8.報復 (改訂
やばい、やばい、やばい。
派手にやりすぎたかもしれません。僕、オークだよ。ブウ。
裸でがんばっているよ。
今日もソロ狩りで外に出ています。もう少し保存用の食料を確保したいんです。
ですが、僕のあとを集落からずっとついてきます。略奪部隊の1体に監視されてます。
最近毎日です。
食料は多いに越した事はないが、少ないわけではなし。いろいろ見せられません。
ぶらぶらその辺をぶらつきます。
棍棒振り上げて、ビッグマウス(肉が少ない)を追い回します。
うわあ~、まて~。
こけて、運よく捕まえたふりをします。
ぶひー!(勝鬨あげます。)
三文芝居です orz
ここ三ヶ月の間に、色々と準備をしていました。
オークロードのじいさんの元で、帝国語の勉強をしました。
ゴミ捨て場からごっそり有用なモノを収納。それを使って装備を準備。
山岳部まで行って、この周辺の地理を確認。飯の時間に間に合わなかった。
林檎のような木の実や、芋のようなものを袋につめて袋ごと収納。少しやせたかも。
投擲と剣撃のレベル上げ。狩りをし過ぎたかもしれない。
集団にならずに、ソロを好んで行動する。
周りのオークと違った行動をとる。
やたらとオークロードの所にいて、なにかしている。
よくゴミ捨て場にいて、なんかゴミが少なくなった。
かなり、不審がられているようです。
集落に戻ると、僕の後ろから監視者が走り込んで来て、すぐ略奪部隊の隊長に報告。
・・・大胆すぎる、少しは隠そうよ。
こっちを睨んでいますが、知らん振りです。
いまさらですが、とぼけまくりです。バカになりきります。フガー。
もう準備は整っています。あとはタイミング。
軍に連れて行かれては、難易度が跳ね上がりますからその前に実行したい。
後腐れなく居なくなる方法の模索中です。
出来れば、死んだと思われたいんですよ。
偽装したいんです。
ただの一兵士に、追跡など無いとは思いたいんですけど、念には念なのです。
最悪、オークだけにトンズラするだけでもいいんですけどね。ブヒ。
今日も監視されています。日数だけが過ぎていきます。
略奪部隊が略奪に行く時も、監視に人員を必ず割いていきます。
もうそろそろ、徴兵にいつ来てもいい時期のはず。
やはり人数のノルマとかあるんでしょうか。
そういえば、僕と同時期の新人が5体減った略奪がありました。
人数ギリギリなんでしょうか。
土壇場で人数が減るのを防ぐ為、今この時期に見張りがついてるんでしょうか。
ぶらぶらとしながら今できる事をと、地形の再確認。今日も監視されています。
ん?
なんか森の様子が変です。静か過ぎます。
いつも散歩してますからね。いなさ過ぎる、ビックマウス(肉少ない)もいない。
これってもしかして・・・ああっあるあるこんな状況。
ぶらぶらといつものふりをして、どんどん森の奥に向かいます。
いた。弓兵発見。
よくみると、うわ、他にもいますね。
・・・!
ふらふらと位置取りをします。こんな感じでしょうか。
おー林檎見つっけ。
不用意に、弓兵に見つけられ射線が限定される辺りに体を晒す。
「!」、ビュン!
「ピギィー!」
俺は首元の矢を右手で押さえて、悲鳴を上げる。そして、真っ赤な血が噴出し倒れる。
ドスン!
「?」
弓兵がもう一度構えた。
しかし、オークの後ろにもう一匹オークがいるのに気づいた。
そちらに狙いを変え、撃ちだす。
ビュン!
オークの首元をかすった。はずれ!オークはメイスを構え威嚇した。
「フゴー!フゴー!」
ビュン!
威嚇し、頭下げた瞬間。オークのすぐそばを先程と違う横方向から矢が飛んできた。
「フゴオォーー!敵襲!?」
オークは喚きながら、集落に一目散に戻りだした。
「***、******!」
帝国語ではない言語で一人の弓兵が指示をし、オークの追跡を開始した。
ズザザーと気配を消さずに、集落の方に追っていった。
オークの死体に見向きもせずもう一人は、逆の方向に急いで戻っていった。
そして、付近には誰もいなくなった。
さて、急がないと。
僕は起き上がって、右手の中の矢のような棒と血の詰まっていた小さな皮袋を捨てる。
うはあ、うまく行き過ぎた。
ありゃー、あちこちに射殺さんばかりの気配がピリピリしてます。
やはり、オークの集落に向かってます。
このままでは、囲まれるのは必死ですね。オークの集落に対しての包囲網でしょうか。
やはりチャンスです。
これは、死んだふりも不要だったかもしれませんね。
地の利はこちらにあります。でかい図体を隠す術は考えてました。
土遁の術です。というか、洞窟に隠れるわけですけどね。
じゃ、死体は隠れましょうw 食べ物はたくさんありますからね。
あー、血のりが気持ち悪い。
あとでわかった事だがー
ある辱めを受けたエルフの姫がいた。
そして、その姫はオークに辱められただけではなく、大切なモノも奪われた。
姫は、その大切なモノを取り返す為に、国を挙げて兵を向かわせた。
全力でオークの集落を次々と攻撃した。
魔力探知の範囲は狭く、探査して大切なモノが見つからなければ、その集落は殲滅した。
次々とそれは。大切なモノが見つけられるまで続けられた。
だが、結局その大切なモノは見つからなかったそうだ。
すでに魔王軍の元に大切なモノがある可能性があり、このまま全面戦争かと思われた。
エルフの王からの勅令、帰還命令が下がり全面戦争は回避された。
この戦闘で、全オークの80%が死滅した。
まさか、このような殲滅戦が、短期間にしかも単一種にのみ行われる事は初めてだった。
危機回避の方策など、採られている訳もなかった。必要性も考えられなかった。
生産工場の様相だった為、雌オークは全て集落に収容されていて、全滅した。
雌オークに関しては、産み分けされその数は管理されていた。その為、巣分け準備中で運
よく助かった雌オークは数匹だけだった。
また、回復不可能になった種もあった。『ランドオーク』種は絶滅だろうとのことだ。
オークの集落と生産数を元に戻すのは、数年はかかるだろうとの事。
その間、魔王軍の労働力でもあるオークが激減することによって、間接的にではある
が、かなりのダメージを魔王軍に与えた事にはなったそうだ。
ただ、エルフの国も疲弊したので、それほど戦局の変化にはならなかったようだが・・・
長寿のエルフ一人と、
大量生産可能なオーク百匹を天秤にかける。
さて、どちらの天秤が下がるのだろうか。魔王は、ほくそ笑んでいるのだろうか。
***
洞窟に引き篭もって死んだふりをして、一週間ほど経過した。
恐る恐る集落を確認に行くと、集落は更地になっていた。
数人オークじゃない兵士がいた。
オークたちも、生まれた集落も無くなってしまった。
半年とちょっとだが、育てられた記憶の詰まった故郷?が無くなってしまった。
いろいろとあった・・・
喰って寝て・・・
喰う・・・
あれ?
そうか。
これから、この世界が第二の故郷と感じられるようにー
探しに行こう。
まだ知らない世界を見に行こう。
さて、誰かに見つかる前に逃げ出しますか。
これで、自由だー!!!
***
いつのまにか気配察知を取得していた。
【種族】オーク Lv.22
【階級】コモン
【職業】-
【才能】暴食、超認識、解析、気配察知
【技能】採集Lv.8、打撃Lv.6、剣撃Lv.18、投擲Lv.21、索敵Lv.9、双撃Lv.10
【祝福】-
【装備】前垂、魔法の結構凄い収納袋(219/255)