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081.夢と答え

なんで先生ってなんでも知ってるように見えるんでしょうか?

 僕たちは力無く飛んでいた。

まるで生死の境を彷徨う蝶のように。

とまあ詩的に表現してみたが、実際はこの状況をどうやったら打破できるかわからず、ただただ飛んでいるだけだった。

「キョウ、どうするでござる?」

「うーん。考え方は間違ってないと思うんだよな。天野先生の言うとおりなら、僕の小さい頃の記憶でこの状況とマッチするのは『胡蝶の夢』だけだからな」

「なんで天野先生がキョウの幼い頃をしっているでござる?」

「おいおい、僕はなんでも知ってるわけじゃないぞ」

「姉から聞いたとか?」

「あ、そうか……」

ねぇちゃんの教科は国語。

教会国語主任は天野先生。

ねぇちゃんが天野先生に僕のことを話していてもおかしくはない。

じゃあやっぱり考える方向性は間違ってないのでは?

考えろ。

『胡蝶の夢』って最後蝶はどうなるんだっけ?

……あれ?

あれって説話じゃないか?

オチとか何もなかった気がするんだが……。


「ケン、『胡蝶の夢』って最後蝶はどうなるんだっけ?」

「どうもならないでござるよ。あれは教訓みたいなものだからな。全てのものは変化するとか、夢と現実とか、無常感とかそんな感じの意味だったはず」

そっか。

そうだよ。

話には必ず意味がある。

伝えたいことがある。

説話はそれが顕著なだけだ。


 僕はハッとして辺りを見渡す。

夢か現実か。


 不意に、全てが、繋がった。


 そうか。

そういうことね。

それなら後は……僕の心持ち次第だ。

僕は目を閉じて、心に強く念じる。

ここは、「夢」だ。


 ゆっくりと、ゆっくりと目を開く。



「おかえりなさい。泉先生」



 柔和な笑顔の天野先生がそこにはいた。

「江角さんの目を覚ましてあげてください」

横を向くとケンが直立不動で突っ立っている。

僕もさっきまでこんな感じだったってことか。

「おい、おきろケン!夢から目を覚ませ!」

両肩をもって大袈裟に揺さぶる。


「はっ!?あ、あれ?さっきまで飛んでたのでは……?」

「僕たち夢を見てたんだよ。天野先生の教科の力で。『胡蝶の夢』のように夢を見てたんだ」


「正解です。私の目測通り、気がついてくれましたね」

天野先生が笑いかけてくる。

「よくよく考えれば最初からヒントを出してくれていたんですね。天からの声もそうだけど、1番は……本棚や本。配置がここと全く同じだったんですね?」

「それも正解です。なかなか気がついてくれなかったのでしまいには『胡蝶の夢』そのものを題材にした部屋を作らせてもらいました」

おい、何が目測通りだ。

その言い方だと僕が思ったより鈍感でヒントとして部屋を答えそのものにしたみたいな言い方じゃねーか。

チラッと天野先生の目を見る。

天野先生はにっこり笑っている。

まるで「その通りですよ」と言わんばかりに。

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