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高校ミッション

高校ミッション〜7分以内に完走せよ〜

作者: ろしあぱん

ついついシリーズものにしてしまいました。

 運動場を駆け抜ける風。巻き上がる砂埃。



 なぜ僕たちは、走る必要があるのだろうか。同じところをぐるぐると。


 遅かったら、追試ならぬ追走が待っているらしい。

 体育着を着た僕たちは、出席番号順に並んでいる。


 出席番号…

 出席番号は、結構恐ろしいものだと僕は感じている。

 どこがって?

 人に番号をつけてしまうところが恐ろしいんだ。

 何かの話に出てきた怪しげな実験施設に入れられているように思えてくる。

 よく考えてもみろ、人間に番号をつけて、頭の良さや運動の優劣を数値化しているんだ。

 まさにそれっぽいじゃないか。



 そんな妄想は置いといて、僕たちはこれから持久走なるものをやる。


 はじめに言ったように、持久走の授業とは、回る必要性のないところで回る必要がある、とても合理的でない授業だ。

 そもそも1500メートルも走る必要があるんだろうか。女子は1000メートルだって言うのに。男が500メール余分に走る必要性はどこから出てきたのだろう。

 これこそ男女差別だと言ってやりたくなる。


 確か陸上競技だと、女子だって1500メートル走る。それなら、男は2000メートルなのかと言うと、そういうわけではない。1500メートルのままなんだ。


 おっと、話がそれた。 ともかく、僕たちはこの運動場を7分以内に7周と半分、走らなければいけないのだ。

 秒換算して420秒以内に走れば良い…とは言っても、普段から走っていない僕としては、それがどれくらいのはやさなのかわからない。


 僕たちに知らされていることと言ったら、それ以降の人間は真面目に走っていないとして、追走させられることくらいだ。僕は悪目立ちしたくはないから、追走なんてまっぴらだと思っている。というか、2回も走りたくない。


 一周200メートルのトラック。

1000メートルならぴったり5周なのに、何が悲しくて7周と半分も走らなきゃいけないんだろう。

僕たちはスタート地点に立った。雷管が鳴ると同時に走り出すはずだ。

 僕は真ん中らへんに立っているのだけれど、前に立つ人の足の間から、白いスタートラインがのぞいているのを見付けてしまった。

 僕は長距離が嫌いだけど、この微妙に曲がっているスタートラインはどうしても嫌いになれない。

 なぜだろう?

 なんとも言えない、あの微妙な曲がりかげんと適当さが、僕の心をくすぐるんだ。


パァン


 雷管の音が木霊する。

 僕たちは我先に、と走り出す。




 皆さんは持久走を走っている間じゅう、何を考えているだろうか。

 僕はなぜか、自分の呼吸を数えてしまう。大抵は途中で忘れて、適当な数字から始める。百の桁に入ると、どうしても追い付かなくなるのが、ミソだ。


 始めは半周。1周、2周、3周、4周…

 まわってくるごとに、先生がタイムウォッチの時間を読みあげている。

 1000メートルをこえた頃に、体がだるくなるのは僕だけだろうか。

 急に重くなる体に舌打ちしたくなる。

 …5周、6周、ゴールっ!

 途端に体の力が抜ける。歩いているのに歩いている感覚を感じない。

 そのわりに、また走りだしたくなるのは僕だけだろうか。


 走り終わった後の、喉か肺がしめつけられているような感覚。

 持久走ならでわの感覚だろう。


 荒い息をととのえ、腰に手をあてて歩きながら空を仰ぐ。

 雲の隙間から差し込む陽の光に、僕は目を細めた。

 この清々しさを、知るために、僕たちは走っている気がする。

 多少砂埃が混じった風だって、気持ちがいい。






 あ、タイム聞くの忘れてた。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] これ、オチがいいですね☆ 描写がとてもお上手ですし、最後のほうのひっくり返し方もいいです〜 生意気ですみません…うぅ…… なんだか先生の作品にハマったようです。 はい。 これからもお互い…
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