0.本当の戦闘? (改訂
注)諸説ありますが、この話では「オーク(Orc)=豚型亜人」としています。
深い森の中、僕たちはあるかないかの獣道を頼りにズンズン進んでいく。
ガサッ、ガサガサ、ガサーーー
木々を掻き分け、あるいは無視をして進んでいく。
日本で持っていたら即連行されるような、凶悪な武器を装備した強面の戦士たち。
両手に分厚い戦斧を携えた者を先頭にし、メイスや金鎚で武装した男たちが追う。
兜とチェーンメイルを着込んで、ジャラジャラしている。
1-2-2の隊列で森を進む。
ベテラン風な戦士たち。
その後を付いて行くのは、新人たる僕たち10人。せいぜい武装は棍棒、木の棒だ。
今回は、実地見学と荷物運びだけだからのようだ。
ザン! グギャーーー!?
断末魔。
先程から通り過ぎるついでに、邪魔なゴブリンを瞬殺しているようだ。
この辺りからやたらゴブリンが単体でいて、遭遇している。
目的地に近づいてるようだ。
ゴキュ! ギイィィーーーー!!
今度はメイスの一撃で、二つ折りに吹っ飛んでいく。
視界が開けてきた。どうやら森を抜け、目的地に着いたようだ。
先頭のベテラン戦士が停止し、両手を広げみんなも立ち止まる。
前方には、洞窟の前の広場に木で組んだだけのテントが複数立てられている。
そして、それを守るように木の柵で囲んだ、小さな集落があった。
そこには、ギー!ギー!と騒がしい体色が緑色の小さいモノが数十体蠢いていた。
これが目的地の、グリーンゴブリンの集落。
柵越しに、グギョオォー!とゴブリン達がこちらに向かって威嚇している。
先頭のベテラン戦士が、両手の戦斧を構え合図をした。
「ブヒィー!」
「「「「フゴッ!」」」」
楔形でベテラン戦士たちは突っ込んでいった。
新人は一応戦闘態勢のまま待機だ。ベテランの指示待ち。
ブゥ、ブゥ、ブー、ソワソワ
新人たちも、初めての体験で興奮気味だ。
・・・そう、僕たちはオークだ。ブヒ。
虐殺だ。
グギーーー、ギャッ、ギギギギィー、グギョッ!?、ギイィィーー!
ベテラン戦士の分厚い戦斧の一振りで、5、6体まとめてゴブリンが吹き飛ぶ。
大体にも、身長差が酷い。
ベテランオークたちは身長3m程あり、比べてゴブリンは1mチョイ。
しかも体重は500キロ近く、その分厚い脂肪の上にはチェーンメール等を装備。
その重さを気にせず動かすオークの筋力。それなのに意外と俊敏だし。
戦闘特化したベテランオークたちに、ゴブリン如きでは抵抗すら適わない。
あっ、というまに戦闘は終盤に入ったようだ。ベテランオークが手招きしている。
死屍累々。
あちこちに無残な死体と、何とかまだ息のあるゴブリンも所々にいる。
洞窟付近には数体の無傷のゴブリンがいた。
その前には、色々袋があった。
そこにベテランオークが集まっていた。
なんでもゴブリンを、全滅にはしないそうだ。
ゴブリンはかなり繁殖力が高いらしく、ほっとくとすぐに増えてしまうそうだ。
だから、たまに間引く必要があるとかで、定期的に略奪しに回っているようだ。
生かさず殺さずだね。
そして、略奪行為のついでにレベル上げらしい。
流石にベテランたちは、ゴブリンではレベルアップできないようだ。
そこで、新人を連れてきて訓練させる。
瀕死のゴブリンを相手に止めをささせて、安全にレベルアップとのことだろう。
意外にオークをバカにできないと思った。
バクン! パギィッー!?
よいしょっと、棍棒で頭を強打して止めを刺す。
うっひぃー。
やっぱりリアルだと気持ち悪い。棍棒と地面の間には頭のない緑の体だけ。
まるで、赤い液体の入った風船が破裂したような跡だけが地面に残る。
実在していなかった生物だからだろうか。
オークの体だからなのだろうか。
それとも、僕の感情が変わってしまっているのだろうか。
・・・
はっ!
考えても仕方ない。
まあ、ゴブリン相手だし、忌避感はあまり感じれない。
既に肉の解体は経験していたし、それにもともとグロ画像には耐性ついてます。
いまさらだよな。
ブヒブヒブヒィー!! ガツン!ガツン!ガツン!
他の新人オークも止めさしてるが、瀕死のゴブリンに棍棒を執拗に叩きつけてる。
すでに、原型留めていないし。
・・・オーバーキル過ぎるだろ。・・・他の新人オークたちもかよ。
ブヒィー! ガスガスガス!!!
血に興奮しすぎだ。
一体のゴブリンに、いつまでも打撃を与え続けている。
僕は棍棒を振り上げ、ただ振り落とす。
ただただ、機械的に振り落とす。
効率よく一撃で仕留めるよう。
ドゴッ! ギゲキョッ!
一撃で仕留める。
やっぱりどのゴブリンも、光の粒子になって消えたりはしない。
血まみれの肉体が横たわっているだけ。
よいっしょ、10体目。
テレレレッテレー!
おっ、啓示が来たようだ。
《種族レベルがあがった》
《打撃レベルがあがった》
【種族】オーク Lv.3
【階級】コモン
【職業】-
【才能】暴食、超認識、解析
【技能】採集Lv.3、打撃Lv.2
【祝福】-
【装備】前垂、棍棒、背負い籠
レベルが表示される。まだまだだね~。
戦闘の機会がまったくなかったからな。
ん?これ?
なんか見えるんだよね。ステータス、ゲームっぽいよね。お約束だろうw
どれどれ、他の新人オークたちのステータスはどうだろう。
じーっと、
いまだにガツンガツンやってるオークを見ると、うっすら見えてくる。
【種族】オーク Lv.2
【階級】コモン
【職業】-
【才能】食欲
【技能】採集Lv.1、打撃Lv.2
新人には、どうやらまだレベル3はいないようだ。
所詮ゴブリンだからか、倒しても種族レベルはあまり上がらないようだ。
ん?打撃だけが上がっている新人オークがいる。
もしかすると、技能は回数でレベルアップするのかもしれない。
確認のためにも、今度素振りしてみよう。
ちなみに、ベテランオークのステータスをみるとね。
【種族】オーク Lv.?? Pt
【階級】ベテラン
【職業】ウォーリアLv.?
【才能】食欲、性欲
【技能】採集Lv.?、打撃Lv.?、解体Lv.?、斧術Lv.?、双撃Lv.?、戦闘指揮Lv.?
自分以外の情報の場合、すべての情報は見れないようだ。技能のあとが感じられない。
しかも、例えば他種族のゴブリンの情報はこんな感じ。
【種族】グリーンゴブリン Lv.5
うおっw、僕よりレベルが2高い。が所詮ゴブリン。
どうやっても種族情報しか見れない。
どうやら他種族だと制限がもっとかかるようで、種族名とレベルしかわからない。
それに、自分よりレベルが上位の情報は、各種のレベル情報も開示されないようだ。
きっとレベル差10だと表示不可とかって感じだと思う。
しかも種族によってレベル帯が違い、同じレベルでも強さが違う可能性。
技能の習得差も出そうだし、うん、あてにならない。
まあ、レベルがわからなくても、技能等の内容だけでもかなり有用性はある。
しかし、これはプライバシーが無いよな。
才能が流石はオークw
性欲って才能なのかw
生きているゴブリン以外の処理がおわったようだ。
これで、どうやら任務完了。
ベテランオークから新人オークたちに、略奪品の運び出しの指示を受けた。
食料と、ゴブリンが集めた人間の装備品がほとんどだ。
オークの装備は、人間の装備をばらして使うらしいのだ。
ゴブリンは最初の10分の1程度の数になっていた。
ゴブリンの感情は顔からわからない。もう、呻きもしていない。
まあ、直ぐに増えるらしいけど。
さて、オークの集落に戻りますかね。
よいしょっと。荷物を載せた背負い籠を背負い直し、血まみれの棍棒を掴んだ。