表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/16

12.1000人都市 (改訂

 町の中から見る空も青いね~。白い雲が足早に流れています。

やあー、檻の中の客寄せオークの僕です。ブヒ。


 この前の騒ぎで、町中にオークの存在が知れ渡ったようです。叫びすぎました。

危険性確認の巡邏隊やら、貴族やギルド員らが見に来てました。

数日様子見になり、その後たいした騒ぎもなく。

「処分」とか「殺す」という話は、聞かなくなりました。



 そんなことよりも、今日もビキニアーマー(赤)のお姉さんがご飯を持ってきました。

今日は、後ろにちっちゃい子達もお手伝いしているようです。

 水を入れた木桶2つをお姉さんが置きます。

パンとか果物とか入れた籠を、ちっちゃい子達で持ってきて置きます。



「待て! お手! よし、おかわり! 回って! よし!お座り! 食べてよし!」


ふん!ふん!ビキニアーマーのお姉さんの指示に従う。

おおーこの硬いパン、うまー。



「よしよしっ!」


頭をグリグリ撫でてくる。近い近いw揺れる乳が~。辞められん。



「お腹ぽよぽよー、あはっ」


「にゃはは、な~」


「本当に大人しいですよね」


ちっちゃい子たちは、笑いながらぽいんぽいん触ってくる。

もう少し大きい少女二人は眺めていた。

ちょっと血色良くなってるようだ。髪も綺麗にされたようだし、猫耳さいきょー!



「おい!どうだオークの様子は?」


ちっ、奴隷商人のキンカー様の登場ですよ。

檻の外から、回れ!とかお手!とか騒いでます。ふほーーん。今日は林檎あるよ~。

さっぱり命令を聞かないじゃないか!!と怒鳴ってますね~。



「お手!」


フゴッ!とビキニアーマーのお姉さんの手に、人差し指だけど乗せる。



「よしよしっ!」


ああ、揺れる乳が~。

檻の外でなんじゃそりゃ!?と叫んでます。




***




ここは、『デボーン王国』の地方都市のひとつ、その中のひとつの奴隷商の館。


 石と木で作られた街並。

辺境貴族が統治する都。

貴族に認められた、賄賂を渡している商人達の・・・偽りの楽園。

奴隷売買や賭博闘技、不法色街で潤っている・・・造られた奈落。


 近くには、ダンジョンやモンスターの森もあるので冒険者も多く集まる。

人や物の流れが活発で、富も力も手にできる。それ以外も手に入る。

その特色の為か、地方都市にしては闘技場や都市を囲む壁は高く強固で堅牢。

壁の外部にも、かなりの貧民街が形成され影も生まれている。


 主要都市から離れた『1000人地方都市オルド』という事だ。


檻の中にいてもあちこちから聞こえる、妬みや愚痴から推測してみました。



 僕はどうやら、奴隷の収容所に入りきれないらしい。

奴隷商館付近に屋根付きの檻が作られた。もう、屋根があればいいですよ。

門や戸口が近いので、人目にめちゃくちゃ晒されています。てれ。


希少種だから見たい人が多いと、通りの近場に檻が立てられたようです。

オーク絶滅の危機らしいです。


 なんでもエルフの姫が暴れて、オーク全滅だそうで。

どうやらエルフの宝を奪われたとかで、報復らしい。酷い話だ~。

24個も宝が奪われ、ん?24個?・・・そりゃ取り過ぎだ。オーク強欲すぎ。

僕もオークでした~。


 あー集落の事は、これが原因?

じゃ、僕的にはエルフ様様だね~ラッキー。

なのか?




 今日もお坊ちゃん達を連れた、お貴族様らが見に来てます。ザマスです。

大人達は離れた所で会談し「僕らはアチラを見ています」と丁寧に離れる子達。



「くくくっ、何度みてもまぬけ面だなー」


「おい!こら!ブウーと鳴け!おい!」


檻の外でガチャガチャ、騒いでいらっしゃるお坊ちゃん達。

なんの反応も無いのが面白くないようです。

 動物園の動物ってこんな気持ちなのかな~。うざっ。



「そうだ!これ食わせてみようぜ」


「なっ、それアバネーだろ、火傷の実じゃないか」


ニヤリと、布に包んだ数個のピーマン見たいな実を見せる。

ハバネロみたいなものかな。



「食べたらどうなるんだろうな~」


「!? すげー!すげーな!兄貴は」


「くくくっ、ほら、豚!うまいから喰えー!」


「うっひょー!兄貴、すげー!」


コロコロと檻の中に転がってくる。



「高価だからうまいぞー!くくくっ!」


「マジかーさすが!ひひひっ!」


オークの足元に転がって行く。お坊ちゃま達は期待で興奮しまくり。



「オークじゃ一生かかっても買えない実だぞ!」


「喰え!喰え!まぬけオーク!ひひひっ!」


うるさいお坊ちゃん達だな。これをくれるという事だね。ひょいっと。

右手で取って、口元に運ぶ。くちゃくちゃ。



「まぬけがー!喰ったぞ!!!」


「辛そう!!!ぎゃはははー!」


「・・・」


「・・・あれ?」


もう一個も右手で取って、口元に運ぶ。くちゃくちゃ。ふー。

ぴりぴりするので、手の平を木桶の水で洗っておく。



「うそ!?」


「兄貴ーそれ本当にアバネーの実なんですかー?」


「ばか!3個で大銀貨2枚したんだぞ!!」


「でも、なんかいい匂いしますよ」


「そういう実なんだよ!!一口でもー」


「うまそうですよー」


かぷっとちょっとだけ齧る。「別に・・・」「そんなばかなー」とかぷっ。



「「・・・・・・・・・」」




「!?ぁーーーーー!!!っーーーーー!」

「っ!!がっ!ぅーーーーーー!!!」


 ドンガラガッシャーン!と声も出せず、もんどりうつ二人。

呼吸ができず、細かく息をして喉を掻き毟っている。

もう一人は、舌を地面に擦り付けて悶絶している。

目から口から鼻からと、穴という穴から汁を垂らしている。どんだけーだよ。



「アルーマちゃんたち!どうしてこんな物を食べたのー!!」


地面でのたうつ、既に成人してるだろうお坊ちゃん達の元に貴族様たちが駆け寄る。

「水よ、水をお願い~」「はいこちらにー」って銀のカップに一杯って、あはっ。

持ってくる前にこぼした。



「・・・」ビクッ!ビクッ!

「ーぶくぶくっ」


 檻の前で、泡吹いて気絶した。

すごいな火傷の実。自業自得だが凶器だわ。取り扱いを注意する事にしました。

オークでも、酷い目に遭いそうだ。




***




集中する。いつの間にかレベルが上がってた。

森か・・・ゼノビアどうしたろうか。


【種族】オーク Lv.32

【階級】コモン

【職業】-

【才能】暴食、超認識、解析、気配察知、魔術翻訳領域

【技能】採集Lv.9、打撃Lv.7、剣撃Lv.27、投擲Lv.26、索敵Lv.10、双撃Lv.15

    翻訳初級Lv.6


【祝福】-

【装備】前垂、魔法の結構凄い収納袋(229/255)


【魔術】-

【神聖】-



 飼い慣らされる気はないが、殺されない程度には命令を聞く。

揺れる乳に誑かされているわけ・・・ではない。


ただ、これからの行動だ。


奴隷商人は、僕をすぐ売るようすではない。価値をあげる気はあるようだが。

どうやら戦わせたいらしい。拳闘士の賭博のようなモノがあるようなのだ。

アンガスというライバルの奴隷商に負け続いてるようで、返り咲きを狙っているらしい。


 ビキニアーマーのアン姉さんが、奴隷拳闘士の筆頭らしい。あっ、名前わかりました。

良い成績ならある程度の自由と待遇がよくなる見本。目の前に餌を吊ってるようです。

そのために、対人間戦・集団戦はまずまずらしい。


だが、モンスター戦が負けっぱなし。モンスターがやられっぱなしらしい。

ところが実は、モンスター戦が人気も儲けも一番良いらしくどうにかしたいとの事。


 観客は、人間同士の戦いだとどこか忌避感がでて観戦を躊躇するらしい。

その点、モンスター同士で殺し合うのは、かなり観客が盛り上がりを見せる。

完全な見世物、エンターティメント。モンスターの血に大興奮、残虐性がヒートアップ。


で、今回偶然にも手に入れたオーク。しかも現在希少種。降って沸いた幸運らしい。

勝つだけ勝って最後にコロッと負けるのはどうだろう、ケケケ。


いやいや、勝てるかどうかわからんし、オーガとか出てきたらどうすんの~。

ゲームじゃあるまいし、・・・いや、これこそゲームか。




***




 奴隷商館の執務室。豪華なイスに踏ん反り返って座っているキンカー。



「なんで、あのオークはワシの命令を聞かんのじゃー!」


「オークですからね。女好きなのではないでしょうか?」


執務室の無駄にでかい机の前に立つ、痩せぎすの男がワレ知り顔で答える。

館での奴隷の販売・管理を任されている店長とその部下が、もみ手で顔色を伺っている。



「かもしれんが、魔王軍のオークはどうなんじゃ!戦っておるではないか!?」


「さあ、帝国の事ですから私にはさっぱり・・・」


「・・・帝国、帝国語か・・・おい!誰か帝国語わかるか」


「そんな!魔物の言葉なんか誰も知りませんし、憶えて畜生に落ちたくもありませんよ」


「たしかにな。・・・そうだ!奴隷にはいないのか?」


「ああ、それでしたら『売れ残り』が、たしか帝国語を話せたと聞いています」


「あれか、黒いが女だし丁度いいかもしれんな。

 ・・・ふむ、準備しろ!あれならオークに壊されてもかまわんしなぁ。ぐふふふふ」


「わかりました。キンカー様」


執務室を出て行き、残った奴隷商の主人はイヤラシクほくそ笑むのだった。


※人口について

 中世ヨーロッパ風で魔物が闊歩し、なかなか普通には生きられない時代。

 首都大都市で1O万人程、数箇所の同盟都市1万~2万人、地方都市1千~5千人

 それ以外は数多くの小都市や村落。永住者のみ、兵役・冒険者などは含めない。


※アバネーの実

 ハバネロみたいな実で別名火傷の実、においはフルーティ。つやつやの緑の実。

 凶悪な刺激性。汁がついて放置すると、皮膚が火傷のように爛れる。

 珍しい輸入品で高価、貴族ぐらいしか買わない。


※貨幣相場(仮)について

 小鉄貨:10円相当(偽造可能だが高くつく、十枚以上まとめて使用不可)=1アガ

 鉄貨:100円相当(偽造可能だが高くつく)=10アガ

 銅貨:鉄貨10枚分:1000円相当=100アガ

 ・平民が生活でよく利用する程度の硬貨


 小銀貨:銅貨10枚分:1万円相当=1オガ=1000アガ

 半銀貨:銅貨50枚分:5万円相当=5オガ

 大銀貨:銅貨100枚分:10万円相当=10オガ

 小金貨:大銀貨10枚分:100万円相当=100オガ(普通金貨といえばコレ)

 ・商売等でよく利用される。変動が起こりやすい。


 国営金貨:小金貨10枚分:1000万円相当(国が保障している)=1000オガ

 国営大金貨:小金貨100枚分:1億円相当(国が保障している)

 圧縮金塊:小金貨1000枚分:10億円相当

 ・国家レベル、一般ではあまりお目にかかれない


※翻訳魔法:初級について

 魔法で知識は書き込むが、翻訳自体は魔力は使わないので技能になる。

 元々その人にある知識量等によって、効果がまちまちである。

 赤ちゃんにかけても効果は無い。知っている言葉を指し示すだけの効果。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ