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078.虎と扉

虎といえば皆さんは何を想像しますか?

 密閉された空間。

猛獣の唸るような声。

これ僕たち完全に餌じゃない??

「キョウ、動物は火を怖がるはず。とりあえずそのあかりはつけとくでござるよ」

「居場所を知られるだけじゃないか??」

「動物は基本鼻が効くからあんまり関係ないでござる」

たしかに。

とりあえずどんな動物がいるのかだけでも確認しておきたい。

恐る恐る唸り声のする方へ歩みを進める。


 おいおいまじかよ。

虎だった。

僕の3倍くらいはあろうかという巨大な虎だ。

虎の後ろには扉がある。

つまり、虎をどうにかしないと出られないってこと??

んなむちゃな。


「と、とりあえず本を探すにはあの虎を動かないようにしないと」

「だな。羅生門!」

巨大な門を虎の前に設置する。


 グオォォォォォ!!


「おい、逆効果じゃないか!?なんか唸り声が激しくなってるでござるよ!?」

「そんなこと言われたって……」


 バキョっという音をたてて門が噛みちぎられる。

こわ。

「キョウ!食われるでござるよ!?」

虎がこっちへ向かってくる。

オーケー。

大丈夫。

想定の範囲内。


「ねないこだれだ」


 虎の牙が僕の体をすり抜ける。

「これで食われる心配はないだろ?ケンの体も幽霊にしといたぜ」

「で、でもめっちゃ怖い形相で虎が睨んでいるんだが?」

「匂いまでは消えないんだろうな」

でもこれで扉を調べることができる。

僕はスーッとさながら幽霊のごとく扉へ近づく。

あかりのついた蝋燭を手に持った半透明の僕は本物の幽霊に近しい。

さて、扉は……。


 扉には鍵穴はおろかドアノブすらなかった。

「ケン、残念なお知らせなんだが、この扉ドアノブも鍵もないんだが?」

「そんなことキドって報告しないで欲しいでござるよ」

えー、つまりあれだ、やっぱりこの虎をどうにかしないと出られないってこと?

天からの声は聞こえなかった。

自分で対処しろってことね。


 虎に関する本か……。

やっぱり最初に思い浮かぶのは『山月記』だ。

だけど李朝って感じじゃなさそう。

だって僕たちに敵意剥き出しなんだもん。

いや待てよ?

単に腹が減ってるだけなら動物図鑑で餌を具現化すればなんとかなるんじゃ?

いや、虎が満腹になったからって僕たちがここから出られるわけじゃない。

あれこれ僕が考えている最中、虎は半透明になった僕たちの体を必死に噛みちぎろうとしてくる。

普通に怖いんだが。


「キョウ、悩んででも始まらない。とりあえずしらみつぶしに本を漁ってみるでござる」

ケンはそういうと本をパラパラと捲り始めた。

いくら半透明だからってこいつ怖くないのかな。

まあケンの言うことも一理ある。

このまま悩むよりはいろんな本を読んで解決策を探した方が得策か。

そう思い、僕は扉の前から離れようとした。


 ……え?


 扉に()()()()()()()ないだって?

僕は再び扉へと振り返る。

そうだ、よくよく考えればおかしい。

じゃあこの扉はどうやって開閉するんだ?

扉自体に仕掛けがあってもおかしくない。

虎に囚われすぎていてそのことが頭から抜けていた。

僕はもう一度扉を調べる。


 僕は見つけた。

扉に描かれた綺麗で荘厳な絵を。

その一部分だけ真っ白になっていることを。

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