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井上達也 短編集1(始まってもいない作品集)

made in USA from Japan

作者: 井上達也

 俺は、ヒーローになりたかった。でも、なれなかった。どうしてかって?それは、金がなかったからさ。金が無ければヒーローにはなれないからさ。俺は、間違ったことは言ってはいない。金がこの世のすべてだ。金があれば何だって買える。そう、正義さえもな。


「昨夜、22時すぎ。繁華街の路地裏で変死体が発見されました。遺体は損傷が激しく、一部の肉体が消失しており身元は不明だそうです。現在、警察が身元の判明に全力を注いでいるとのこととです。事件の全貌がわかり次第、随時発表するとのことです」

 午前7時。いつものように朝食。牛乳とシリアル。僕は日本人だけど、アメリカ人みたいな生活をしてみたくて朝からシリアルを食べてる。味かい?正直美味しくない。ごはんとみそ汁の方がましさ。なんで、アメリカ人はシリアルが好きなのか理解ができない。でも、アメリカ人がそうしているなら、僕もそうするしかない。真似をするということはそういことなんだ。


 午前8時。学校に行く。お気に入りの自転車、ヘラクレス号でな。ん?ヘラクレス号はなんだって。これのことさ。このブルーメタリックの自転車さ。かっこいいだろう。なかなかのもんだ。ママがこないだ、近所のホームセンターで19,800円で買ってきてくれたんだ。なに、ただのママチャリにしか見えない?ノンノン。君は目が悪いのかい?ママチャリではない。ヘラクレス号だ。ヘラクレス号。


 午前9時。学校到着。なーに。僕は大学生だから、9時に学校へついたとしても何ら問題はない。誰も怒らないし、こんな俺一人が遅刻してきたとしても教授たちは何一つ関心をしめさないからだ。さて、今日はどんな授業かな。


 午後12時。これは、まずった。食堂の並ぶ時間をミスった。30分遅れてしまった。なんてこった。でも仕方ない。これは耐えるべきなのかもしれないな。


 午後15時。なんだろう。騒がしいな。2号館の方が騒がしい。悲鳴のような声が聞こえる気がする。これは、野次馬根性を出してそっちに向かうべきかな……



「な、なんだこりゃ……」

 僕の目の前には、悲惨な光景があった。学生数名が倒れており、腹から血を流すもの、脚を刺されてうずくまっているものがいた。そして、その真ん中には犬のようなマスクし、ナイフのようなモノを持った男……が立っていた。正確には男なのかはわからないが、体格的特徴から男だと思う。周りには、多くの学生たちがいたが、彼がスプレーかなにかで描いた線から先へは行かなかった。

「君、君だよ君。ちょっと話がしたい。」

 犯人が喋りだした。君?どことなく僕を指で指しているような気がした。

「そう。君だ。ちょっとこっちへ来なさい」

 やはり、僕のようだった。

「そうだ。もちろん、抵抗したら、ただじゃおかないからな」

 まわりが、一斉に僕を見た。周りの連中も野次馬根性を出してここにやってきたというのに、助けもしないで僕を生け贄にする気のようだ。日本人も捨てたもんじゃないな。僕は、ヤツの言うとおりにスプレーの線を越えてヤツの方へと歩いた。

「ストップ。そこでいい」

 ヤツは、手で合図をしてきた。

「君は、お金があるなら何がしたい? 」

 お金があるなら……だって。なんだこの質問。そうだな……

「彼女が欲しい。お金があれば、デートだって何回だってできる。お金があれば、自信も出てきて女の子にアプローチしやすくなるだろう? 」

 僕は、真面目に答えたつもりだった。

「ハッハッハ。実に愉快な回答だ。じゃあ、質問を変えよう。正義はお金で買えると思うか? 」

 質問ををすると、さっきまで笑っていた顔が急に睨みつけるような顔に変わった。

「買えない。正義はそんなものではない」

「ぶっぶっぶー。残念。不正解だ。正しくは、買えるだ。正義はお金で買えるんだよ。君はそう言う経験をしたことが無いみたいだ。正義をお金で買ったことがね」

 何が言いたいんだコイツ……

「たとえば、法律家になりたいとする。法律家になって正義を司る法の番人になってしまえば、正義はある程度操ることができる。ただし、法律家になるにはある程度のお金が必要なんだよ。お金がね。これは、お金を持っているひとほど有利になる。結局お金がないと、駄目なのさ。なにも始められない。始めることすらできないんだ」

 法律家にでもなりたかったのか。コイツ

「だからといって、俺は法律家になりたかったわけじゃない。ヒーローになりたかった。でも、ヒーローになるには、お金が必要だった。父親の稼ぎでは到底払えないような額がね」


「そこの犬の帽子をかぶった大男。そのナイフを捨てて投稿しなさい! 」

 そこに、警官数名が到着した。到着した警官は拳銃を犬の帽子のヤツに向けた。

「なんだ。楽しみはこれからだって言うのに……仕方がない。今回はこれでお開きにしよう。またな、少年」

 ヤツは、ナイフを地面に捨て両手を上げて降参した。そして、すぐさま警察官が近寄り手錠をはめたのだった。

「ほら、ようのない学生は下がって!ここは危険ですから下がって! 」

 警察官たちは野次馬の学生を追い払い、その出来た道でヤツを連行して行った。そして、僕の横を通り過ぎるとき、に何か言ったようだったがよくは聞こえなかった。何が言いたかったのだろうか。


「おまわりさん、ひとつ質問しよう。努力が叶わなかった時、あんたらはどんな言い訳をする? なんかの言い訳をするだろう。まぁ、中には叶わないのは努力が不足していたからだとか言うヤツもいるだろう。でもな、それは間違いなんだ。間違い。足りなかったのは、努力じゃない。金だ。金。金は時間さえも買えるんだ。一度くらいは聞いたことがあるだろう。時は金なりってな」


 午後23時。家に着いた。今日は変なヤツに出くわした。殺人鬼だ。しかし、幸い怪我をした人はいたが死人にはでなかったらしい。殺人鬼ではないと言える。ヤツは、なにがしたかったのかよくわからない。もしかしたら、僕のようにアメリカの映画でも見て出てきた人になりきっていたのかもしれない。世の中には同類もいるもんだ。


 さて。僕も今夜は白衣を着た狂ったマッドサイエンティストにでもなりきろうかな。人肉を喰らうね。



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