葉?変な顔して?」
さっきの戦闘を後ろで見ていた葉は。
「い、いえ……お二人は強いんだなぁって。」
「たいしていいことないわよー。」
葉が落ち込んでいるのがわかった魔理沙は。
「……あんま気にすんなって。」
「え?」
「今度また色々教えるぜ。葉も頑張れば強くなれるって。」
「えっと……、魔理沙さん?別に弱いことを気にしてるんじゃなくてですね。」
「違うのかよ。」
どうやら違ったみたいだった。
「その……好戦的な人が多いなぁって……。」
「結構皆こんな感じだけど。」
「やっぱりそうですか……。」
「まあ、問題が起こればとりあえずスペルカードで決闘だしなぁ。」
魔理沙が空を見つめながら言う。
「神社を壊されたりしたけどね。」
余程苛ついたのか、未だにあの異変の事について霊夢は根に持っているようだ。
「……よし!今日から私も好戦的になります!」
葉はそう決心するが。
「……いや、葉はやめておいた方がいいと思うわよ絶対。」
「え、えぇ、せっかくの決意が……。」
「だってお前、蹴散らされる側だろ?」
「………………。」
事実なので何も言い返せない葉であった。
「慣れないことはしない方がいい。特に葉みたいな妖怪はね。」
「今度、何かの異変中にお前が出てきても普通に蹴散らしてしまうぜ。」
「……田舎に帰りたい。」
葉は涙目になりながら言う。
「まあ、紅魔館の後に向かうから我慢しなさい」
「さー、サクッと行こうぜ!」




