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【木曜17時更新】となりの晴明くん〜闇を祓いし者たちの陰陽奇譚〜  作者: 咲翔
【出雲の祓会編】

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046.祓会だョ!全員集合


 本殿の中は薄暗く、所々に太い蝋燭が立てられている。その小さな点々とした炎が、社の中をゆらりと映し出していた。見た目に反して広い建物の中には、たくさんの人が思い思いに座り、ある者はあぐらをかき、ある者は正座して、祓会の始まりを今か今かと待っていた。


「あとは……青森だけが来てないね」


 琴白は人数を数えて、呟いた。


「まあ、あんな遠くから来るんだもん。しょうがないか……それにしても、船で来るのかな。まさか陸路……? 遠いったらありゃしないのに」


 琴白の頭の中には、いつも不機嫌そうにしている青森の『流』の女の顔が浮かんでいた。

(……彼女が船嫌いとかだったら、他の陰陽師のことなんて考えずに新幹線使うだろうな……)


 と、その時。そんなことを考えている琴白に声を掛けるものが居た。


「……琴白さん」


 羽織の袖を引っ張られ、振り向く。そこにいたのは、琴白より遥かに身長の低い少年。グレーの髪色に、碧く煌めく瞳。無表情よりの微笑みを浮かべる彼の名は、古闇真白こやみ ましろ――『巴』の一人である。


「なんだね、真白くん」

「青森の人、着いたって連絡があって」

 

 真白が言うと同時に、ギギギと入り口の扉が開いた。昼下がりの眩しい光をバックに、扉の向こうに五人のシルエットが見える。やっと青森県担当の陰陽師たちが到着したのだ。


 琴白は彼らに向かって声を張り上げる。


「遠くからご苦労様だ、青森県の諸君。好きなところに座っていてくれたまえ」


 それに被さるようにして、件の青森県『流』が琴白に何かを投げつけた。


 ブオンと社殿の中の風を切り、琴白の手にキャッチされたソレは。

「り、りんご……?」


 赤く光を反射する、青森県産りんごだった。


「琴白くん、それはお土産。巴の皆で食べて」


 青森県『流』が、淡々と言う。まだ戸惑う琴白の横で、真白は小さく飛び跳ねて喜んだ。

「わーい、オレりんご好きー」

「私もりんごは大好きだよ」


 琴白は真白の頭を撫でながら言う――それにしても、青森県『流』は何だったのだろうか。急にりんごを投げつけてきて……まあ、ある意味で情緒不安定なのかもしれない。土産とも言ってたし、ここは有り難く貰うことにするか。


 そんな青森県『流』の名は竈猫柊月かまどねこ ひづきなのだが、ここでは未だ重要人物ではない。彼女の紹介はここまでにしておこう……。



 *



 かくして、出雲大社――否、“もう一つ出雲大社”の本殿に全国の陰陽師が集まった。薄暗い本殿の床に、それぞれ座る陰陽師たち。なんとなくで都道府県ごとに纏まって座っているのが分かるが、他の地方同士で喋っているのも見受けられる。あまりきちんとしすぎている会では、ないようだった。


 三笠はアキと舞花の間に挟まれながら、キョロキョロと辺りを見回す。華白は一条と蜜葉と何やらしゃべっているし、ハルは神奈川の陰陽師と自己紹介をし合っているらしかった。三笠は、ここまで来て人見知りになってしまったようで、中々他の陰陽師に話しかけることができない。仕方ないので、大人しく前を向くことにした……そのとき。


 祓会の“始まりの音”がした。

 

 シャーン、シャーン、という清らかな鈴の音。


 それは他の陰陽師の耳にも届いたらしく、だんだんとざわめきは小さくなり、やがて誰も口を開かなくなる。 


 ――静まり返る本殿。その後まもなくして正面に据えられた三つの台座の前に、それぞれ三人の人間が現れ座る。一人は琴白星哉、二人目は古闇真白、そして三人目は三笠の知らない女の人だった。


(琴白さんと、大宮駅で会った古闇さんと……あともう一人。このメンツだから、たぶん三人目の『巴』だ)


 その三人は皆、狩衣と呼ばれる平安時代の陰陽師の装束を着ていた。朱色を基調とした狩衣を身に纏う琴白が、三笠たち陰陽師を見渡して口を開いた。



「今日は急な連絡だったのにも関わらず、集まっていただきありがとう。特に東北や関東のお方々は、遠路遥々ご苦労さま。知ってると思うが――私が、琴白星哉だ。改めてよろしく頼む」


 

 琴白の柔らかな声音が、場を魅了する。『巴』の一人であり、祓のリーダー。その威厳とオーラを感じる。


 琴白の次に立ち上がったのは、真白だった。少しダボダボの、新緑を思わせる狩衣の色――少年が、話し出す。


「今日は、緊急連絡ということで集まってもらった。その話は後で琴白さんから、してくれる。あっ、あと一応自己紹介……オレは、古闇真白。よろしく」


 最後に立ち上がったのは、藍色と青色を身に纏う女性だった。紺色の髪の毛を、左頭部の高い位置でサイドテールにしている。顔が小さく、モデルのような出で立ちの彼女の名は――。


「新入り以外は皆知ってると思うが、アタシは氷室雪吹ひむろ ふぶき、『巴』だ。よろしく願う」


 冷徹そうな色を表情に浮かべ、青の女性――氷室雪吹は頭を下げた。


 三笠は、彼女の美しさに目を奪われる。華白に初めて会ったときのような、そんな衝撃を感じていた。

(ほんとに綺麗な人、モデルさんみたい。華白さんとは違う美しさを感じるわ……しかも声もカッコよすぎて……! ……何処かで聞いたことあるような気もするけども! うう、やばい)


 小さく身をよじらせる三笠。それに気づいた桜咲舞桜は心の中でため息を付いた。

(ミカサちゃんって惚れっぽいよな……。かっこいい女性が好きなタイプか? まあ確かに華白さんもフブキさんも素敵な人だけどさ)

 そして余計な一言。

(ま、俺の中では舞花より良い奴はいないけど)


 出雲大社でも、巴の前でも、祓会という場でも、どこでも妹への愛を忘れない舞桜は、すごい。



 フブキが座ったあと、琴白が再び立ち上がった。

「私達三人が、今年の『巴』だ。幸い、去年に引き続き誰一人欠けることなく、この場にいることができている。それも諸君らのおかげだ」


 琴白はそう言って、ふわりと笑う。しかしその後すぐ、その笑顔は消えた。真面目な声音に戻る琴白。


「では、本題に入るが――緊急連絡だ。結論から言わせてもらう。




 祓本部の分析により、今年が『呪厄年じゅやくどし』であることが判明した」


 今年は呪厄年――陰陽師たちが、ざわめき始める。

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