6.便利 (改訂
林檎のような実を木から直接もいで、かぷっと齧る。程よい酸味と少し甘みが広がる。
今日も天気がよく、気候も温暖だ。
裸でも元気いっぱい、オークだよ。ブヒ。
やっと最近、集落の外でのソロ狩りの許可が出た。
しかし、棍棒で何を狩れというのだろう。
大きな体躯を揺すって、森の奥に入っていく。
この辺ならいいか。
湧き水の淵に座り込む。
先に言っておこう、魔法の修得はできなかった。
いや、わからなかった。
集落に魔法使えるオークはいないし、他の語彙の少ないやつらじゃ・・・すぐ諦めた。
で、変わりになんだが・・・凄いアイテムを手に入れた。
エルフの人の装備や金ピカなのは殆ど取られたんだが、一つだけゴミ捨て場にあった。
誰も欲しがらなかった、薄汚い皮袋。
ふと、思い出すと違和感があった。
何故この装備だけみすぼらしいのか。
なぜ、あの姫と呼んでも違和感の無いエルフが装備していたのか。
・・・推測する。
・・・期待する。
・・・ごくっ。
ゴミ捨て場で、震える指で、その何も入っていないような皮袋を摘み上げた。
・・・で、どうやって使うんだ。
湧き水を手で掬って飲む。うまし。
右手を開いて手の平を上に向ける。
集中する。言葉に出さず、思う。
『革の水袋、出ろ』
何もなかった右手の上に、栓の付いた革袋が突然現れる。
ニヤッ、推測通りのアイテムだった。
10cmX10cm位の皮袋で中には何も入っていない。
中を見るとなんか魔方陣が描いてある。
隠しておきたいので、今は前垂の内側に付けて装備している。其処しかないのだよ。
集中する。
【種族】オーク Lv.5
【階級】コモン
【職業】-
【才能】暴食、超認識、解析
【技能】採集Lv.3、打撃Lv.4、剣撃Lv.3、投擲Lv.7、索敵Lv.3
【祝福】-
【装備】前垂、魔法の結構凄い収納袋(72/255)、棍棒
いろいろ試す前に、すぐ装備すればよかった orz
この皮袋には、拾った時点で既に24個ほど何か入っているようだった。
他人が入れた物は、取り出せないのか。
その『物体』自体を認識しないと選択されないのか。その24個は取り出せなかった。
でも、自分で入れた物は出し入れ自由だった。
地面にある物に触れただけでは無理。
持ち上げる必要がある。片手に持てる物なら制限はされないようだ。
大きさも重さも無視されるようで、丸太一本マルゴト消えたのは流石に驚いた。
そして残念だが、スタック出来ないようだった。
だけど、袋にまとめてしまえば収納可能のようで便利、超~便利。
さて、湧き水を入れた袋を収納しますか。
パンパンに膨れた水袋を右手に持ち、思う。
『革の水袋、入れ』
右手から重みが消えた。
さて、それでは今日も訓練しますか。
湧き水の反対側の茂みでガサゴソしている。
『ナイフ、出ろ』右手から左手に渡し、そして『ナイフ2、出ろ』もう一本。
黒い狼のような獣が飛び出す。
オークの無駄にすごい腕力でナイフを投擲。
ズガガ!!
空中で飛び掛っていた狼の眉間と口の中に、深くナイフが根元まで突き刺さる。
悲鳴も上げれず絶命していた。
テレレレッテレー!
《種族レベルがあがった》
『ソード、出ろ』
人間の使うトゥハンドソードが現れる。オークには片手で持つと丁度いい。
折角、砥石の代わりになりそうな石を探し出して、研いだのだ。
無理矢理やったら地金まで出てきたが、刀代わりにする為に研ぎまくった。
いい結果が出るといいな。
そうそうこの皮袋、同じ名称のモノも複数収納できない。
少し名称変えるか、『2』とか付けると無理なく収納可能になる。
そして、名称が一致しないと出せない。いろいろと制約がわかってきた。
周りの茂みから黒い狼達が威嚇しながら出てきた。次々と、四方から出てきた。
いっせいに十数匹の黒い狼達が襲い掛かってきた。
「グルルァーーー!!」
「ガーーー!」
「---!」
もうすでに、獣・魔物・モンスターを殺す事に躊躇いはない。
やつらは、襲ってくる。そして無抵抗で襲われてやるほど、僕は怠惰ではない。
しかも倒すとレベルが上がる。自分の能力が否応無しに向上する。面白いほどに。
ゲーム的な感覚は、倫理観を上回るのか。
人間にあった時、人間が敵になった時、僕はどうなるんだろう。
・・・テレレレッテレー!
《種族レベルがあがった》
《剣撃レベルがあがった》