魔理沙の気持ち
この回は健二の視点で始まります。
後半はまた重い話です。
聖人[なんとかなんないのか?]
無理ですね、はい。
どうも皆さん健二です。俺視点は初めてか?今は魔理沙達がいる拠点にいるぜ。
「兄さんは大丈夫なんですか健二さん!?全然目を覚ます気配がないですよ!!」
良太がしきりに心配してるな。まあ無理もないぜ、左腕は無くなってるし、グレネードの爆風で全身火傷してるし。
「このままじゃ聖人が死んじゃうぜ!なんとかならないのかよ!?」
「落ち着きなさい魔理沙。永琳なんとか出来ないの!?」
落ち着けってその台詞そのままアリスに返すぜ。目をグルグル回しているお前が言うんじゃないぜ。
「あー、心配いらねえぞお前ら。聖人はそう簡単には死なねえからよ。」
「どうしてなの健二お兄様!?この傷の度合いから見て聖人お兄様は瀕死だよ!?」
フラン、お前意外と医学の知識あるのか?たまにフランは見た目に反して高い知識の台詞を言うからなぁ。
「大丈夫だぜフラン。こいつの生命力はG並みだからな。」
「ひどい言いようね。まあ聖人の生命力は並じゃないってのは認めるけど。」
だって本当の話だからなレミリア。体中あちこちから血を出しても、刀を使って普通に戦ったり、走り回ったりしてたからな。
「健二の言う通りね、これだけの傷を負ってるにも関わらず命に別状はないわ。」
「永琳の言う通り、俺は大丈夫だよ。」
「うおお!?いきなり起き上がるなよ聖人、びっくりしたじゃないか!?」
そりゃあんなぼろぼろな体で何事もなく起き上がったら驚くよな。
「心配かけてすまないな皆。寝たら少しは良くなったよ、でも完璧に治ってないから治療を頼むよ永琳。」
「とにかく兄さんが目覚めて良かったです。」
良太はホッとした表情で聖人の方を見ていた。聖人はそれを見て俺の方へ向かってくる。あれ?何でだぜ?
「あと健二、余計なことを言ったな?誰がG並みだって?」
あーこれはやばいな。聖人の顔は笑顔だけど、殺意が剥き出しだぜ。かなり怒ってますね。
「こういう時は逃げるが勝ちだぜ!あばよまっつぁん!」
「逃がすか!想符『セイントキャプチャー』!」
あら?体が動かねぇ?って霊力で出来た縄で縛られてるのか俺!?
「やや止めろ聖人!こういう緊縛ものは女の子にやるべきだろ?なぁ?だから解いてくれぇぇぇぇぇ!」
「聞こえませーん。」
完全にご立腹だよ!!誰か助けて!!
あのあと聖人から正拳突きをお見舞いされて意識を失ってました。殺す気か!?
「死ぬかと思ったぜ。」
「健二の自業自得だと思うわよ?聖人、左腕の治療を含めて3日ここにいなさい。」
永琳の言葉を聞いて聖人は不満そうな表情でため息をついたな。今すぐにでも早苗達を助けに行きたいって感じだぜ。
「そういえば早苗はどうなったんだ聖人!?ここにいないってことはまさか!」
「悪い神奈子、諏訪子、助けれなかった。」
「聖人を責めはしないよ。それだけの怪我を負ったって事は強い敵が居たってことだろうからね。ところで、誰が居たんだい?」
俯く聖人の頭を諏訪子が優しく撫でてるな。頭を撫でている諏訪子から母性が溢れ出ているみたいだぜ。
「頭を撫でないでくれよ諏訪子。誰が居たかと言うと、絢斗に文に幽々子に魅魔に神綺がいた。」
俺も一応情報収集はしてたからどんな人物かはわかってるが、とんでもない人物達が敵になったもんだぜ。
「師匠が!?」
「ママが!?」
「幽々子様が!?」
魔理沙とアリスと妖夢が聖人の発言に対して驚愕の表情を浮かべたな。妖夢はまあ幽々子の従者だから驚くのは分かるけど、魔理沙とアリスは驚いてるのは何でだぜ?
「となるとこのメンバーで倒せるかどうかは怪しいね。」
「ちょっと快?私達の力を舐めてるのかしら?」
「ご、ごめんなさい!」
快の発言に対して霊夢がお怒り気味で言ってきたよ。霊夢達の実力を舐めてるわけじゃないがな。
「そんなことは知ってるぜ。単純に力比べなら良く見積もって互角だろう、けど謙治は常に最悪の事を考えて行動しているから傲りなどは通用しないぜ。」
「現に俺が返り討ちにされてるからな。まあ、詳しいことは3日後に話すさ。それまで戦闘の準備だったり英気を養ったりしてくれよ。」
そう言って聖人は立ち去ったのを合図に残ってたメンバーもそれぞれ別れていった。
「そういや、魔理沙の顔が険しかったな。ちょいと様子でも見に行ってみっか。」
二日後
魔理沙side
健二の話を聞いたあと、私は部屋に行って魔法の研究をすることにした。3日程度の研究なら気休めにしかならないけど相手が師匠なら一つでも手があった方がいいと思って研究してるぜ。
「時間が、時間が足りない。でもやれるところまでやるしかない!」
でも、私なんかが師匠に敵うのかな?いくら私が成長したとしても師匠は私の知ってる実力のままっていう保証はない。
「こんなんじゃ、駄目だ。くそっ!」
「へぇー、熱心に魔法の研究をしてるじゃないか。魔理沙、けど休憩無しでするのは感心しないぜ。」
「わひゃぁぁぁぁ!?けけけ健二!?」
急に声を掛けられたから思わず変な声を出してしまったぞ!?恥ずかしいったらないぜ。
「急に現れるなよ健二!?せめて扉のノックぐらいしろよな!乙女の部屋に無断で入るな!」
「いやノックはしたぜ、気付かない魔理沙が悪いだろ。にしても地道にやってるんだな。」
健二は苦笑いを浮かべながら部屋の周りに散乱している羊皮紙を手に取った。おい、勝手に見るな!
「勝手に人の研究のメモを見るんじゃないぜ!?第一見たとしても何が書いてあるか分からないだろ?」
「なるほど、これはなかなかだな。火力よりの魔法を使用するんだな魔理沙、扱いずらそうだけどな。」
ちょっと待て、なぜ健二は魔法の仕組みがわかるんだぜ?
「どうして魔法の仕組みがわかるのかって言いたげな表情だな魔理沙、俺も一応魔法を使えるからだよ。」
意外だった、聖人だけでなく健二も魔法を使えるなんてな。
「やっぱり物事は才能で決まるのかよ……。」
「どうしたのか魔理沙?悔しそうな顔を浮かべて?」
「な、なんでもないぜ、それより用は何だ健二?無いならとっとと出てってくれよな。」
シッシと手で部屋から出ていけっていう合図をすると健二はニヤニヤし始めた。その顔ムカつくぜ。
「ちょっと気分転換に外に出ないか?何時までもこんな狭い空間に居たら閃くものも閃かないぜ?」
「まあ、ちょうど休憩にしようと思ってたからいいぜ。」
私は部屋を出ていく健二の後に付いて行く。そういえば健二の服装って私と似ているな、白黒の格好。
「今日は、やっぱりいたな。病み上がりの癖してよく動き回れるな。」
「何を見ているんだ健二?」
健二が見ている方へ目を向けると聖人が木刀を振っていた。おいおい怪我が悪化するぜ!?
「何やってんだっていう顔だな魔理沙。見てわからないのか?鍛練してるんだよ。毎日毎日ああやってな。」
聖人が鍛練、意外なんだぜ。
「そういえばさっき魔理沙はこんなこと言ってたな、やっぱり物事は才能で決まるのかよって。」
うわあぁぁぁぁ!!ばっちり健二聞かれてたんだぜ!!ニヤニヤしているし、穴があったら入りたい……。
「おっ?顔が赤いぞ魔理ちゃん。」
「うるさいぜ!あと魔理ちゃん言うな!」
健二と居ると何か調子が狂うぜ、無駄に心臓がバクバクしてるし。何なんだよこれ。
「話を戻すけど、確かに聖人は才能はある。」
やっぱりそうだよな。才能があるからあれだけ強いんだよな。
「けど、あいつはそれで怠けたりは絶対にしない。霊夢のようにな。あいつと外で一緒にいてわかったんだよ。」
「えっ?そ、そうなのか。」
だから強いんだな。ちょっと憧れるな。
「けど、俺は魔理ちゃんが決して弱いとは思わないけどな。」
「だから魔理ちゃん言うな!!」
くそっ、魔理ちゃんって言われる度に顔が暑くなる。一体どうしちまったんだ私?
「やっぱり照れた顔は可愛いぜ。深刻に思い詰めた顔なんて似合わないぜ。」
「なっ!わた、わた、わたしは……。」
反論しようと思ったけど言葉が出なかった、本当に何なんだよ!
「っとまた話が逸れたな、まあつまり魔理ちゃんは努力をしてここまで来れたんだろ?ならもっと自分に自信を持ってもいいじゃないのか?」
「その言葉は嬉しいんだぜ、けど私は霊夢に負け越しているんだ。」
それが私の一番の悩み事だ。誰にも打ち明けてない私の悩み、でも健二になら……。
「ほう、けどあいつに負け越している人達なんてほぼ全員だろ?」
「そんなことは分かってるんだよ!あいつは努力が嫌いでいつもごろごろしてる、けど弾幕ごっこになれば天性の才能と勘で立ち回って、勝てる時もあるけど大半は負けてしまうんだぜ。」
「なるほどねぇ。」
「それが悔しくて!もっと強くなろうと必死で研究して!悩んで!苦しんで!それでも、それでも結局は同じ結果になるんだぜ!!」
霊夢には勝てないって諦めちまうのが早いんだろうけど、あいつは私のライバルなんだ、だから負けたくないんだ!
「………………。」
「どんなに努力しても、他人の技を真似て自分流にアレンジしても、結果は変わらない。じゃあ私はどうすればいいんだぜ!?魔力は努力すれば上がるけど、霊力は上がらない。けど、霊夢は霊力は膨大にあるし、才能があるからやっていけるんだぜ!!」
私が今言ってる事は八つ当たりだ、でも八つ当たりと分かっていても言葉は止められないんだ!
「聖人も健二もそうなんだろ!?努力はしても、結局は才能なんだろ!?なら才能の無い私はなんなんだぜ!?」
気が付けば私は涙を流しながら健二に殴り掛かっていた。もういい、健二に嫌われてもいいから心にあった悩みを全て吐きだそう。
「確かに師匠は言ってた。才能が無くても努力をすればいつかは追い越せるって。けど、それは何時なんだぜ!?私が生きている間に越せるのか!?そう思うと怖くなって、でもこんなことは誰にも相談できないんだ!!私一人で抱えていかなきゃならないんだぜ!!」
健二に殴り掛かりながら想いをぶつける、それを健二は黙って受け止めてくれていた。殴られても無抵抗のまま。
「もう嫌なんだよ!!もうたくさんなんだよ!!どうしてこんなにも理不尽なんだよ!!どうして私に才能がないんだよ!!誰か答えを出してくれよ!!」
「……今のが魔理沙の抱えてきた気持ちか。そうかそうか、そうだったんだな。」
「何分かったような顔してんだよ!?お前にはわからないだろうよ!!」
「確かに魔理沙が思ってる気持ちは体験しないとわからないだろうな。」
だったら綺麗事を吐くな「けど、一人で抱えこむ必要はあるのか?それは聖人と一緒だぞ。」よ!?
「あいつも同じだ、何でも一人で抱え込んで、悩んで、苦しんで、聖人にも言ったが、誰かに相談しろ。もっと人を頼れ。」
「けどっ!!」
「実際俺は才能なんてない。魔理沙の気持ちはよくわかる。俺も聖人に負け越しているからな。」
意外だった、健二に才能がないなんて。あの洞察力、判断力、察知力、あれが才能じゃないなんて……。
「確かに努力しても実らないことはよくある。けど、努力しないと始まらないし実らないとも限らない。実際に魔理沙は才能があると思うけどな。」
えっ?私に、才能?
「聞いた話によると、普通の人間には魔法は使えないらしい。マジックアイテムを用いてもな。もし使えたとしても魔理沙みたいには使えないらしいぜ。」
「初めて、聞いたぜ。」
「つまり、魔理沙には魔法が使える才能と努力する才能があるんだよ。『マスタースパーク』だったり『ノンディレクショナルレーザー』だったり、真似て自分流にアレンジしてなんて中々出来る事じゃないぜ。」
何だろう、健二は嘘を言っていない。でもこの胸に広がる安心感は一体……。
「直に霊夢にも勝てるようになるさ、俺が断言する。それでも不安なら俺も手伝ってやるさ。ライバルは違うけど一緒に頑張って行こうぜ!」
そうか、私は健二の言葉を聞いて嬉しがってるんだな。初めて相談に乗ってくれた。私の言葉はしっかりと聞いてくれた。
「今までよく一人で頑張ったな。」
健二は被っている帽子を取って、私の頭を撫でてくれた。
「今日は素直になっちまえよ。」
「ううっ、うわあぁぁぁぁん!!」
私は健二の胸に飛び込んで泣き付いた。
「おっと、強烈だな。とことん泣け、今まで辛かった分受け止めてやるからさ。」
「ありがとう、本当にありがとう……。」
この安心感、胸の高ぶり、顔の暑さ。そうか、私は健二に……。
健二side
まさかあんなに元気な魔理沙がここまでの悩みを持っていたなんてな、人は見かけによらないぜ。才能か、あったら苦労はしないんだろうな。
「そろそろ離れてくれないか?」
魔理ちゃんにそう言うが反応はなかった。あり?聞こえてない?
「魔理ちゃん?」
「スースー……。」
寝ていたよ、泣き疲れたんだろうな。あんだけ喚いて泣けば眠るよな。にしても、今はさっきの魔理ちゃんとは違い気持ち良さそうな表情で寝てるな。あんな苦しんでる魔理ちゃんはもう見たくはないもんだぜ。
「そういえば聖人に言われたっけな。魔理ちゃんとほぼ同じ内容を言ったら確か……。」
『ふざけるなよ!?才能がある?ない?そんなのは関係ないだろが!確かに才能があれば努力は必要ない。だから努力しても無駄だ。けどそれでいいのかよ!?それで納得していいのかよ!?俺は納得できない。世の中は非情で理不尽だ。努力してるやつが涙を流す羽目になって、才能あるやつが上に立っている。けどそれで諦められるのかよ!?見返してやろうとは思わないのかよ!?』
あの言葉はすごく効いたね。その後殴りあいにもなったし。けど、その言葉のおかげで聖人と同じ位置に立っていられる。
「大丈夫だぜ、魔理沙のやって来たことは無駄じゃない。きっと実るはずだ。」
胸の中で眠る魔理沙の頭を撫でてお姫様抱っこでベットまで運んで寝かせ、部屋を出た。
聖人side
まったく、全て聞こえてるっての。おちおち鍛練もしてられない。けど、魔理沙が抱えていた問題を健二が聞いてあげたな。これで魔理沙は変われるはずだ。
「……全て見てたんだろ紫。」
「あら、ばれてしまったわね。」
俺の横の空間にスキマが出現してそこから紫が出てくる。
「お久し振りですわ聖人。そしてごめんなさい、私がもっとしっかりしていれば貴方を苦しませずに済んだ。」
「いや、紫が悪いわけではないさ。謙治の野郎が悪いんだから。」
それに、外の世界に行ったからこそ健二にも会えた訳だしな。
「そうね、けど謙治と健二、名前が一緒だから分かりにくいわ。」
「そこは仕方ないだろ。成り行きでそうなっちまったんだから。で、何の用で来たんだ?」
「魔理沙の様子を見に来たのよ。最近無理をしてたらしくてね。」
意外だな、紫が魔理沙の心配なんかするなんて。
「そんな心配は霊夢だけと思ったんだけどな。」
「失礼ね、こんな状況になってからは皆を心配するようになったのよ?それに魔理沙は霊夢の友人でもあるから心配はするわよ。」
紫が少しムスッとした表情で手に持っていた扇子を広げる。
「けどもう大丈夫そうね。それともう一つ。幽々子を頼むわね。」
「紫は行けないのか?」
「私は博麗大結界を維持するのに大変なのよ。あの大結界が無くなったら終わりだからね。」
それもそうだな。皆を救出しても博麗大結界が無くなったら何もかもおしまいだからな。
「そうか、幽々子のことなら任しとけ。白玉桜に住ませてもらった恩もあるしな。」
「頼むわね、あと左腕を治してあげるわ。」
「明日には永琳に治して貰うから大丈夫……ってもう治ってるし。」
「私の能力を使えばこんなものよ♪」
永琳涙目だなこりゃ、まあ紫のせいにすればいいか。
「じゃあ頼んだわよ。」
紫はそう言ってスキマの中に入っていった。やれやれ、負けられない理由がまた1つ増えたな。
聖人[ところで健二]
健二[なした?]
聖人[お前よく怒らなかったな。]
健二[魔理ちゃんの言葉にか?
怒る要素なんてないぞ。]
聖人[へー俺がおちょくったらすぐに怒るのにな。]
健二[それは関係ない。]
聖人[しかも魔理ちゃんって……(にやにや)]
健二[にやにやすんなよ!!]
聖人[もしかして、好きになったのか?]
健二[そそそそんなことは、ななないぞ!!]
良太[分かりやすいですね、兄さん並みに。]
聖人[良太、一言余計。]
霊夢[いいんじゃないかしら? 二人ともお似合い
だし。]
健二[ななな何を言ってるんだ?]
霊夢[動揺してるのまるわかりね。]
健二[……気を付けよう]




