第三部 現代編
「久し振りにカフェオレ飲んだけど、苦いな。」
どうも聖人……じゃなくて磔だ。理不尽な理由を付けられて外の世界に追い出された。全くあの閻魔今度会ったらぎったんぎったんにしてやる。
「にしても、やっぱり幻想郷とは違うなぁ。」
当然といえば当然か。周りの建物はビルとかだし普通に車とか走ってるし。カフェテリアも本当に久し振りに入ったし。
「どう戻りますかねぇ。」
能力が使えたらぱぱっと戻れたけど、ほぼ使えないからな。強いて雷とか出せるだけ。
「やっぱり閻魔を地獄行きにさせるべきかな?」
出来たら苦労はしないんですけどねー。
「しばらくは戻れそうにないし、適当にブラブラしますかね。」
そう言い俺は席を立ち上がり、会計を済ませて外に出た。
「季節は春だな。ってここは東京か。」
さっき地図を見てきたけど近くに秋葉原とかあったしそして雪がないし。
「どこ行こうかな?」
そう言いながらブラブラ歩く。数年前は建物が破壊されてたり、道がぼこぼこだったからな、数年で元に戻せたもんだ。
「出来ることなら早苗と一緒に来たかったな。」
あいつなら周りを見回しながらはしゃいでるんだろうなあ、……いかんいかん今はそんなこと考えてる場合じゃない。
「向こうには向こうの聖人がいる。」
自分にそう言い聞かせる。もう俺は聖人じゃないのだから。
しばらく歩いていると一軒の本屋を見つけた。
「何か見ていくか。」
もしかしたら何かあるかもしれないし。そう思いながら中に入った。
「何かあるかな……ん?」
俺は通路を歩き、1つの本を手に取った。
「東方projectか、俺はその中の世界にいたんだよな」
その本には霊夢と魔理沙と早苗が写っていた。
「何か変な感覚だよな、外の世界ではこういう本とかゲームで知られている世界にいたなんて。」
俺はその本を戻して店を出た。今は感傷に浸っている場合ではないのだから。
「そういえば洩矢神社はどうなったんだろう。」
外の世界にはなくても跡地くらいはあるだろう、もしかしたらそこに幻想郷に帰る境界があるかもしれない
「そうと決まれば早速行くか!……って空飛べないんだよな。」
何か前にもこんなことがあったような、まあ気にしたら負けだな、とりあえず洩矢神社に行くために駅に向かった。
駅
「東京の駅は広いとは聞いていたけどさ。ここまで広いとは聞いてないぞ!!」
ただいま絶賛迷子なう。元々北海道に住んでたからさ広い駅でも数分歩けばホームに着いたんだよ。
でも駅の電子掲示板にあと1kmって書いてあるか普通!?
「もっと改良できなかったのかよ!!」
「ねえママ、あそこに変な人がいるよ。」
「見てはいけません!!あんな変な人は放っておきなさい!!」
俺変な人扱いだよ。まあ当然か、服装は普通でも髪は白くなっちゃったし木刀持ってるし。
「嘆いてても始まらないか、めんどくせえ。」
俺はぶつぶつ文句をいいながらホームへ向かった。
洩矢神社跡地
なんやかんやあったけど着きました。過程を飛ばしすぎだって?、特に何もなかったよ。電車に乗ってそれから駅に着いて歩いてここまできたぞ。
「んま~見事な殺風景だこと。」
鳥居の前の階段から無くなってるからここに神社があったことを知ってる人は少なそうだな。前はここにあの3人がいたんだよな。
「淋しいな、ん?あそこに誰かいるな。」
跡地の近くに人影が見えたので行ってみることにした
「さーてどんな人がいるの……やら。」
俺はその近くに行った瞬間、思わず溜め息を漏らした
なぜかと言うと
「へへお嬢ちゃん金目の物を寄越しな。」
「嫌よ!これからメリーに会わないといけないんだから!!」
はい、こういう場面に遭遇してしまいました。俺に何か付いてるのかね?後で塩でも撒いておこうかな。どこかの不幸少年と一緒のスキルを持ってるみたいだ、やったね。
「そうは言っても俺達が逃がすとでも?」
「とにかくあげる物は何もないから!!」
数人の男に囲まれてる少女は男を睨みながら言った、度胸あるなぁ。
「ちっ、なら仕方ねえ。おいお前ら嬢ちゃんの腕を掴んで逃げないようにしろ。」
「へい、わかりやした。」
「こっち来ないでよ!!」
少女は持っていた鞄を振り回して抵抗する。ふむ、振り回し方がまだまだだな。
「掴まえたぜ!」
「ちょ!!離しなさいよ!!」
少女は必死に抵抗するが、大の男二人に掴まれたら身動きがとれないだろう。さて、ここからどうしたもんか、助けるか見捨てるか。
「抵抗しなければ痛い目合わずに済んだのによ、手間取らせた礼はしてもらうぜ。」
「やめて!!来ないでよ!!」
……はぁ。1度見ちまったもんは助けるしかないよな
ここで見捨てたらあいつらに何言われるかわかったもんじゃないし。
「そこまでにしておけよ。」
「あぁ?誰だテメェ?」
「なに、ただのお節介焼きの浮浪者さ。」
男は俺を見た瞬間にナイフを取り出した。ナイフを突きつけられてるが、この時点で咲夜ならナイフを投げてたからな、全然恐ろしくないな。
てかこの状況に慣れてる自分が恐ろしいな。
「へ、かっこつけが何の用だ?」
「お兄さん逃げて!!そいつらは銃とか持ってる!」
「まあ、ここは穏便に行きませんかね?」
出来れば争いとかしたくないんだがな、能力失われたとはいえ化物だらけの幻想郷を相手にしてきたから身体能力は他の人よりはある。何を言いたいかと言うと加減が出来ないということだ。骨の1本や2本折れても知らんぞ?
「見られた以上は消すしかねえって親分が言ってたからな、悪いが消えてもらうぜ!!」
そう言い男は俺にナイフを突き刺してきた。
「やめて!!!」
「もう遅い!!」
俺は動こうとはしなかった、俺の様子を見た男は殺ったと思ったのか顔を歪ませた、しかし。
パシッ
「遅いな、ナイフの突き刺すスピードも足りないし、重心がバラバラだ。」
心臓めがけて男はナイフを突き刺したが、俺はそれを片手を使って掴んだ。
「なっ!!」
男は驚いたがすぐにナイフを持っていた手を開いて仲間のところに行った。
「兄貴、どうしやすか?」
手下達は動揺しているようだった。
「なーに、こういう相手はこうするのがいいんだよ」
そう言いリーダーは少女の頭に銃口を突き付けた。
「いいか、お前が動けばこいつの命はないぞ!」
人質を使ったか、なんとまあ犯罪者らしいことで。
「はいはい、動かなければいいんだろ?」
「そうだ動いたらこいつの命は「はい1歩。」動くなつったろ!!」
こういうこと言ってる奴らは1歩動いても撃たないからな。
「いいか、もう動くなよ!!」
「へいへい。」
俺はもう1歩歩く。
「こいつを死なせてもいいんだな?」
「お前じゃ殺せないじゃん。」
「ちょっとお兄さん!!」
「言ったな?じゃあ殺してやる!!」
リーダーはバカにされたのが悔しかったのか少女に引き金を引こうとする、少し遊び過ぎたか?
「じゃあな、恨むならあの浮浪者を恨めよ。」
「嫌よ!!やめてよ!!」
……どうやら争いは避けられないようだ。
「じゃあ死ねぇぇ!!」
リーダーは引き金を引く、がしかし銃口から出てきたのは。
ピューー
水だった。
「………………。」
「………………誰だ水鉄砲にしたやつは!!?」
「俺だよ。」
リーダーが油断している隙に銃を水鉄砲とすり替えておいたのさ!
……どうやら自分の気配を消せるようになったらしい嬉しいような嬉しくないような。
「テメェ!!」
リーダーは水鉄砲を放り投げて俺に掴みかかろうとするが、それを避けてボディブローをぶちこむ。
「が、は……。」
リーダーは痛みに耐えられなかったのか気絶した。
「ありゃ強くやり過ぎたか。」
「兄貴!!よくも!!」
手下は俺に銃を向けて発砲してきたが、それを避けて同じくボディブローを叩き込む。
「うげぇ……。」
「あがぁ……。」
「あじゃぱぁ……。」
一人変な声をあげていたが手下も気絶したようだ。
「終わった終わった。」
俺は服に付いた汚れを払い落としていると。
「あの、助けてくれてありがとう。」
少女は涙目になりながらお礼を言ってきた。
「気にすんなって、それより何でこんなところにいるんだ?」
「ちょっと探し物をして、あ、私は宇佐見連子です!」
「俺は白谷磔だ。」
そう言い握手をする。しかしこの何もないところを一人で歩いてたなんてな。
「ところで探し物って何だ?」
「……今から私の言うことを信じてくれますか?」
連子は俯いて言った。
「いいから言ってみ。」
「私とメリーで境界?みたいなものを探していてここにそれらしきものを感じたから。」
「おい待てよ、普通の人は感じないはずだぞ。」
俺でさえ朧気に感じる程度なのに。
「私は星を見ただけで今の時間がわかり、月を見ただけで今いる場所がわかる程度の能力を持ってるから」
そう言い連子は自嘲気味に笑って。
「変だよね、普通の人にないものを持ってるなんて気味悪いよね。」
「いや、変ではないさ。」
連子はどうしてと言いたげな目で見つめてくる。
「その能力を他の人に役立てればいいんだよ。」
「でも私は普通の人じゃない!!」
連子は体を震わして泣き出した。
「こんな能力さえ無ければもっと友達もたくさんいたはずなのに、どうしてよぉ。」
「お前だけじゃないだろ。」
「えっ?」
「そのメリーって子と友達なんだろ?仮にメリーって子が能力を持ってたとしても信頼できる友達が一人でも入れば充分じゃないか。」
そう言い俺は連子の頭を撫でながら。
「そこから増やしていけばいいんだ。何、すぐに出来るさ。現に一人出来たんだろ?」
「う、うん。そうだね。」
連子は赤面しながら涙を拭った。
「磔さんは不思議だね。」
「はい?」
予想もしてない言葉が来たので変な声をだしちまったよ。
「私の能力を言って気味悪がらなかったんだから。」
「だって俺も能力持ってるからな。」
「ええっ!?」
連子はあり得ないといった表情をしてきた。
「まあめんどいからどんな能力かはパスで。」
どこまで説明したらいいかわからないからな。
「磔さんはこれからどうするんですか?」
「ん?俺は……!!」
誰かの気配かが近付いてくるので俺は身構えた。ざっと数十人くらいかな?
「どうしたんですか?」
連子は困った表情をしてきた。気付かないのが普通か
「いたぞ!!あの女を引っ捕らえろ!!」
そう声が聞こえてきた。
「お前何したんだ?」
「し、知らないわよ!!私は何にもしてないわよ!」
連子は慌てて首を横に降る。
「その女の能力が必要なんだよ!!命を落としたくなかったら素直に渡しな!」
偉い人らしき人が出てきて叫んでくる。連子の能力を使ってよからぬ事をしようとするみたいかな?
「さっさと渡せ!!」
「一応聞くが、何するつもりなんだ?」
「俺達の計画に必要なんだよ!!今の政府をぶっ壊すのにな!!」
「見逃しては?」
「逃がすわけないだろ!!さあ引っ捕らえろ!!」
次から次へと……少しは休みたいのによ。
「た、磔さんどうしますか!!?」
「逃げるぞ!!ちょっと失礼!!」
俺は連子をお姫様抱っこする。
「えっ?あ、あの?」
「ひとまずそいつらから逃げるぞ!!」
そう言い俺は走り出す。
「逃がすな!!追え!!」
犯罪者らしき奴らは車に乗り込んで追ってくる。どこかのアニメかよ!!
「追い付かれるわよ!!」
このままいったら捕まる、ああもう仕方ねえ!
「しっかり捕まってろよ!!」
俺はジャンプをして木の枝に乗る、そこからまた木の枝に飛び移る。どこかの忍者だなこれ。
「逃がすな!!」
全く厄日だな今日は。そんなことを思いながらとりあえず駅に逃げることにした。




