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第4章  そして彼は前へ進む

やっと終わりましたー。

なんかこじつけくさい終わり方になっちゃったなぁ。



 父さんと帰った家はひどく懐かしく思えた。

 もう永遠にないと思っていたことが今起こっている。

 勇汰は何も言わず父を見つめた。

 少し前見たときよりも痩せた頬は自分の過ちを責め立てていた。

 償う方法が見つからない。

 そしてどう生きればいいのかもわからない。

 死んだ方がいいのかもしれない。

「なあ、勇汰。明日釣りにいこうか」

 父さんが唐突に勇汰に話しかけた。

 優しく、包み込むように言われた勇汰は静かに首を横に振った。

 そんな気分じゃなかったし、そんな資格はないと思った。

 寂しさがこみ上げる。

 自分には何も残っていない。

「………おまえの兄さんはな、お前が美里ちゃんのことが好きだって言うことをしていたんだ」

 父さんの顔を見つめる。

 嘘だ。

 そんなわけがない。

 勇汰はまた急いで目線をそらした。

 父のまっすぐすぎる瞳が、今の勇汰には辛かった。

「でもな称は笑った。そうだろ、美里はかわいいからな、てな」

 妬みも恨みも悲しみも、称兄にはいらない。

 必要なのは喜び、楽しみ、そして美里と勇汰への愛だけ。

 勇汰の瞳からは涙が漏れる。

 俺はそんな偉大な人を殺した。

 この手で、この心で。

 裏切った。

 罪悪感、喪失感、全てが押し寄せる。

「だからいつもお前の手を引いて歩いたんだ」

 父さんは笑った。

「『美里はあげられないけど、美里との思いではやれる。けど、これを言ったら勇汰は遠慮するだろうな。あいつは優しい奴だから』」

 父さんの声なのに。それは称兄が俺自身に語りかけているようだった。

 やり直せるだろうか?

 称兄は許してくれるだろうか?

 俺が幸せになることを。

 前に進むことを。

 そして、生きていくことを……許してくれるだろうか。


 父は勇汰を抱きしめた。

「ごめんな。俺は弱虫だから。もう誰かが死ぬのなんか見たくないんだ」

 父の目からは止めどなく涙が流れた。

 勇汰はその涙を見つめた。

 あふれては落ちる。たまれば落ちる。

「称が死んで美里ちゃんまで居なくなってしまった。俺は勇汰まで失いたくなかったんだ」


 それから父さんは謝り続けた。

 いいんだ、俺が悪いだけなんだから。

 明日は母さんに会いに行こう。

 そして全てを話そう。

 もう遅いかもしれない。手遅れかもしれない。

 でも、

 

 きっとわかってくれる。


 俺はそう思っている。

 勇汰は称汰と美里が写っている写真を見つめた。

「ごめん。そしてありがとう」

 次にゆうみが会いに来たらそう言おう。

 その思いには答えられないけど。精一杯返そう。

 勇汰ははにかみながら言った。


 まだ時折俺は『称汰』のような気分がする。

 鏡を見たりするときなんかとくに。

 だけど、大丈夫。乗り越えられる。

 俺には愛してくれる人がいる。

 愛する人がいる。

 記憶の中にいる残像は俺を静かに見た。

 もう大丈夫。


 記憶の中の美里は称兄と幸せそうに、あの夏の浜辺に居た。


 幸せそうだった。


 夏に日差しが勇汰の肌を焼いた。

 やけどするくらい熱い砂浜には美里と称兄がいるように思えた。

 それがとても懐かしくて、勇汰は目を閉じた。

 前を歩いた。






end

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