084.帰りとメール
「それでは連絡をお待ちください」
「わかりました。天野先生、これからもよろしくお願いします」
「こちらこそ。泉先生、譲れない教科を一つ、それだけで守りたいものを守れるから。これを忘れないでください」
この言葉は……。
忘れもしない言葉だった。
なるほど。
この人発祥ってわけね。
僕たちは軽く会釈して教会国語支部を後にした。
「天野先生、どうですかな彼は」
「ああ、校長先生。いらしていたんですね」
「新人の様子が気になっての。それでどんなんじゃ?」
「はい。まずまずかと。現状は泉先生、姉よりは未熟かと思います。今後の頑張り次第といったところでしょうか」
「ほほう。伸び代があるのは結構結構」
「それで本題はなんですか?」
「なんじゃ、新人の様子見も本題じゃぞ。……防御壁の調子はどうじゃ?」
「はい。問題ありません」
「それならよい。引き続き頼むぞ」
「はい」
「しかし本当に強くなったのかな?」
「キョウ、それは愚問でござるよ。2週間も実践経験を積んで強くならない人なんていないでござる」
「でもケンは修行もせずに天野先生に人たち入れたんだろ?」
「才能の差でござるね」
「そんなもんかぁ」
帰りの新幹線ではそんな話をしていた。
「明日からはどうするでござる?」
「んー、普通に学校に行こうかなと思ってる。家にいてもすることないし」
「キョウらしい考えでござるね。任務が入ったら連れて行ってくれよ」
「それは保証できない。何せ僕は教会、ケンはいっちゃえば一般人だからな」
「それはそうでござるが」
「困ったら頼りにさせてもらうよ」
「そうこなくっちゃ!」
最寄り駅まで着くとケンは足早に降りた。
「また明日!学校で会おうでござる」
「なんだよ、行きは僕の家まできてくれてたのに帰りはここでお別れかよ」
「見たいアニメがあるでござる。リアタイでしか得られない感動があるでござるよ。それでは!」
まったく。
せっかちではないんだろうけど、僕はアニメに負けたのか。
僕も自分の家へと歩みを進めた。
家に入る前に翔子の家を覗いてみた。
いや、えっちな意味じゃなくて。
帰っているかどうか確かめるためだ。
電気はついていない。
インターホンを押しても反応はない。
まだ帰ってないってことだな。
そこで僕はハッとする。
リュックに突っ込まれて2週間放置していたスマホを取り出す。
し、しまった!!
天野先生に連絡先を教えたときもスマホは取り出さなかったから。
案の定、メールが溜まりに溜まっていた。
総計80件。
1日役5件の計算だ。
時報かよ。
……うん、見るの怖いから今日は寝てしまおう。
僕は現実逃避気味に家に帰り、眠りにつくことにした。
ピロピロピロ
スマホがなる。
これはメールの着信音ではなく電話の方だ。
僕の電話番号を知っている人なんて数少ない。
非通知?
僕は恐る恐る電話に出る。
「こんばんは。帰宅されましたか?泉先生」
「ああ、天野先生。こんばんは。どうされましたか?」
「早速任務です」
「いきなりですか。僕は何をすればいいんですか?」
「北海道に行ってください」
いきなりすぎるわ。
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