12.1000人都市 (改訂
町の中から見る空も青いね~。白い雲が足早に流れています。
やあー、檻の中の客寄せオークの僕です。ブヒ。
この前の騒ぎで、町中にオークの存在が知れ渡ったようです。叫びすぎました。
危険性確認の巡邏隊やら、貴族やギルド員らが見に来てました。
数日様子見になり、その後たいした騒ぎもなく。
「処分」とか「殺す」という話は、聞かなくなりました。
そんなことよりも、今日もビキニアーマー(赤)のお姉さんがご飯を持ってきました。
今日は、後ろにちっちゃい子達もお手伝いしているようです。
水を入れた木桶2つをお姉さんが置きます。
パンとか果物とか入れた籠を、ちっちゃい子達で持ってきて置きます。
「待て! お手! よし、おかわり! 回って! よし!お座り! 食べてよし!」
ふん!ふん!ビキニアーマーのお姉さんの指示に従う。
おおーこの硬いパン、うまー。
「よしよしっ!」
頭をグリグリ撫でてくる。近い近いw揺れる乳が~。辞められん。
「お腹ぽよぽよー、あはっ」
「にゃはは、な~」
「本当に大人しいですよね」
ちっちゃい子たちは、笑いながらぽいんぽいん触ってくる。
もう少し大きい少女二人は眺めていた。
ちょっと血色良くなってるようだ。髪も綺麗にされたようだし、猫耳さいきょー!
「おい!どうだオークの様子は?」
ちっ、奴隷商人のキンカー様の登場ですよ。
檻の外から、回れ!とかお手!とか騒いでます。ふほーーん。今日は林檎あるよ~。
さっぱり命令を聞かないじゃないか!!と怒鳴ってますね~。
「お手!」
フゴッ!とビキニアーマーのお姉さんの手に、人差し指だけど乗せる。
「よしよしっ!」
ああ、揺れる乳が~。
檻の外でなんじゃそりゃ!?と叫んでます。
***
ここは、『デボーン王国』の地方都市のひとつ、その中のひとつの奴隷商の館。
石と木で作られた街並。
辺境貴族が統治する都。
貴族に認められた、賄賂を渡している商人達の・・・偽りの楽園。
奴隷売買や賭博闘技、不法色街で潤っている・・・造られた奈落。
近くには、ダンジョンやモンスターの森もあるので冒険者も多く集まる。
人や物の流れが活発で、富も力も手にできる。それ以外も手に入る。
その特色の為か、地方都市にしては闘技場や都市を囲む壁は高く強固で堅牢。
壁の外部にも、かなりの貧民街が形成され影も生まれている。
主要都市から離れた『1000人地方都市オルド』という事だ。
檻の中にいてもあちこちから聞こえる、妬みや愚痴から推測してみました。
僕はどうやら、奴隷の収容所に入りきれないらしい。
奴隷商館付近に屋根付きの檻が作られた。もう、屋根があればいいですよ。
門や戸口が近いので、人目にめちゃくちゃ晒されています。てれ。
希少種だから見たい人が多いと、通りの近場に檻が立てられたようです。
オーク絶滅の危機らしいです。
なんでもエルフの姫が暴れて、オーク全滅だそうで。
どうやらエルフの宝を奪われたとかで、報復らしい。酷い話だ~。
24個も宝が奪われ、ん?24個?・・・そりゃ取り過ぎだ。オーク強欲すぎ。
僕もオークでした~。
あー集落の事は、これが原因?
じゃ、僕的にはエルフ様様だね~ラッキー。
なのか?
今日もお坊ちゃん達を連れた、お貴族様らが見に来てます。ザマスです。
大人達は離れた所で会談し「僕らはアチラを見ています」と丁寧に離れる子達。
「くくくっ、何度みてもまぬけ面だなー」
「おい!こら!ブウーと鳴け!おい!」
檻の外でガチャガチャ、騒いでいらっしゃるお坊ちゃん達。
なんの反応も無いのが面白くないようです。
動物園の動物ってこんな気持ちなのかな~。うざっ。
「そうだ!これ食わせてみようぜ」
「なっ、それアバネーだろ、火傷の実じゃないか」
ニヤリと、布に包んだ数個のピーマン見たいな実を見せる。
ハバネロみたいなものかな。
「食べたらどうなるんだろうな~」
「!? すげー!すげーな!兄貴は」
「くくくっ、ほら、豚!うまいから喰えー!」
「うっひょー!兄貴、すげー!」
コロコロと檻の中に転がってくる。
「高価だからうまいぞー!くくくっ!」
「マジかーさすが!ひひひっ!」
オークの足元に転がって行く。お坊ちゃま達は期待で興奮しまくり。
「オークじゃ一生かかっても買えない実だぞ!」
「喰え!喰え!まぬけオーク!ひひひっ!」
うるさいお坊ちゃん達だな。これをくれるという事だね。ひょいっと。
右手で取って、口元に運ぶ。くちゃくちゃ。
「まぬけがー!喰ったぞ!!!」
「辛そう!!!ぎゃはははー!」
「・・・」
「・・・あれ?」
もう一個も右手で取って、口元に運ぶ。くちゃくちゃ。ふー。
ぴりぴりするので、手の平を木桶の水で洗っておく。
「うそ!?」
「兄貴ーそれ本当にアバネーの実なんですかー?」
「ばか!3個で大銀貨2枚したんだぞ!!」
「でも、なんかいい匂いしますよ」
「そういう実なんだよ!!一口でもー」
「うまそうですよー」
かぷっとちょっとだけ齧る。「別に・・・」「そんなばかなー」とかぷっ。
「「・・・・・・・・・」」
「!?ぁーーーーー!!!っーーーーー!」
「っ!!がっ!ぅーーーーーー!!!」
ドンガラガッシャーン!と声も出せず、もんどりうつ二人。
呼吸ができず、細かく息をして喉を掻き毟っている。
もう一人は、舌を地面に擦り付けて悶絶している。
目から口から鼻からと、穴という穴から汁を垂らしている。どんだけーだよ。
「アルーマちゃんたち!どうしてこんな物を食べたのー!!」
地面でのたうつ、既に成人してるだろうお坊ちゃん達の元に貴族様たちが駆け寄る。
「水よ、水をお願い~」「はいこちらにー」って銀のカップに一杯って、あはっ。
持ってくる前にこぼした。
「・・・」ビクッ!ビクッ!
「ーぶくぶくっ」
檻の前で、泡吹いて気絶した。
すごいな火傷の実。自業自得だが凶器だわ。取り扱いを注意する事にしました。
オークでも、酷い目に遭いそうだ。
***
集中する。いつの間にかレベルが上がってた。
森か・・・ゼノビアどうしたろうか。
【種族】オーク Lv.32
【階級】コモン
【職業】-
【才能】暴食、超認識、解析、気配察知、魔術翻訳領域
【技能】採集Lv.9、打撃Lv.7、剣撃Lv.27、投擲Lv.26、索敵Lv.10、双撃Lv.15
翻訳初級Lv.6
【祝福】-
【装備】前垂、魔法の結構凄い収納袋(229/255)
【魔術】-
【神聖】-
飼い慣らされる気はないが、殺されない程度には命令を聞く。
揺れる乳に誑かされているわけ・・・ではない。
ただ、これからの行動だ。
奴隷商人は、僕をすぐ売るようすではない。価値をあげる気はあるようだが。
どうやら戦わせたいらしい。拳闘士の賭博のようなモノがあるようなのだ。
アンガスというライバルの奴隷商に負け続いてるようで、返り咲きを狙っているらしい。
ビキニアーマーのアン姉さんが、奴隷拳闘士の筆頭らしい。あっ、名前わかりました。
良い成績ならある程度の自由と待遇がよくなる見本。目の前に餌を吊ってるようです。
そのために、対人間戦・集団戦はまずまずらしい。
だが、モンスター戦が負けっぱなし。モンスターがやられっぱなしらしい。
ところが実は、モンスター戦が人気も儲けも一番良いらしくどうにかしたいとの事。
観客は、人間同士の戦いだとどこか忌避感がでて観戦を躊躇するらしい。
その点、モンスター同士で殺し合うのは、かなり観客が盛り上がりを見せる。
完全な見世物、エンターティメント。モンスターの血に大興奮、残虐性がヒートアップ。
で、今回偶然にも手に入れたオーク。しかも現在希少種。降って沸いた幸運らしい。
勝つだけ勝って最後にコロッと負けるのはどうだろう、ケケケ。
いやいや、勝てるかどうかわからんし、オーガとか出てきたらどうすんの~。
ゲームじゃあるまいし、・・・いや、これこそゲームか。
***
奴隷商館の執務室。豪華なイスに踏ん反り返って座っているキンカー。
「なんで、あのオークはワシの命令を聞かんのじゃー!」
「オークですからね。女好きなのではないでしょうか?」
執務室の無駄にでかい机の前に立つ、痩せぎすの男がワレ知り顔で答える。
館での奴隷の販売・管理を任されている店長とその部下が、もみ手で顔色を伺っている。
「かもしれんが、魔王軍のオークはどうなんじゃ!戦っておるではないか!?」
「さあ、帝国の事ですから私にはさっぱり・・・」
「・・・帝国、帝国語か・・・おい!誰か帝国語わかるか」
「そんな!魔物の言葉なんか誰も知りませんし、憶えて畜生に落ちたくもありませんよ」
「たしかにな。・・・そうだ!奴隷にはいないのか?」
「ああ、それでしたら『売れ残り』が、たしか帝国語を話せたと聞いています」
「あれか、黒いが女だし丁度いいかもしれんな。
・・・ふむ、準備しろ!あれならオークに壊されてもかまわんしなぁ。ぐふふふふ」
「わかりました。キンカー様」
執務室を出て行き、残った奴隷商の主人はイヤラシクほくそ笑むのだった。
※人口について
中世ヨーロッパ風で魔物が闊歩し、なかなか普通には生きられない時代。
首都大都市で1O万人程、数箇所の同盟都市1万~2万人、地方都市1千~5千人
それ以外は数多くの小都市や村落。永住者のみ、兵役・冒険者などは含めない。
※アバネーの実
ハバネロみたいな実で別名火傷の実、においはフルーティ。つやつやの緑の実。
凶悪な刺激性。汁がついて放置すると、皮膚が火傷のように爛れる。
珍しい輸入品で高価、貴族ぐらいしか買わない。
※貨幣相場(仮)について
小鉄貨:10円相当(偽造可能だが高くつく、十枚以上まとめて使用不可)=1アガ
鉄貨:100円相当(偽造可能だが高くつく)=10アガ
銅貨:鉄貨10枚分:1000円相当=100アガ
・平民が生活でよく利用する程度の硬貨
小銀貨:銅貨10枚分:1万円相当=1オガ=1000アガ
半銀貨:銅貨50枚分:5万円相当=5オガ
大銀貨:銅貨100枚分:10万円相当=10オガ
小金貨:大銀貨10枚分:100万円相当=100オガ(普通金貨といえばコレ)
・商売等でよく利用される。変動が起こりやすい。
国営金貨:小金貨10枚分:1000万円相当(国が保障している)=1000オガ
国営大金貨:小金貨100枚分:1億円相当(国が保障している)
圧縮金塊:小金貨1000枚分:10億円相当
・国家レベル、一般ではあまりお目にかかれない
※翻訳魔法:初級について
魔法で知識は書き込むが、翻訳自体は魔力は使わないので技能になる。
元々その人にある知識量等によって、効果がまちまちである。
赤ちゃんにかけても効果は無い。知っている言葉を指し示すだけの効果。