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ヒーローは引きこもり

作者: 鍋の地
掲載日:2025/10/16

恋してるから、いつまでも。

作家を目指す少年と、「祭りの日」だけ部屋から出る少女。

「おはよう」

「う、うん、お、おはよう」


『会場』へ向かいながら、僕は少女に話す。

会話、じゃない。こちらから一方的に。

多分、一年ぶりに口を開いたから。

「最近、こういう本が人気でね」

とか、

「僕はこういう本を書いてさ」

とか。

『学校』という言葉は出さないように。

少女は、黙って、コクッコクッとうなずく。

白い肌、細い体、コクッコクッ。まるで人形みたいだ、と不謹慎に。僕は思う。




「唐揚げだってさ、食べる?」

「あぶらっこいものは、ち、ちょっと」

「そうか」

「けど、君が食べるなら」

「僕もあぶらっこいものは苦手でさ、実は」

「そう」

ホッとされる。

どういう反応をすればよかったのだろう。わからない。この子はあぶらっこいものは苦手で、けど僕と一緒ならいいって、うーん。

小説家を目指しているのに、心がわからない。

「けど、よかった」

「?」

「少し元気になってくれたみたい」

まだ、暗いけど。

一方的じゃなくなった。

『祭りの日だけ』だけど、それでも、元気になってくれて嬉しい。

「他の店、見ようか」

「う、うんっ」




「いやー、楽しかった楽しかった」

僕は笑顔で言う。

けど、反応はない。

なんでだろう、元気だったのに。家を出る前より暗い。

「もう、今年で終わりかな」

「祭り? どうだろう、来年も開催されるかな」

「そうじゃなくて」

「?」

「君は、来年から、高校生で、私は、多分ニートだし。もう、祭りの日に部屋から出るなんてこと」

「来年も、祭りに行こうよ」

「へ」

「僕は、ずっと一緒に、祭りに行きたい。

きみが祭りの日しか部屋から出れないっていうのは、すごく残念だけどさ。

ニートにきみがなっても、僕が小説家になってさ、そしたらずっと一緒だよ」

コクリ、少女はうなずく。

「僕にとっては、いつまでも、きみがヒーローだから」

ヒーローに恋している。

恋している、は、恥ずかしくて言えないけど。

さっき告白したような気がするんだが。気のせいか?


恋の力は偉大です。

読んでいただき、ありがとうございました。


いつまで続くかわからない恋、けどいつまでも続いてほしい恋。

幸せになるといいな。

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