088.恐怖と無重力
こっっわ。
僕は、いや僕たちは飛行機の最後尾に来ていた。
ここからなら某小学生探偵や某白い怪盗ばりに機体の外へ出られる。
落ちたら死は免れない上空で期待の外に降りる勇気があればの話だが。
「おいおいおいおい、ここまできてびびってんのか?そりゃねーだろ。安心しろ。落ちそうになったら助けてやるよ」
「護送中の異教徒に逃げられた人が何いってるんですか」
「確かに逃げられたが、仲間は死なせねーよ?」
妙に真に迫る言葉だった。
この男、だてに年はとってないな。
「さあ期待の上に出向くぜ。止まるんじゃぁねぇぞ」
おいそれ死亡フラグだから。
他にも色々やばいから。
まじで。
僕は土屋さんに続いて機体の上へとよじ登った。
こっっわ。
飛行機の上に乗ることも怖かったが、何より、まだ逃げていない2人の人物が機体の上にいることの方が怖かった。
「な?泉。いったろ?調べてみねーとわかんないって」
「はい、すいません。僕が間違ってました」
僕たちはキッとその2人を睨む。
1人は中肉中背の眼鏡の男。
もう1人は長髪の男。
どちらも研究者っぽいな。
そんなことを思わせる2人だった。
「それで土屋さん。逃げられたのはどっちなんですか?」
「おいおいおいおい、まだ逃げられてねーだろ。まだそこにいるんだから。長髪じゃない方だよ」
「じゃあ僕が長髪を相手すればいいんですね?」
「そうだ、頼むぜ」
そういうと土屋さんは機体の上を恐怖を感じさせないスピードで走っていく。
その2人向かって一直線に。
この人には恐怖心ってものがねーのかよ。
「落ちろ」
「……え?」
トンっと軽く、本当に軽く横に押された。
まだ遥か遠方にいるはずの長髪の男に。
飛行機は高度を落としつつも前進している。
そんな機体の上にいて、押されれば当然のように僕の体は落ちる。
「うっそだろおい、おいおいおい!?」
これは僕の言葉。
やばすぎて口癖がうつってじゃんか。
もう飛行機が見えないくらいに僕の体は急降下する。
やばいやばいやばい!!!!
落ちたら死は免れない。
くっ……。
この状況を打開する手は!?
僕は天野先生のところで何を学んだ!?
どんな状況にも適応できる、対応できる、そんな手段じゃないのか!?
空から落ちる僕をどうにか助ける方法は!!!
残念なことに僕の、思考より、落下の、スピードが、はやいようだ。
考えがまとまらねぇ!
このままじゃ下に落ちて死んじまう!
僕は人生で何度目かの恐怖に目を閉じた。
「トランポリン!」
重力が無重力に、変わった。
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