ヒーローは引きこもり
恋してるから、いつまでも。
作家を目指す少年と、「祭りの日」だけ部屋から出る少女。
「おはよう」
「う、うん、お、おはよう」
『会場』へ向かいながら、僕は少女に話す。
会話、じゃない。こちらから一方的に。
多分、一年ぶりに口を開いたから。
「最近、こういう本が人気でね」
とか、
「僕はこういう本を書いてさ」
とか。
『学校』という言葉は出さないように。
少女は、黙って、コクッコクッとうなずく。
白い肌、細い体、コクッコクッ。まるで人形みたいだ、と不謹慎に。僕は思う。
「唐揚げだってさ、食べる?」
「あぶらっこいものは、ち、ちょっと」
「そうか」
「けど、君が食べるなら」
「僕もあぶらっこいものは苦手でさ、実は」
「そう」
ホッとされる。
どういう反応をすればよかったのだろう。わからない。この子はあぶらっこいものは苦手で、けど僕と一緒ならいいって、うーん。
小説家を目指しているのに、心がわからない。
「けど、よかった」
「?」
「少し元気になってくれたみたい」
まだ、暗いけど。
一方的じゃなくなった。
『祭りの日だけ』だけど、それでも、元気になってくれて嬉しい。
「他の店、見ようか」
「う、うんっ」
「いやー、楽しかった楽しかった」
僕は笑顔で言う。
けど、反応はない。
なんでだろう、元気だったのに。家を出る前より暗い。
「もう、今年で終わりかな」
「祭り? どうだろう、来年も開催されるかな」
「そうじゃなくて」
「?」
「君は、来年から、高校生で、私は、多分ニートだし。もう、祭りの日に部屋から出るなんてこと」
「来年も、祭りに行こうよ」
「へ」
「僕は、ずっと一緒に、祭りに行きたい。
きみが祭りの日しか部屋から出れないっていうのは、すごく残念だけどさ。
ニートにきみがなっても、僕が小説家になってさ、そしたらずっと一緒だよ」
コクリ、少女はうなずく。
「僕にとっては、いつまでも、きみがヒーローだから」
ヒーローに恋している。
恋している、は、恥ずかしくて言えないけど。
さっき告白したような気がするんだが。気のせいか?
恋の力は偉大です。
読んでいただき、ありがとうございました。
いつまで続くかわからない恋、けどいつまでも続いてほしい恋。
幸せになるといいな。




