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2.目覚め!? (改訂

 どこまでも青い空、たなびく白い雲、そして、心地よい日の光。

日を遮る木々はみずみずしく、体を撫でる風はそよそよ~ととても心地よい。

近くをさらさらと流れる川も清流で、手で掬えば冷たく清々しく喉を潤す。

 暖かく、どこまでも優しくのどかにみんなを包み込む自然。

それは、田舎の様に空気が澄んで美味しい。光化学スモッグなんて考えられない空だ。


 ここは、たくさんの木々に囲まれひっそりと森の奥にたたずむ集落。

どこか牧歌的な里。のんびりと優しく時間が過ぎていく。


 団地付近の公園規模の広場。そのまわりを丸太で×字にぐるっと柵のように囲み。

木で出来た素朴なあばら家が、乱雑に柵で囲った中に数軒建っている。



「ブヒブヒ~♪」


「フゴフゴ」ワイワイ!



つぶらな瞳のちっちゃい仔達が仲良く歩いていく。



「フゴー!!」ガン!


「ブヒィ!?」ズザー!



少し大きい仔達が、丸太のような棍棒をぶつけ合っている。

チャンバラごっこの様な事をしているようだ。


 やあ、天気良いね。僕はオーク(=豚型亜人)だ。


・・・冗談じゃないんだよ。そうなんだよ!オークなんだよ。




 もう既にお分かりだろうが前世、前世になるのか? 転生なのかな?

とりあえず僕は、以前人間だった。

しかも今、人間だった頃の記憶が残っている。


 よりにもよって、なんでオークなんだよ。

雑魚モンスターじゃん。ゴブリン、コボルドに次ぐザコじゃん。

そして、豚。猪じゃなく豚面だ。

 これは獣人に分類されるのか、どうなんだろう。

猫とか狼の獣人と同じ所に、分類できるのか。いや、していいのか。僕はゆるせん。


 頭が混乱しています。

豚って本当は綺麗好きって言うけど、あれって品種改良した種だよね。

それに自分じゃ掃除しないよね。

元になる猪が綺麗好きって聞かないよね。

オークってどうなのよーー!?


ハア、ハア、すいません。錯乱しました。


それで、以前の名前は?だって?・・・もういいよ。話してもしょうがないよ。

・・・ふう、もういいんだ。




 人間だった頃を、自覚したのは突然だった。


 気づくと騒がしい広場の前で、自分は地面に座り込んでいた。

目の前には、やたら体格のいい豚面で腰巻一丁の変態紳士達で溢れ返っていた。祭りか?

少し遠くでは、体の青い巨人が暴れていた。


【種族】オーガ Lv.?


突然、頭に浮かんだ。どうやらオーガのようだ。

 豚面の人も抵抗していたが、青い巨人は身長がその2倍ぐらいある。

腕に抱えた電柱みたいな棒をビュンビュン振り回していた。

ポポポポーンっと、豚面の人たちが軽く吹き飛ばされていた。


阿鼻叫喚。

 そう、聞いた事もない打撃音と豚の悲鳴のような音が響き続ける。

ヌイグルミのように、豚面の人が空中に放り出される。


 どこの無双ゲームだよと、ズキズキする頭を押さえ、僕は呆けて見ていた。

青い巨人は両手で4体の豚面の人を引きずり、悠然と森の中に帰っていった。

周りの豚面の人は、ブーブー叫んでいた。ブーイングだ・・・。

 追いかけはしないようだ。


 あまりにも周りが騒然としていたので、自分はかえって冷静になってしまった。

非常識すぎて。現実ではこんな事は。それでいてどこかリアルで生々しい。

・・・でもなんとなく、

・・・・・・あー、あれかと、

・・・・・・・・・ストンと僕は納得してしまった。


 異世界だと。僕、来ちゃったかと。



 どうやらオークに転生したか、憑依したのだろうと結論付けた。

神様に会った記憶も、チートな能力をもらったという記憶も無いけどね。


 以前の記憶が蘇ったのは、頭を強打した衝撃が原因の可能性が高い。

額の辺りに、でかいコブが出来ている。

あの騒ぎのせいで、転んだのか、ぶつけたのか。

これが無ければ前世を自覚せず、ただのオークとして『生』を全うできたのだろうか。

・・・いまさらですね。


 最初は、オークにさらわれた人間という設定も考えたが、外に座り込んでいても捕まる

わけでもなく、周りのオークと目が合っても何かされるわけでもなかった。


 そして、僕にはオーク自身だった時の記憶もあることに気づいた。

オークの記憶といっても、食っちゃ寝した記憶しかなかったわけだがw

ちょっとだけ戦闘訓練?のようなものと、青空教室のような事をした記憶があった。

それで帝国語というのが若干わかるようで、片言だが記憶が融合し理解できた。

ただ、単語だけで「肉」とか「食う」とか「待て」とか・・・うわーって感じだw




 ふと、人間での最後の場面を思い出そうとしてみた。

トラックに撥ねられたとか、殺人鬼に殺されたりとかの記憶もないようだった。


 寝て起きて出勤しての普通の繰り返ししか記憶に無い。

そうなると、死因はきっと脳卒中とか心筋梗塞とかの可能性が高いだろうと思う。


 会社の健康診断で、メタボなのでと生活改善の指導を毎回されていた。

最近、仕事のストレスでまた太ったんじゃないかと同僚に言われていた。

身長180cmで体重160kg・・・男、29歳、やばいと自覚はあった。


 その日もー

仕事が一段落して、祝日と休日を合わせ4連休をまるまる取れる事になった。

夜の帰り道、自分にご褒美だー!と、いつものコンビニに立ち寄った。

 デカから揚げ弁当

 特選カツカレー

 なつかしのナポリタン

 クリームたっぷりプリン

 濃厚コーヒー牛乳

 ポテチ

体の為にと、これも買う。

 12種類の野菜の入ったサラダ

これでOKだ。

途中で、たっぷりコーンと厚切りベーコンのマヨネーズソース、ピザ(L)1枚。

・・・深夜近くに、たっぷり食べてPCでニュースサイトチェックしてすぐ寝た。


 そんなご褒美は毎日のようにあった。次はダイエットしようと思っていた。


 苦しんだ記憶が無いので、死んだという実感も無い。

まだ、夢なんじゃないかとも思うが、やっちゃったかーとも思う。

自分のせいなのでしかたないなーと諦めもできる。


 せつねー。みんなもキヲツケロー。



 残して来たモノはそれほど無い。

親には何も返せなかったが、期待もされなかった。

居なくなったことを悲しんでくれる人は、いく人かは居るだろう。

だが、すぐ忙殺の中忘れさられていくだろう。自分でもそうなるだろうから。

そして、少しずつ世界から自分の存在が消えていくだけ。


なにかしていたようで、なにもしていなかった。


ここでは、・・・ここでなら・・・。


暗っ。ハッハッハー

・・・でもオークなんだよな~。『オークキングに、俺はなる!』とか・・・

ないわーw メスオークはべらすハーレムって、どんな悪夢~。


しかしこのままでは・・・そうだな~、どうしよう。

現代日本人としては、情報が無さ過ぎるこの状況は不安だ。うん、不安だ。


とりあえず、情報収集。情報収集は足で~。


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