086.飛行機とジェット
男子高校生の朝は遅い。
といってもこの日はまたもや例外だった。
1人は心細いものの、北海道に行くのは初めてだからちょっとウキウキしていた。
家を出て病院による。
ねぇちゃんは起きていた。
「ねぇちゃん具合はどう?」
「そんなすぐに良くなるものではないわよ。杏介、いい顔になったわね。だいぶ天野先生にしごかれたんでしょ?」
「やっぱりわかる?ねぇちゃんもそうだったんでしょ?」
「もちろん。天野先生には色々と教わったわ」
やっぱり僕のことを天野先生に話したのはねぇちゃんっぽいな。
「それで今度はどこへ?任務なんでしょ?」
「北海道だよ」
「保健体育支部があるところね。気をつけなさいよ」
「わかってるって!それじゃいってきます」
「はい、いってらっしゃい」
ただいまもそうだがいってきますが言えるってなんかいいな。
僕は病室を後にして空港へ向かった。
「北海道行きのチケットください」
「承りました。N666便のチケットをお取りします。出発は1時間後です。荷物検査をうけ、待機してください」
「ありがとうございます」
666て。
なんか嫌な数字だな。
墜落しそう。
飛行機が墜落する確率は宝くじの1等が当たる確率より低いらしい。
墜落に遭遇するには類稀なる運が必要ということだろう。
してほしくもないけど。
朝食を済ませ、僕は飛行機に乗り込んだ。
久々に飛行機に乗ったけど、乗り心地が微妙だ。
なんか浮いている感じが落ち着かない。
トイレにでも行くか。
僕は横の人に軽く会釈をして席を立ち、トイレに向かった。
会釈を返してくれた男は不自然なほどにぶっきらぼうだったけど。
バキンッ!!
唐突にものすごい音がして、飛行機が揺れる。
な、なんだ!?
何が起こった!?
「お客様にご案内します。当機の翼の部分のジェットに不具合が生じました。これより緊急着陸に移ります。お席に深く座り、シートベルトをしっかりとおしめください」
うっそだろ。
どんな確率なんだよ。
あ、でも墜落ではないか。
なんて暢気なことを考えている場合ではない。
僕は自分の席に戻り、シートベルトを閉める。
バキンッ!!
2度目の音がして機体が大きく揺れる。
……おかしくないか?
そんなに立て続けに不具合って生じるものだろうか?
「お客様にご案内します。緊急着陸いたしますのでシートベルトをおしめください。幸いにも北海道の上空にははいいておりますのでご安心ください」
安心できるか。
ジェットが2つも不具合を起こしてんだぞ!?
僕の動揺があまりにも顔に出過ぎていたのだろうか。
横に座っているぶっきらぼうな人がボソッと喋った。
「君は本当にジェットの不具合だと思っているのかい?だとしたらお気楽なもんだ」
その人の第一印象は最悪だった。
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