082.実践と練習
「それでなんで夢なんて見させたんですか?」
「おや、聡明な泉先生ならお分かりかとは思いますがお答えしましょう。ズバリ国語の力を伸ばすためです」
「国語の力?」
「はい。勉強ではなく、実践として国語の教科を使うには多くの引き出しが必要です」
「だからたくさんの本を強調したわけですね?」
「その通りです。読んだ冊数が多ければ多いほど、その状況に適した本を選択し、国語の力を行使することができる。まあ、本だけが国語の力ではないことは忘れてはいけませんよ」
なるほど。
3つの部屋では状況に応じた本を選択する必要があった。
僕が今まで読んだことがない本もあった。
確かに戦闘の引き出しは広がったと言えるだろう。
「しかし泉先生にはそれ以外にも決定的に欠けているものがあります」
「僕に何が欠けているんですか?」
「実践です。当たり前ですが、教科を使用しての戦闘経験が少なすぎます。あなたは高校1年生。教科を手にしてまもない、いわば幼児です」
国語主任なだけあって言い方が鋭かった。
「でもそれは教会の一員として行動していけば自然に身につくものなんじゃ?」
「自然に身につく前に命を落としては元も子もありません」
その通りだった。
「それでここで修行をするってわけでござるね?」
ケンが口を挟む。
「はい。そうですね……。2週間です」
「2週間?」
「はい。2週間かけて泉先生は強くなってください。毎日今日のように夢の中で本と向き合ってください。きっと素敵な本と出会うことができますよ」
「でも天野先生、さっき国語は本だけじゃないって。それに実践も足りないって」
「はい。もちろんそちらも鍛えます。本と向き合った後は、私とバトルです」
「え?」
「私と戦って実践経験を積むのです。さあ、今日から忙しくなりますよ」
なんかトントンと話が進んでいく。
「あっしは?」
「江角さんは別メニューでいかがでしょう?一緒に強くなりましょう」
「もちろんでござる!」
ケンはほっと肩を下ろすと同時に元気よく答えた。
まあ仲間外れとか嫌だし。
「では、こちらへついてきてください」
天野先生に案内された場所は地下だった。
地下とは思えない。
「大変だったんですよ?地下だと殺風景なので壁面を青空にしてみたり、植物を植えてみたり、電灯を太陽のようにしてみたり」
確かに屋外にいるのと変わらないくらいの風景が広がっていた。
校庭という表現がしっくりくるだろうか。
戦ったり、修行したりするには十分すぎるスペースだった。
「では1日の後半、実践練習を始めましょうか。江角さんは今日は観戦です。泉先生、どこからでもかかってきてください。剣道ではありませんが、一太刀でも私にいれることができれば合格ラインです」
え、もう始めるの?
まあ、しっかりと説明をしてくれる分、やりやすかった。
なんか僕の周りにはせっかちな人が多かったからな。
一太刀でもってつまり、天野先生に一回でも攻撃を当てることができればいいってことね。
オーケー。
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