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【木曜17時更新】となりの晴明くん〜闇を祓いし者たちの陰陽奇譚〜  作者: 咲翔
【出雲の祓会編】

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040.全国から


 千葉県の三笠たちが祓からの動画を受信し、出発を決めた頃――全国の陰陽師たちもまた、琴白星哉からの緊急連絡を受けていた。


 ◇◆◇


 京都府京都市某所――。京都府『流』である一条柚琉は、陰陽師仲間の北山音羽きたやま おとわに電話をかけていた。


 プルルル、プルルル。

 

「あ、もしもし、北山さん?」

『一条さん、こんな夜分に何ですか』


 北山音羽――彼女の正体は、京都府所属の平陰陽師。十六歳の健全な女子高生である。そんな彼女は自宅のリビングで、風呂上がりの熱を冷ましていたところだったようだ。


「あのね、しりとりをしようと思って」

『しりとりのためだけに、男子大学生が女子高校生に電話をかけるんですか。こんな夜に』

「いや、あの、北山さん……言い方がちょっと」

『呆れました。切りますよ』

「ハサミで?」

『何言ってるんですか、電話を、ですよ』


 イマイチ噛み合わない先輩陰陽師との会話にため息をつきつつ、北山は続けた。


『で、しりとりですか?』

「なんだ、結局つきあってくれるんじゃん」

『手短に終わらせますよ。しりとり、りんご』

「こ、こ、近藤勇」

『み、水戸』

「と、と、藤堂平助」

『け、経費』

「ひ、ひ、土方歳三」

『う、鵜飼』

「い、い、伊東甲子太郎」

『一条さん、新選組縛りなのは、何かワケがあるんですか?』

「いや特にないけど。北山さんこそ、言葉のセンスが凄いね」

『はぁ……で、なんですか?電話をした本当の理由は』


 北山音羽はスマートフォンを握りしめた。一条柚琉は、毎朝新選組屯所跡である西本願寺の門の前で自撮りをするという、よくわからない習性を持つほどの新選組オタクであるのだが……それ以外は、常識人であるはずなのだ、たぶん。


 しかも頭の回転は人より速い。そんな京都府のリーダーが、考えもなしに電話をしてくるだろうか。


「なんだ、わかってたの」

『はい。何か、緊急連絡ですか』

「勘が鋭いね」


 一条は北山の言葉に驚いた。


「そのとおりだよ。巴である琴白さんからのビデオメッセージが届いた。何か緊急の案件があって、臨時の祓会を開くそうだ。明日の朝、出発できるかな」

『できると思います、少なくとも私は。他の陰陽師にも連絡しておきますね』

「助かるよ。よろしく頼む」


 わかりました、それでは。

 北山はそう言って、電話を切った。一条の声は少し不安そうだった……きっとその、『流』に届いたビデオにも緊急連絡の詳しい中身は語られなかったのだろう。普段は十月に開かれるはずの『祓会』――それを八月に行う。確かに緊急だ。よほど琴白の方も焦っているのだろうか。


 メッセージアプリを開いて、同僚たちに祓会の旨を伝える。四つの既読が付くのを見てから、彼女はスマートフォンの電源を落とした。


「ま、とにかく明日の朝ね」


 北山は一人そう呟き、目を閉じる。



 ◇◆◇



 埼玉県さいたま市――ここでも、一人の『流』が動画を再生している。


「ふぅん、出雲大社に集合か」


 水色の光を煌めかせた目に、琴白の顔が映った。緊急連絡、そう彼の口が告げている。


「方向的に“同じ新幹線に乗ることになりそう”ね……峻佑とは出来れば会いたくないんだけど」


 埼玉県『流』――花園結依の呟きは、一人暮らしのマンションでは誰の耳にも届かない。つい先日の、思いがけぬ邂逅。彼は、とても楽しそうだった。千葉県の仲間に囲まれて、新しい後輩陰陽師もできていて。そして大呪四天王『白虎』の眷属も倒したそうではないか。


「いつまでも過去に囚われている私とは……大違い、ってか」


 自嘲する花園。その後彼女は、ひとしきりSNSを確認したあと、ベッドにダイブした。明日の朝は、早くから東京へと旅立つことになるだろう。


 今では会うことも少なくなった、かつての友人たちの顔を瞼の裏に浮かべながら、埼玉県の『流』は眠りについた。

 


 ◇◆◇


 全国津々浦々に、広がる“緊急連絡” 。 


 ◇◆◇


「うわぁ……琴白の顔なんて見たくねぇ、なんだこの有害な動画は」

 巴の一人、氷室雪吹は画面を手で隠しながら動画を視聴する。



「緊急連絡……? みんなが集まって、オレが壊した出雲大社の本殿の屋根を直してくれるのかなあ」

 この罰当たりな行為の告白をしているのは、古闇真白。ちなみに本殿の修理は琴白が自ら行ったので、大丈夫である。この連絡は、別件のようだ。



「緊急連絡……出雲大社に集合かぁ、了解」

 大阪府『流』の龍宮蜜葉は呟いた。

「みんなに連絡しないとね。あ、もしかしたら華白に会えたりする……?それは楽しみやなぁ」



「祓会……」

 新潟県某所で、一人の男子中学生がタブレットで動画を再生していた。彼の名は夜条蒼空やじょう そら――十四歳にして新潟県『流』を務める陰陽師である。

「全員、揃うのか。じゃあ、……さんにも会えるかな」

 誰かの名前を呟き、夜条は他の陰陽師に連絡するべく電話をかける。 

 



「久しぶりに、会えるかもな」

 茨城県で呟く男が一人。



「除の声主のお披露目とかかな。違うか」

 とんちんかんな推測をする、陰陽師医療組織『療』の医師、アキラ=クレメンティ。


 


 その他にも、四十五都道府県の陰陽師たちは、思い思いにこの動画を受信した。明日から――すべて陰陽師が島根県出雲市に集合する「祓会(はらえかい)」が始まる。

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