コギャル
サラリーマン山本は中学校の上級生の娘、瑠璃とひょんなことから話すようになった。瑠璃は母親に似てギャルである。ある日瑠璃は友達から相談を受けた。高校の女性友達大橋由美子がどうやら風俗してるらしい、それをまた彼女の交際相手吉田が疑っていると言う。山本は真相を確かめるが、交際相手の吉田の矛盾も指摘したりする。大橋由美子は瑠璃に風俗をしていることを話し、吉田とも別れる、近いうちにこの仕事も辞めると話す。瑠璃がギャグをやるきっかけはいじめが原因だと話す。友達のことでより二人は話す機会が増えていく。扱う内容は大人の世界ですが、一切アダルな描写はありません、意図的に避けています。
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「なんでお前がいるんだ!」
「何、私に会ってうれしい?」
「ねえよ。」
どうも苦手だ、こいうタイプは。
知人がスナックを開いた。顔出してくれないか、というから来てみたんだが。
「ヤマちゃーん、お酒飲むんだあ。」
「悪いかよ、お前こそ何してるんだよ?」
「マスターの娘さんとは、中学の友達なんだよ。」
まじいなあ、早々に引き上げよう。地元にずっといるのも、考え物だな。
「もしかして、ナンパしに来た?いつもはキャバクラとか?」
「行ってねえし。」
「へえ、山本さんと瑠璃は、知り合いだったんだ。」
マスターが、嬉しそうに話した。俺がこの年まで一人だから、若い女性の知り合いがいるのを、喜んでくれたんだろうけれど。
「いや、瑠璃の親と小学校中学校が一緒で、近所だということだけで。」
「幼なじみの幼なじみなのお。」
「いや、別に大した知り合いじゃない。」
「私の仲良しさんだよ。」
「やめろ、その言い方は。」
瑠璃と話すようになったのは、最近のことだ。街を歩いていたら、声をかけられた。
「こんちわあ。」
「誰?」
「あたし、山城瑠璃、ほら近所の。」
「ん?もしかして、先輩の娘か?」
「そっそっそー、高野幸子のお。」
ああ小中の先輩、高野幸子の娘だった。瑠璃は、中学校に通っていた頃は、街で会うと挨拶してくれていた。あの頃は普通の女子学生だったが。。
「きれいになったから、分んなかったあ?」
きれいねえ、どうみてもギャルの塊だ。
「メイクしてたから、分からなかったよ。」
適当にやり過ごしておこう。俺は、実家出てアパート暮らしの一人者、 変な噂たてられてもなんだし。
それからだよ、街で会うと手を振ってきたり、「ヤマちゃーん」と呼んできたり、その都度通行人に、変な目で見られる。
「お水と客ね。」
「同伴だね、はずい。」
俺はいつも、足早にその場を去る。
スナックに行ってから数日後、腹が減ったからコンビニ弁当を買いに出かけた。デリバリーも飽きたし、割高感があるから。
レジをすますと「山本君。」と声をかけられた。中学の先輩高野、結婚して山城、ていうか瑠璃の母親じゃねえかよ。
「ああ、こんにちは。」
めったに、話さないから緊張する。
「今日はお仕事、休み?」
「いや、在宅ワークなので。」
「そうなの、何のお仕事?」
「アプリのチエックをするだけ、下請けの下請けだよ。」
「へえ、最先端だねえ。」
「高、いや山城さんは?」
「私は娘と買い物してその帰り。」
娘だと!
「娘さんは一緒じゃないんだ。」
「へえ、気になるんだあ。」
げっ、その声は。後ろに瑠璃がいた。
「いたのか。いや、どうも。」
「スナックで、ナンパしに来て以来だね。」
「ナンパじゃねえ、マスターとは同じ高校出てるから、お付き合いだって言ったろ。」
瑠璃の母親は、吹き出していた。
「すみませんねえ、うちの瑠璃はいつもこんなんで。」
高野幸子は五歳年上だ。年も離れてるから、学生時代は、あまり話したことはなかった。高校卒業後、結婚して子供ができた頃から、道で会うと挨拶するようになっていた。母親といっても三十八歳、雰囲気はヤングで、瑠璃とは、姉妹のように見える。
「これからも、瑠璃をよろしくね。」
「やったあ、お母さん公認だあ。」
「なんじゃそりゃあ。」
瑠璃の母親は、高校デビューして、結構かっ飛んでいた。早くに、たぶん一九歳か二〇歳で結婚したと思うが、その後は普通に戻っていた。
「山本君は、彼女とかいないの?いくつになるのかなあ?」
「彼女とか、そういうのはご縁がないです。間もなく三十三になるし。」
「結構真面目だったよね。」
真面目じゃない、自分を押し殺していただけだ。ハブされないために、悪を演じるか、真面目のふりするかだった。柔道部だったから硬派に思われて、それで通していた。おかげで、いじめられずに済んだが。
数日後、近所の店で買い物をしての帰りだった。
「ヤマちゃーん。」
やばい、またか。見つからないように、細心の注意を払ったのに。こいつは俺をつけてんのかってなもんだ。
「あれれ、なんか挙動不審なんですけどお。」
コギャルが、大人に羽化したようなフアッション、まいるな。
「ねえ、山ちゃん、今暇あ?」
「いや、仕事あるし。」
「へえ、その割に普段着だしい。ちょっと相談したいことあるんだよお。そこでお茶しない?」
相変わらず、声でけえ。皆に見られてるじゃん。
「あれ、援交ね。」
「パパ活じゃね?。」
通りすがりの女子高生の声。ええい、しゃあねえ。
「分かった、ちょっとだけだぞ。」
ファミレスの隅っこの席に座った。
「へへえ、デートだあ。」
「けえるぞ。」
「まあまあ、照れないの。」
「照れてねえ。も、もう少しボリューム下げてしゃべれ。」
瑠璃は話し始めた。
「瑠璃のお友達のことなんだけど。」
「ん?」
「瑠璃の友達で、大橋由美子っているんだけど、最近友達からいろんな噂聞いてて。」
「ややっこしそう。」
「その子と高校の時の友達の男の子、吉田って言うんだけど。」
完全に瑠璃ペースだ。元ヤンの母親が先輩だと、強く言えない。
「で、その大橋と吉田何たらがどうした?」
「なんかね、うーんとね、その子最近みなと連絡しなくなって。キャバで働いているんじゃないかとかで、吉田君悩んでるの。」
キャバの言葉に、周囲の視線が、一斉にこちらに向いた。店外デートと思われたかも。
「そんなの、ほっときゃあいい。」
「でも、そういうわけにもいかなくて。」
「なんで?」
「由美子、家が今大変で、死にたいとか言ってたし。で吉田君は、何とかしてあげたいみたいで。」
はあ、関わりたくない案件。
「悪いこと言わんから、手を引きなよ。」
「だって、中学校から仲良しだった子だし。」
瑠璃の目がウルウルしてきた。
こんなところで泣かれたら、痴話話と思われる、ウエイトレスもこっち見てるし。
「じゃあよお、詳細だけでも聞いてやるからさあ、手伝う云々はそれからにしてくれ。」
とりあえず、その場はそれで切り上げた。連絡のためにと、連絡先交換したら、夜に無料通話アプリ攻撃。
「この子が由美子だよ。」
写メを送って来た。待てよこの子?この違和感は何だろう。瑠璃に音声通話で聞いてみた。
「名前は大橋由美子でいいんだよな。」
字も確かめた。
「何、本気で調べてくれるの?」
「いや、気になることがあるんだ。ついでにこの子、何をしてる子なんだ?」
「専門学生で、居酒屋でバイトしてる。何、興味わいてきたの?ヤマちゃんの好み?私という子がありながら。」
「いや、なんか写真、違和感があるんだ。調べたら連絡する。」
この子は学生だ、でもこの写真の雰囲気には、別のものを感じさせる。
「ねえ、詳しく教えてよお。」
「いや、まだ確信が無い。」
その後、ああでもないこうでもないと話してきた。疲れたから、半強制的に切った。
あの写真、素人じゃないな。いや考えすぎか、最近はコスプレなどしてる子たちとか、プロ並みの雰囲気の写真撮るし。
翌日は、在宅ワークオンリーの日。こういう生活も始めてみると、結構いい。満員電車に乗らなくてもいい、朝はゆっくり寝ていられる、つまり夜更かしもできる、自分の時間も持てる。服装も常にカジュアル、一日部屋着だ。
ピンポーン、チャイムが鳴った。宅配が届いたかな。
「おはよー、ヤマちゃあん!」
「なんでお前がいるんだあ!」
「だって、ヤマちゃんなんか分かったみたいだし、気になるもん。」
ドアのところで、しばし、入れて、ダメの押し問答。アパートの通路を、通り過ぎる住人の目も気になる。しぶしぶ中に入れた。
「へえ、意外と小ぎれいじゃん。」
瑠璃は、ベッドに腰かけた。
「勝手に座るなって。」
「で、何が分かったの?」
はぐらしやがったな。
「大橋由美子の、3サイズのデータあるか?大体でもいいんだが。」
「きやあ、エッチ!ヤマちゃん、そんな趣味あるの?」
「検索データに入れてみるだけだ。」
「なんで?」
「だから、気になることがあるんだ。ついでに、この子ブログとかやってるか?」
「あるよ、『ゆみの宝石箱』だったかな。」
まずは、大橋由美子の検索画面を立ち上げる、これは昨日やった。次にブログの画面、ああこれか。
「で、スリーサイズを頼む」
「ほんとにやるんだ。」
84、78,86、身長は152.、とりあえずの数字だが入れてみる。
何度か検索して出てきた画像、一覧で見てみる。出てきた女の子でそれらしい子の写メ日記をさらに探す。
「間違いないなあ。」
「分かったの?」
「これ見て。」
渋谷風俗店の女の子の写メ日記、そこに大橋由美子の、ブログの写真と同じものがあった。
「て、これ。」
「ああ、同じ子だよ。間違いない」
「あの子、イメクラしてたんだ。」
最初に貰った写メに違和感を持ったのは、これだった。写真が光の当てすぎで、顔は白飛びしてるし、ポーズの取り方とか、素人じゃない雰囲気だった。
いろいろな事情があるんだろう、こんなこと、知らない方が良かったかもしれない。
「で、どうする。俺的には、吉田には知らせない方がいいって思うけど。」
「あたし、どうしたらいいんだ?」
瑠璃の顔が、こわばっていた。
「由美子に会って話したらだめだよね。そんなことしたら、由美子苦しむだけだし。友達関係壊れちゃうよね。」
ちゃんと、分かっているんだ。
「まあ、そっとしといてやれよ。いろんな事情があって仕事してるんだ。女の子だって、自分が風水の世界で働いていること、家族や友達に、知られたくないだろ。」
瑠璃は黙って頷いた、たまにはしおらしくなるんだ、この表情は中学の頃と同じだ。
「それにしても、良く調べられたわね。もしかして、風俗通いしてるのかな?」
「馬鹿言え。」
その日はそれで瑠璃は帰っていった。
「今日はありがとね、また呼んでね。」
「呼んでねえし。」
アパートの廊下で言うなって、通りすがりの奴に、絶対デリヘル呼んだと思われたな。
瑠璃には言えないが、在宅ワークする前、派遣社員をしていた頃、大手の風俗サイトの会社で、短い期間だが仕事をしていた。
最初はいろんな店とか回るのかと思っていたが、データを預かってウエブサイトを作るだけだった。その時に、女の子の写真は顔を白く見えるように、白飛びさせてるとか、女の子検索用に、スリーサイズと、年齢を入れるようにしてるとか、写メ日記は女の子によっては、自分のブログの写真をアップしてる子もいるとか、色々知ったのだ。
まさか、そんなことが役に立つとはね。そこの会社で、正社員にならないかと誘われたが、断った。
収入は良かったが、親父も堅い仕事をしてるし、おふくろの家も同じようなものだ。ウエブの仕事など、理解しないだろう。
そんなことがあってから一週間、しばらく瑠璃からの連絡もなかった。静かでいいが、なんか拍子抜けだ。若い子の一時だけの感覚的行動、そんなものなんだろう。と思っていたら、スマホに着信、瑠璃からだ。
「おう、久しぶりだな。なんだよ。」
「ヤマちゃん、私と話せなくて寂しかったかな?」
「まさか。」
「でも嬉しそうな、声だったし。」
こいつ、大人の男相手に。その世界にいたら、売れっ子になるかもだ。
「なんか用かよ。」
「例の大橋由美子のことなんだけど。」
午後、瑠璃は家に来た。
「なんでうちなんだよ。」」
「だって、この間、喫茶店で声大きいとか言われたもの。それに、ちょっと周囲に聞かれたくないし。」
今日は、マジに感じる。
「で、話は?」
「由美子から連絡来てさあ。早く言えば、風俗してるって自分から話してきたの。」
「なんでだろうね?」
「吉田さんから、由美子に『お前風俗してるんじゃないか?』って聞かれたって。吉田さんも、ヤマちやんと同じように、ネットの写メでそう思ったらしいの。」
まあ、誰でもやれるスキルだし、あり得るな。
「で、由美子はなんて答えたんだ?」
「その場は、そんなことないよってごまかしたんだけど、吉田さんがもしお店に来たらどうしようって、泣きが入って。」
「はあ、、、、。」
まいるな、下手に入り込めない。
「ねえ、由美子は、やっとの思いで、瑠璃に打ち明けてくれたし、放っておけないよ。」
瑠璃は人がいいのだろう、でもそれが彼女を、危ういことに巻き込みそうだ。
「一番いいのは辞めることだよ。写メ日記もすべて消してな。」
「そうよね、それがいいのだけど。由美子は今、お父さんがコロナでリストラされて、お母さんも後遺症でずっと具合が悪くて。学費どころか生活費もないんだって。弟や妹はまだ中学生や高校生だもの。その子たちの面倒も見てあげなきゃなんだ。」
コロナで人生が変わってしまった人は、周りにも沢山いる。瑠璃と同じ年の子は、社会的にも弱い。若いから何とかなる、時代じゃない。
「お金のことは何とも言えないし、続けろとも言えない。そこは系列店があるみたいだ。そちらに名前を変えて移るのもありかもな。」
なんで、俺がこんなアドバイスしてんだ。
「吉田はどうするって?そこまでは分かんないか?」
「由美子の話だと、『風俗してたら付きあわない。』って言われたって。」
「そうか、吉田の気持ちも分かる。でも、吉田にも疑問だよ。」
「何が?」
「だって、なんで風俗サイトを見ていたんだろうな。吉田は、風俗で遊んでるんじゃないか?だったら、由美子のこと責めるのは変だよ。」
「そうだよね、私もそう思う。由美子に今日言われたこと、話してみる。」
数日後、瑠璃が家に来た。この頃は、すんなり家に入れてしまっている。完全に瑠璃ペースにはまったか。
「由美子に話したよ。由美子は系列に移籍してしばらくはお金貯める、でも来年は普通の仕事に就くって。お父さんも新しい仕事見つかってね。お母さんの家事も手伝わなくちゃいけないから。」
「まあとりあえずは良かったかな。吉田とはどうするって?」
「仲良くしたいけど、吉田に『風俗してたら付きあわない』って、言われたことが引っかかって、別れることにしたって。」
これが現実か、いやこんなものなんだろうな。ドラマじゃ、『それでも俺はお前のこと好きだ』とか、『この金をあげるから、店を辞めろ』とかの展開になるのだろうけど。
「今回のことで、由美子とは余計に仲良くなったよ。あたし、良き相談相手になる。」
瑠璃は、恰好は派手だけど、純粋なところがある。見た目はギャル、心は子ども。文字通り子ギャルだ。
「まあみんな幸せになればいいか。瑠璃、飯でも食いに行こうか。」
「ほんとお?嬉しい。」
二人でファミレスに入った。俺の収入じゃあ、こんなところしか連れて来れない。
「聞いていいか。」
「何、スリーサイズ?」
「ばか。瑠璃は何で、由美子と仲良くなったんだ?。」
「あたしね、中学の時いじめられててね。その時、唯一話し相手になってくれたのが、由美子だったの。」
「意外だな、今は強そうに見えるけど。」
「高校の時お母さんの古い写真を見たら、お母さんギャルだったの。で、私も真似してたら、だんだん意地悪されなくなったんだ。いじめられている子がいたら、間に入って守ってあげたりしたよ。」
そうだったのか。瑠璃の正義感みたいなものは、そういう経過があったんだ。なかなかに深い、面白い人生を送っている子だ。
ファミレスの外に出た。
「ねえ、また誘ってねえ。」
完全に誤解されちまったな、道行く人にも瑠璃にも。
恋愛にはいろんなパターンもあり、外見とかで人を判断してはならない、本当の愛とは何か人を受け入れるとは何かを書いてみようと思いました。少し力み過ぎているかと反省です。よろしければブックマーク、評価をお願いします。




