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【木曜17時更新】となりの晴明くん〜闇を祓いし者たちの陰陽奇譚〜  作者: 咲翔
【近畿横断・白虎戦編】

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098.仲間との合流


 呪鬼を全て滅した瞬間、三笠たちにかけられた言葉。その声の主の方に、四人の眼が揃って向けられる。


「せ、先生!?」


 三笠は思わず驚きの声を上げた。そこに居たのは爽やかな黒髪ショートの、長身の男性――春過夏来。彼は、口元にうっすらと笑みを浮かべながら此方に近づいてきた。


「あのなぁ、お前ら全員めちゃくちゃビックリしたような顔をしてるけど……俺も結界に閉じ込められた可能性を考えなかったのか?」


 確かに春過も茨城県『流』という肩書をもつ立派なベテラン陰陽師。ハルとアキと三笠と坂井――この四人のメンツを見て気づくべきだったのだ。坂井は例外だが、この結界内には陰陽師しか居ないこと。つまり春過もあの暗いホテルの空間に居たかもしれないということに。


「すみません、考えが及びませんでした」


 バカ丁寧に腰を折り、謝罪を述べるアキ。ハルと【境】も面白がって真似をする。


「すーみませんでしたぁ」

「そうだ、センセも陰陽師だったんよね」


 三笠も何となく合わせて頭を下げる。それを見た春過は顔をしかめてため息をついた。


「まあ、いい。ところで……坂井」


 話が変わった。春過の目が半呪鬼の少年に向く。


「それがお前の本当の姿なんだな、【境】」

「はい」 


 間髪入れずに少年は頷いた。迷いなく、ハッキリと自身の正体を認める。


「いつもは三つめの眼を自分で封印していますが、こっちのおれが紛れもない本物のおれです」

「そうか」 

「……二年前に春過先生のお仲間を殺した『哀楽』の息子ですよ」


 余計な一言を付け加えた【境】――彼の発言に、春過の肩がピクリと震えた。


「ああ、そうだったな」


 担任の瞳に、先程までの温厚な光は全く無い。 

 三笠は不穏な空気に思わず息を呑んだ。


(春過先生の仲間を『哀楽』が殺した……? 二年前って確か、前に舞花さんと華白さんが教えてくれた『呪厄年』のときじゃ……)


 場に落ちる沈黙。【境】を睨みつける春過、何が何だか分からないという顔をするハル、不安げな表情を見せる三笠とアキ……そして飄々としている半呪鬼。【境】は、結界内に閉じこめられているという事態の中で、何故こんな話を持ち出した……? 彼の真意は、 全くわからない。


「は、春過先生」


 無理矢理にアキが笑顔を作って一歩前に出た。半呪鬼と担任の間に渦巻くギスギスとした念を振り払うように、明るい声で彼はつづける。


「僕らはこれからどうすればいいんでしょうか。結界の範囲も分からないし、年長者として、『流』としてどう思いますか」


 ようやく春過の周りから憎しみの感情が消え去った。それに対してどこか寂しそうな顔をする【境】――(なんでそんな顔するの……?)


 三笠の頭の中で、【境】への疑問が渦巻く。その横では、春過夏来が頭に手をやりながら考えていた。


「これから、ねぇ……。まあ俺は極力戦いたくねーから、逃げる道探すわな」


 これが茨城県『流』の本音……? ハルとアキは愕然とした顔をするが、春過はテヘッと肩をすくめる。


「でもこんなこと言ってたって知られたら……琴白にボコボコにされそうだな。いや、ボコボコどころじゃなくて木っ端微塵にされちまうかも」


 生徒たちの頭に、あの金縁眼鏡の『巴』の姿が浮かぶ。そして脳内で再生される彼の声――。


『は・る・す〜? 茨城県代表が何言っちゃってんの!? そんなこと言う怠惰野郎は私が代わりに成敗してやるぅぅぅ!』


 妙な動きをつけながら春過に向かって御札を振り上げる『巴』の姿を誰もが想像したところで、三笠たち全員は結論に達した。「琴白星哉ならやりかねない」と。


「琴白はな……アイツも怖ぇからなぁ……」


 春過がわざとらしく肩を震わせた。それを見て三笠は密かに思う。


(あれ、もしかして琴白さんと先生って、同世代くらい……? そういえば舞花さんの話では、琴白さんとハルたちのお父さん――賀茂夏行さんも同じくらいの年だったから……)


 まさか、その、哀楽に殺された春過先生のお仲間って。


(いやいやいや、考えすぎよ三笠! まだそうと決まったわけじゃないし、あの時の華白さんの口調からして、夏行さんは生きているって信じてるっぽかったし!)


 思考を自制して、三笠は春過に問うた。


「じゃあ、先生……琴白さんに怒られちゃうから、逃げるのは無しとして。これからどうすr」





『やぁ、こんにちは』


 ――三笠の言葉を遮る第三者の脳天気な挨拶。


『うわ、めちゃくちゃ心強いメンツが揃ってくれてんじゃん。ねぇ、北山さん……って! 無視しないでぇぇ』


 その聞き覚えのある声に、三笠たち五人は顔を上げる。皆の注目を浴びた“彼”は――。


「一条柚琉さん!」


 ハルが驚き半分、喜び半分の声を出す。そう、彼らの前に現れたのは京都府『流』の、山吹色の瞳を持つこの男だったのだ。


「君は確か……千葉の賀茂晴くんだったかな」

「そ、そうです!」

「よろしく、ぼくは改めて一条柚琉。京都の仲間と丁度さっき合流出来たところでね……とりあえず、この辺の視察を兼ねて歩き回ってたんだよ」


 一条が「ね!」と同意を求めて後ろを振り向く。途端に顔を背ける数人の陰陽師。


「ちょ、え、みんな!? まさかの無反応!?」


 ヨヨヨと涙を流す一条を押しのけて、これまた三笠たちと一度会ったことのある少女が前に出てきた。


「というわけで、京都府陰陽師、一応全員居ます。私は北山音羽です……お会いしたことのある方もいらっしゃると思いますが」


 少女――北山音羽がハキハキとした落ち着いた声でそう言う。その瞬間、千葉からやって来た五人は同じことを思った。


(京都府『流』、一条さんじゃなくて北山さんで良いんじゃね……?)


 三笠も一条には申し訳ないがそんなことを考えていると……ふと、京都府の陰陽師の中に一人、よく見知った人の顔があることに気がついた。




「え、あれ」




 思わず驚きを声に出した三笠に注目が集まる。しかし、向こうも三笠が気づいたことに気づいたのか、すっと横にずれて一条の陰に隠れてしまった。


(……え、隠れた? でもやっぱりあれは……)


 三笠は一条の背後に居る“彼”に向かって呼びかけた。


「シュンさん? なんで京都府陰陽師の中に居るんです……?」

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