093.おしゃべりと鏡
夏風邪を甘くみていました。
ちゃんと杏ちゃんは機内に行ったわね。
ああ見えても杏ちゃんはやるときはやる人だから大丈夫。
私は私のすべきことをしないと。
そう思い、私は目の前の敵を見る。
「槍投げ!!!!」
東と呼ばれる男に私の投げた槍が深々と突き刺さる……はずなのだが、槍は空を切る。
「なんでっ!?」
「……不可能だと言ったはずだ」
「お嬢ちゃん!しゃがめ!!」
土屋さんの声に反応し、咄嗟にしゃがむ。
東の攻撃がからぶる。
私のいた場所をガラスの破片のようなもので攻撃していた。
あ、危なかった。
一歩間違えれば突き刺されていたのは私の方だった。
「おいおいおいおい、お嬢ちゃん!しっかり頼むぜ」
「土屋ぁ!お前の相手は俺だろうが!東にばっかかまってんじゃねーよ」
「かまってなんかいないさ。だがおかしいな。確かにあいつはあんたの横にいたはずだが?」
その通りだ。
私は敵から注意を逸らすほどお人好しではない。
ましてや北海道で修行して自分で言うのもなんだが強くなったはずだ。
東から目を離してはいない。
確かに東は私の目線の先にいたはず。
なのに後ろから攻撃が来るなんて……。
ブォンッ
!!!
「槍っ!」
キィィンと私の槍と東のガラスが衝突する音が響く。
「……あなた瞬間移動でも使えるんですか?それとも分身できるとか?あまりにも挙動がよめません」
「俺は漫画の登場人物ではない。敵に易々と情報を教えはしない」
「東も僕も教科は理科っす。東は鏡の反射を使って実体がそこにあるように見せてるんすよ!」
「……平。おしゃべりがすぎるぞ。貴様から殺してやろうか?」
「おおこわ!せっかく助けてもらったのに殺すなんて怖いこと言うのやめてくださいな」
「まず情報をばらすのをやめろ」
この人たちはコントでもしているのだろうか?
いや、そんなことよりも。鏡か。
なるほど、目の前に東がいるのに背後から攻撃がきたことにも納得がいく。
それにガラスの破片のようなもので攻撃していた。
きっと鏡の破片だ。
相当鏡に思い入れがあるのだろう。
「思わぬ形で俺の能力がバレてしまったがそれでも俺の優位は崩れない。死ね」
今度は正面から東が突っ込んでくる。
……望むことろよ。
「ホームラン!!」
鏡の破片ごときで私のバットに勝てるわけがない!
ブゥンッ!
!?
私のバットはまたも空を切る。
「……鏡は角度を変えればどこからでもそこにいるように見せることができる」
しまった!
後ろ!?
「そして鏡の破片の切れ味を甘く見るな」
東の鏡は空を切らなかった。
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