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「ヒャーッ!」
猛は雄叫びと共に光人を切り裂く。与えられし大鎌を以てして……。
彼は視界に収まるすべてを蹴散らし、止まるという事を知らない。
自分が高まるという肉体の喜びと、身体の内に潜むもう一人の猛が「もっとやれ」とはやし立てる。
今まさに肉体と精神が一体となって状態である。
『健全な精神は健全な肉体に宿る』とは言うが、彼の場合――。
――凶悪な魂は極悪な肉体を造る。……と、いったところだろうか。
既に彼の身体はここ――修羅道に来たときとは比べ物にならないくらい、強靱となっていた。
いや、強靱という言葉では生ぬるいかも知れない。強靱と言う言葉は困難に耐える――つまり、何かに耐えて初めて意味をなす言葉なのだから……。
けれど彼は奪う事に特化した――攻撃力に重みを置いた物となっている。だから彼の場合は『凶刃』という言葉が似合いだろう。
とはいえ、何も手足が刃物のように鋭くなった……と言うわけではない。
奪い、そして貪った他者の魂。
それをことごとく食らい尽くした事により、魂の総和が増え、それに見合う身体に変異したに過ぎない。
確かに身体の耐久度は増したことは事実だろう。
現に、彼は配給された鎧を脱ぎ捨てても平然としていられる。
本来これを脱ぎ捨てた魂は、少なくない内に光に戻り飛散してしまう。
だから強靱という言葉でも……まあ、いいのかもしれない。だが、それは一面――おまけにしか過ぎない。
そういった意味で彼はやはり外道である。理を無視しているのだから。いや、むしろ超越しているのかも知れない。
いつのまにか彼は与えられた武器を変異させ、光人に触れる事ができるようになっていた。
理の中で生まれた物を変異させる。……もはやこれは理の塗り替えと言うべきだろう。
だから彼は超越者と呼ぶ域に入り込んでいるのかも知れない。
そして今、彼は大鎌で切り裂いた光を吸い込んでいる。
口を少し開き、そして空気を吸うかのように、霧散した光の粒を身体の中へと送り込む。
(……美味い)
猛は他者の魂、つまり命その物を堪能する。
肉体の死は、命の消滅を意味しない。
魂がある限り転生を果たし、やがては地上――人間道へと戻るからだ。修羅道に落ちた物が戻れる可能性はほぼないのだが……。
けれど、魂が消滅したらそうも行かない。その時点で輪廻の輪から断ち切られる。
つまり一個の存在としての死を迎えるのだ。
解脱も輪廻の輪から外れる事になるが、断ち切られるわけではない。
とはいえ、生まれ変わる苦しみから解放されるという意味では同じかも知れないが……。
修羅道とは魂の死を迎えさせるための施設である。だから彼らが死ぬという事は同じ結果となる。
それは殺し殺され、摩耗していく事で消滅を迎える。つまり自業自得で死んでいく形である。
しかし、そこに天見猛という人物が入り込む事で、違った展開を迎える事になるのだ。
――貪られるという……。
摩耗した魂、まだ生命力に溢れた魂。それらは関係なく、等しく彼に食べられていく。
逆に猛から見たら魂たちはどうだろうか。
すり減っていた魂は、無味乾燥で栄養もほとんどないと言ったところか。そしてまだ消滅という言葉とは真逆に位置する魂は、栄養満点で極上の味と言ったところだろう。
栄養を取り入れれば、身体を作り、エネルギーに変換される。
この場においては魂の食事なのだ。だから魂がそれらを取り入れ身体が成長するように強化されていく。
どちらにしても、猛の魂は腹が膨れる――満足するということはなかった。
脳が満足しなければ、腹が膨れたところで止める事はないのだから。
猛は辺りを見回し、次の獲物を探そうとした。
――いない。
しかし、探せども光人など何処にもいなかった。すべて彼が食べ尽くしてしまったのだろう。
猛はそのことがわかると急に心が冷めるのを感じた。
高揚感の喪失。
それが彼を冷静になることを許した。
(さて、やる事がなくなってしまったか……)
猛は魂を奪うというやるべき事がなくなり、途方に暮れた。
遠くを見れば光人らしき者が、多少こちらに向かってくるのはわかっている。しかし、大した数ではないのだ。直ぐにやる事がなくなってしまうだろう。
とはいえ、無防備な者を蹂躙するというのはどこか心が満たされない。いや、笑いたくなるほど楽しいのは確かだ。けれどまだ先があるように思えてならない。
猛は地に座り込み、手のひらにあごを乗せ、もう片方の手で肘を支えた。
もはや血の臭いなど気にすることもない。慣れてしまったというより、馴染んでしまっていたのだ。
死を導く事は血に塗れる事。
血の臭いに閉口していたのはとうの昔の事のように感じていた。
そして死を堪能しながら思索にふける。
しばし考えた後、ある事に気付く。
(そうかっ! 抵抗されて、無理矢理というスパイスがなかったからか!)
ゲスの考えに行き着き、猛は口をつり上げる。やつらがいた……と。
そうと決まれば話は簡単だ。
光人を蹂躙する事で忘れてしまっていたが、まだここには……武装し各地に散らばった、光人たちがいるのだ。
それにその中には猛を殺した男もいるはずだ。
ならばこれは――復讐。
それはきっと悦楽するのに相応しい味付けとなってくれるだろう。
そして猛は動き出す。次なる獲物を求めて……。
けれど、相手は何処にいるのかわからない。猛を殺した者に限定すればなおさらだろう。
だからできる事といったら、ただ徘徊するという手段のみ。
だが走り回るわけではない。だからゆっくりと周囲を見回し練り歩く。
走るのは猛の主義ではない。用があるなら向こうから来い、それが猛の常であった。
もし、向こうに用がなくても呼び出せばいいだけの事。しかし、今はそういう訳にもいかない。
獲物――狩りなのだ! 自ら探さなくてどうするんだ!
そういう気持ちが猛の中にあった。
そして、以前ならばとうに疲れて倒れ伏しているだけの距離を動き回っていた。しかし疲れない。
むしろ今まで休み続けて、『さあ、これら運動でもしようか』と言えるほど体力が有り余っていた。
そのことに疑問を覚えた猛は自らの身体を見回す。
(特に変わった様子はない……、いや、以前よりも肉感に溢れているような気がするかな?)
以前とは違うもの。それは防具に包まれていた時ですらうっすらと透けていた身体、それが現世――死ぬ前の時と同じように血の通った肌ができていた。
まるで脱皮を終えた後のカニのように、魂が殻を形成し、定着させたとでも言うのだろうか……。
しかし、それが体力が上がった要因とは思えない。
なぜなら肉体があるという事は、心肺機能でそれが左右されてしまうからだ。
けれどまだこの外殻のような物が形成される前に、猛は光人相手に暴れて息が切れた事がある。そのことから肉体がなくても疲れることは明白だ。
では、何故……と思ったが、わからない事を気にしてもしょうがない。
猛は気持ちを切り替えて、ただ前だけを見つめ歩き続けた。後ろを振り返る事なく……。
しばらくしてから、ふと猛の耳に金属がぶつかり合うような音が聞こえてきた。
(これは剣戟による物なのか?)
猛は耳を澄まし、よりいっそうそれに集中させた。
一つ二つではない。それが幾重にも連なりまるで合奏をしているかの様だった。
猛はそれを感じ、目に狂喜をにじませる。そしていつの間にか足が勝手に動きを早めていた。
猛は走りながら腹に力を込める。そして大きな口を開いた。
「死ぃーーーーねぇーーーいっ!」
声を腹の底から出し、大鎌を振りかぶって戦地へと飛び込んだ。
猛が飛び込んだそこは、戦場と呼ぶのに相応しいものだった。いや、むしろそれ以上に凄惨なものがあった。
戦争とは勢力分かれ、それぞれの勝利を掴むために戦う物。
しかし、ここはただそれぞれが己の勝利のため、いや相手を殺すだけに戦っているように思えた。つまり、自分の生死など問題としていなかったのだ。
現に今も、肉を切らせて骨を断つといった体で相打ちになっているものがいる。それも一人二人ではない。
だから当然この地には光の粒が飛散していた。
猛は狂人ともいえるそれらに襲いかかりながら、それらを吸い込もうとする。しかし、できない。吸引の力を高めたところで、それらはピクリともしない。
以前との違いは、己が殺したか否かと言うところにある。ならば、自分で摘み取った命以外は奪い取る事はできないのだろう。
そもそも猛はただ命を啜るだけに飽きていた。だからこうしてここに来た。
他者が奪った生をかすめ取るというのも悪くはない。でもそれでは満たされない。
――自らの手で、殺し、奪い取る!
それが今の目的であり、願望なのだ。
猛は打ち合う修羅たちの背後に回り、首を刈る。
勝つ事に意味はない、一方的に奪う事が大事なのだ。そう言わんばかりに正面から打ち合うことなく、ただひたすら命だけを摘み取っていた。
刈る。刈る。刈る。刈る。刈る。
吸う。吸う。吸う。吸う。吸う。
ルーチンワークをこなすように、ただひたすら同じ事だけを繰り返した。
けれど事務的にやっているという事はない。
なぜなら――。
「ハーッハッハッハハァ!」
高笑いをして、実に楽しそうに動き回る。
背後から奇襲という手段を用いているのに、こっそりと隠れる様子すら見せない。
姑息な攻撃をしているというのに、悪びれた様子もない。
まるで自らのあり様を見せつけるかの如く、周囲に対し自己主張を繰り返す。
そんな事をしていれば時に、攻撃を受ける事もある。
同じように後ろから攻撃されたり、注目を浴び集団で襲いかかられたりもした。
しかし猛には、それらを畏れるという気持ちなど既になかった。
魂の質を高めたおかげか、この戦場にいる修羅など塵芥。まるで蟻を踏みつぶすかのような、全能感に襲われていた。
まるで相手にならない、そう思わせる何かが身体の中からあふれ出ていた。
確かに武器は驚異的だろう。加えて猛は鎧も脱ぎ捨てている。
本来であれば、一撃を受けた時点で致命傷となってしまうはずだった。しかし、猛はそうはならなかった。
鎧を脱ぐという事は、必要を感じていない事。もちろん動きが制限されてしまうのを嫌ったという事もあるだろう。けれど、彼はそのことから脱いだわけではない。
猛は本能からその鎧よりも自らの身体の方が硬く、強靱であると悟ったからに他ならない。つまり、鎧など重りにしか感じられなかったのだ。
そんな驚異的な身体の前に、同じように作り出された武器などでダメージが通るわけがない。だから幾ら刺されようが、斬りかかられようが刃など弾いてしまう。
かといって痛みを感じないという訳でもない。
まるで蜂や虻に刺されたようにチクンとしたり、枕で叩かれ程度の衝撃は受けたりしまう。
うっとうしい事この上ない、それが猛の思う事であった。
(ならば……手で払うまでよ!)
猛は大鎌を一閃する。
自分を中心に弧を描くように旋回させる。
槍とは違い大鎌は内側にしか刃はない。しかし、その分威圧感と内側の刃の威力は凄まじい物があった。
さらにこの大鎌は猛と共に、違う別の物へと変異していた。
だから修羅が身に着けている鎧など紙のように引き裂く事ができたのだ。
修羅は声にならない悲鳴を上げていく。
ああ、なんていい叫びなのだろうか、と猛は思う。惜しむらくは本当に声が出ていないことだが、彼らは発声することができないのだろうと諦めていた。
それで猛は前世を思い出す。女を寝取られたときの男の悲鳴。そして破滅に追いやられた会社の重役たち……。
魂の叫びとはああいう物だろか。
修羅は魂がむき出しになっているためか、それがはっきりと分かる。けれど音がない。
(チィ、こんな事なら人殺しも経験しておくべきだったか……)
猛は嘆き、そして後悔する。
そう思うと、この世界が灰色にみえるようになってしまった。
――あれほど魂を奪い取ったというのに、それで高揚してたというのに……。
だが、物足りなさを感じてしまったら元の感情には戻れない。
やがて猛はもう飽きたとばかりに、事務的に修羅を刈り取っていく。光が舞い上がりそれを吸い付くすのも作業のようにこなしてく。
もはや慣れた行為。なら、それをするのに意識など必要とせず、まるで呼吸をするかの如く、それを為していた。
次第に猛はこの世界を脱出し、生ある物を殺してみたい……そんな誘惑に駆られるようになる。
どんな悲鳴を上げるのか、どんな顔を浮かべ死にゆくのか、そして命が尽きる果てに何を告げるのか……。
猛はそれを想像するだけが楽しみになっていた。
あれから修羅を見かける度に掃除をしていた。
もはや修羅など興味の対象外だ。だから目障りだから殺す、それだけに過ぎない存在となっていた。
その一方、身体からあふれ出る力は日々止まる事を知らない。これも魂を奪い続けている成果だろう。
腕を振るっただけで衝撃波が生じる。それだけで修羅は消滅してしまう。なんとあっけないことか。
苦戦を演じ、暇を潰そうとした。だがそれすら叶わない。
しかし、そんな彼にも一つだけ楽しみが残されていた。
――復讐。
そう、自分を殺したあの男に未だに再会を果たしていなかったのだ。
だが、会えば確実に殺してしまう。おそらく一瞬の事になるだろう。
そう考えると会いたい様な会いたくない様な気分になる。
そんな考えをしていたためか、猛は元の場所――光人が列を作っていた所に戻ってしまったようだ。
だいぶ数が増えてはいるが、それでも以前ほどではない。とはいえ、それは以前が膨大な量なだけであり、目算は不可能な程度にはなっていた。
(修羅になるまで待ってもいいが……大した変わりもあるまい)
そう思った猛は大鎌を両手で構え、旋回した。
その刃の軌跡から音と衝撃を伴った波動が発生し、視界の果て、そう、つまり猛の目の届かない向こう側まで行ってしまう。
衝撃波の通った後には何も残らない。草一つ、そしてむき出しになっていた岩ごと消滅させていった。
いや、残った物がある。それは光、光人だった魂のかけら。
それらは再び一つに戻ろうかと形を成していく。しかし、それを黙ってみている猛ではない。
復活したらやっかいなどという気持ちではない。ただうざいのだ。目の前をちょろちょろとしてたまらなくなってしまう。
そしてゆっくりと歩きながらそれらを胃袋に納めていく。こうすればいずれ身体がそれらを養分に変えていく。
猛はふとある事を思い出した。
この世界、いやこの場所に来たときの事だ。
武器や防具を生み出している謎の存在。あいつらはいったい何だと。
一度興味を持つといても立ってもいられなかった。極寒の地における火種を求めるが如く、彼はその衝動に流され歩みを勧めていく。
(この先に……この先に……いる)
遊び相手を見つけた子供のように猛は歩き出す。
そして目的の場所までやってきた。
(――……いたっ!)
標的を見つけた猛は走り出す。
その不可思議な生物は、辺り一面に武器や防具によって埋め尽くされていた。修羅が生まれずとも仕事を果たしていた結果だろう。
猛が光人を減らしたため、それらを扱う物がいなくなっている。
それにもかかわらず未だに生み出しているという事は、それらに知能といった物がないと思わせる。
しかし、猛には関係ない。暇つぶしの相手など、どのような存在であっても構わない。
加えて、衝撃波を受けたはずにもかかわらず、それらは無傷……と言ってもいい状態なのだ。十分時間を潰せるだろう。
とはいえ、生み出した鎧や武器が盾となったのかもしれない。
そう考えるとあまり期待してもいけないような気がした。
(まあ、いい……。そうなったら、そうなっただけのこと)
猛は迷いを振り払い、今、その一瞬を楽しもうとする。
けれど、猛の思惑はいい意味で裏切られる事になる。
猛が未知の生物に襲いかかった瞬間――。
まず、周囲に散らばる武器が猛に襲いかかってきた。宙に浮いて、まるでそれぞれに意識があるかのように……。
それに驚いた猛はそれらをなぎ払おうとする。しかし、それはできなかった。
やはり意志があるのか、猛の大鎌とそれに伴う衝撃波を迂回するように回避し、そのまま猛へと襲いかかってきた。
猛はそれらの攻撃を、たいしたことない、当たったところで意味はない、と油断する。
事実当たっただけならば痛みはあるが、たいしたことなどなかったのだから。しかし、そのあとがいけなかった。
――身動きができない程、埋め尽くされてしまったのだ。
こうなると幾ら力があるとは言え、少しの隙間がなければそれを生み出す事はできない。
しかも段々と圧力が増しているように感じる。たぶんだが、休む事なく物を生み出し猛に攻撃を仕掛けてきているのだろう。
(――くそぉ。八方塞がりって訳かよ……)
だが、こんなところで死ぬわけにはいかない。死んでたまるかと猛は抵抗する。
もし死んだところで、再び蘇る事も可能なのだ。焦る必要はないという考えもあった。
しかし、自分はあの生物に敵対してしまった。
そうなるとかつてと同じように復活できるとは思わない方が良いだろう。それに何よりも殺されるのは面白くない。
だから猛は暴れた。少しでも隙間を作ろうとして……。
けれど身動きもできないのだ、それをすることすらできない。
猛は考えた、どうすればいいのだろうかと。
そこである一部分だけが動く事に気付く。――手首と足首、それに指が多少動いたのだ。
だが、大鎌を持っているのだから手は考えない方が良いだろう。これは隙間ができたときになぎ払う必勝の鍵だ。手を離すわけにはいかない。少なくとも片手は使えないと思った方が良い。
そしてもう一つだけ動くところ、そこが肝心だった。――顎……つまり噛みつきだ。これはかなり強い力を持つ。もしかしたら武器すらかみ砕く事ができるだろう。
そうしたならば隙間ができるのではないか……。そう考えると、まだ諦めるのは早いように感じた。
とはいっても、噛みつけるには首を動かす隙間が少しだけ足りない
そんなとき、猛はふとある事を思いつく。
(しかし、しかし――だ。もし魂と同じように、この武器や防具の存在も奪い尽くす事ができるならば……どうだろうか)
魂は一度形を壊さないと身体に受け入れる事はできなかった。ならば、これらの物も一度壊さないといけないだろう。
その考えから猛はある決断をした。
まず猛は、自分の大鎌の柄を手首の力でへし折った。
その時生じた動きが膨大な力を生み出す。
――折れた大鎌。
その刃の軌跡から波動が生まれる。しかし、それが生まれたのは刃からだけではなかった。
まるで最後の役目とばかりに、折れたそれぞれの先端からも衝撃波が生み出された。
――そして全ての延長線上にある物は破壊された。
(――ッ、今だ!)
猛はその破片を吸い込もうとした。
(……あれ? ……違ったのか?)
幾ら待とうとも反応はなかった。そんな猛をあざ笑うが如く、次々と武器や鎧が飛んできた。まさに物量作戦といったところだろう。
しかし、二度も油断などはありえない。
先ほどは大ぶりだったからこそ、隙を突かれたのだ。なら移動しながら打ち落としていけば大した問題でもない。
最小限の動きでそれらを打ち払い、こまめに移動する。
確かに量は尋常ではないが、最大速度は猛の方が上だ。最悪逃げ延びる事も可能だろう。
だから足を止めさえしなければ全く問題ないのだ。
そして打ち落としている内に段々と、その動きに無駄がなくなっていった。