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【木曜17時更新】となりの晴明くん〜闇を祓いし者たちの陰陽奇譚〜  作者: 咲翔
【出雲の祓会編】

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041.柏〜東京


 次の日の朝、天乃三笠たち千葉県陰陽師一行は桜咲家を出立した。琴白星哉からの緊急招集――何があったのか知らないが、祓会を臨時で行うという。七人は少し緊張した面持ちで、通りを歩いている。


「華白さん」


 三笠は先頭を歩く『流』に声をかけた。白い髪を揺らし、華白は振り向く。


「なんだ」

「出雲大社まで、どうやって行くんですか? 飛行機とか使います?」

「いや使わない」


 華白は淡々と続けた。


「なぜならわたしが飛行機に乗れないからだ」

「……!?」


 他の六人はしばし唖然とする。


「あんなでかい鉄の塊が空を飛んでんだぞ。信じられなくないか? そして何より怖いだろう」

「飛行機って、鉄の塊なんですか?」

「いやシュンさん、そこから!?」


 謎のツッコミをしたのは峻佑、それにさらにツッコんだのは舞花だ。大人なのにどこか頼りない二人を見て、ハルとアキがため息をついた。


「全く、うちの大人たちは」

「僕らのほうが役に立ちそうだ」


 やれやれと二人で言ったところで、双子の傍らに誰かが立った――舞桜だ。赤髪の少年は、やけに馴れ馴れしくハルの肩に腕を回す。


「誰が、役に立つって? カモネギ双子くん」

「うわー、まだそのネタ言ってんの? 古いよ、まいさくらくん」


 ハルがニヤついた目で舞桜を見る。


「だーれが、まいさくらだ! 俺は、まお!」

「さくらざきまいさくら……ふふっ」

「あ、アキ、笑ったろ!」


 確かに桜咲舞桜をすべて訓読みすると、さくらざきまいさくら……。三笠もそれに気づいて、口元をおさえた。


 そんなこんなで賑やかに歩いているうちに、桜咲家の最寄りである柏駅に着いた。


「このあと、どう行くんですか?」

 アキがスマホで時刻表を確認しながら華白に聞く。

「んー。とりあえず東京駅に出たいな」

「了解です」


 しばらくスマホを操作したあと、再び顔を上げるメガネ少年。

「特急に乗ると速そうです。券、買いますか?」

「よし、買おう。特急ときわだよね?品川方面を買えば良いのかな」

 峻佑がスキップしながら近くの券売機へ向かう。その後ろ姿を見ながら、舞桜がボソリとつぶやいた。

「あいつ……大人だよな」


 どうやら峻佑は電車好きらしい。券売機まで、小学校の体育の授業のお手本になれそうなほどに丁寧なスキップをしている。そんな彼は、千葉大学教育学部三年であるのだが、精神年齢は追いついていないようだった。


 *


 峻佑について、陰陽師一行は「特急ときわ68号品川行き」という列車に乗り込んだ。もちろん普通列車ではないので特別料金なのだが、祓会の交通費は本部から出されるので、お金の心配はしなくていいのである。


「なー、アキ」


 ハルが座席に腰掛けながら聞いた。

「駅弁買ったら経費で落とされると思う?」

「さあ……どうだろ。どう思います? 華白さん」

「琴白脅せば行けるんじゃないか?」

「よし脅すか」

「いや、二人とも、あと華白さんも過激発言しないで」


 今日の舞花はツッコミ役に徹しているようだった。


 さすがは特急、速かった。指定席でくつろぎながら、三笠はうたた寝をする。なんだか夢を見ている気がするが、それも目を覚ましたら忘れてしまっているかもしれない。


(夢、か……)


 ぼーっと窓の外に目をやりながら考える。


(……陰陽師として生活している今も、いまだ夢なんじゃないかって思うくらい非日常なんだよね)


 あの日の夕方、双子に助けてもらったそのときから、三笠の日常は、非日常へと変化した。呪鬼という人外の敵と戦うことになり、日本の歴史の水面下で暗躍してきた『祓』という組織に入ることになり、そして陰陽師仲間がたくさんできた。ハル、アキ、華白さん、舞花さん、舞桜くん、シュンさん。きっと三笠が新潟から引っ越して来なかったら……ハルの隣の席じゃなかったら……出逢えなかったであろう、人々。同時に、三笠の声が呪鬼を祓う力を持っているということも、永遠にわからないままだったのではないだろうか。


 そう思うと、“バタフライエフェクト”という言葉の意味が、改めてわかる気がした。


 その後もしばらくぼーっとしていると、トントンと肩を叩かれた。振り向いた先には、肩くらいまでの赤髪の美少女。


「ミカサちゃん、そろそろ東京駅着くって」

「あ、ほんとですか。舞花さん、ありがとう」


 優しく起こしてくれた先輩陰陽師に感謝しながら、三笠は荷物をまとめ始める。


「華白さん、次は新幹線ですか?」

「そうだ。新幹線はわたしが昨日の夜のうちに予約しといたから大丈夫だ。ついてこい」


 黒マントを翻し、颯爽と新幹線の改札へと歩いていく華白。彼女が醸し出すオーラ、そしてその美貌に道行く人皆が振り返るが、華白自身は気にも留めていないようだった。


「華白さん、かっこいい……」

 三笠の隣を歩く舞花が呟いた。確かに夜鑑華白は、人混みの東京駅の中で一人だけ異質だった。舞花の言葉に頷きつつも、三笠は想像する。


(私たち……傍目からどう見られているんだろう。そっくりな赤髪の少年少女に、新幹線に乗ると聞いて完全にテンションがイッちゃってる丸眼鏡大学生、そして黒マントに白い髪のミステリアスな華白さんに……さっきから小突き合いしかしていないハルとアキ。そして平々凡々な私――)


 その七人が固まって歩いているのだ。人目を引かないわけがない。


(早く新幹線に乗っちゃおう)


 三笠はそう結論を出し、皆に呼びかけた。


「もう少し速く歩きましょー」

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