077.本とビブリオ
ビブリオビブリ。とても好きな作品です。
「天野先生、準備できました」
僕たちは天野先生の指示に従い、動きやすい服装に着替えた。
といってもTシャツになっただけだが。
ケンに至っては服装はそのままだ。
「国語の力を伸ばすにはまず、さまざまな書籍があることを知ってください。泉先生は自分の好きな分野しか読んでいないでしょう?」
図星だった。
「今から出すお題を解決するような本をこの空間から探して、教科の力でそれを具現化してください」
「え、どういうことですか?」
「やればわかります。それではいってらっしゃい。ビブリオワールド」
辺りが暗闇に包まれる。
空間転移か!?
「キョウ!いるでござるか?」
「ああいるよ。にしてもこれはなんだ?」
「私の力でビブリオワールドに飛ばしました」
天から声が聞こえる。
「その空間は辺り一面が本で、正確には本と本棚で埋め尽くされています」
国語主任すげーな。
「その部屋から脱出してください。それが最初のお題です」
ふむふむ。
つまりだ、ここは無数に本がある修行スペースということだ。
国語の力を伸ばすためには本を知るべし……か。
面白いじゃないか。
「おい、ケン!」
「ああ、わかってるでござるよ。まずはこの真っ暗闇をどうにかしないとな」
「その空間では国語の異能しか使えないようにしてあるので悪しからず。江角さんは泉先生を助けてあげてください」
あくまで僕の力を伸ばすことが目的なわけね。
オッケー。
まずはあかりが欲しいな。
見えなければ何もできない。
「あかり」
僕がそう言い放つと、僕の手には蝋燭が、その蝋燭に火が灯る。
「おお、さすがキョウ!これで辺りが見渡せるでござるな」
「知ってる?『あかり』って絵本。昔ねぇちゃんに読み聞かせてもらったんだ」
しかし、この灯りでは全体を照らすことはできない。
手探りで進むか。
ある程度探索して、この空間は半径20mくらいの空間であること。
扉が1つあるが、鍵がかかっていること。
壁は本棚であることがわかった。
「つまりはあの扉から出れるわけだな?」
「そうとは限らないでござるよ。本棚に秘密の隠し扉があるかも」
「……いや、そうじゃない。ケン!建築系の本を探してくれるか?それか犯罪手口の本か」
「どういうことでござる?」
「これは本の中から解決策を探せってことだと思う。つまりだ、あの扉を開けるにはあれと同じタイプの扉がのってる本を探して「鍵」を具現化するか、ピッキングをして開けるかすないとダメってことだ」
「なるほど、それで犯罪手口か建築系の本でござるな。にしても、本の数が多い。これじゃ探し出すなんて不可能だよ」
「そんなことはないさ。ここは図書館みたいなもんだろ?ってことは日本十進分類法でわけられているはず。だから、5類を探すんだよ」
「さ、さすが教科が国語なだけはあるでござるな」
「ほら、ここの本棚!建築系ばっかりだ」
僕たちは5類の本棚の前に居座り、本を読み耽った。
「あ、あったでござるよ!この扉、ここにある扉とそっくり!」
「お、なになに?『世界の扉全集』?こんな本読んだことないぞ」
こんな本があったのか。
知らなかった。
「このページでござるよ」
「確かにあの扉そっくりだな。フリテンの扉か。よし」
「フリテンの扉の鍵!」
国語は言葉の力。
読んだ書籍とか、国語に関する力を発揮できる。
今『世界の扉全集』を読んだから、この本に書いてあることは具現化できるわけだ。
僕の手には蝋燭ではなく、鍵が出現する。
カチャリ
「開いた!やっぱりこういうことだよ」
「よし、キョウこの部屋を脱出するでござる」
僕たちは扉の向こう側へ進んだ。
「いいですね、その調子で次の部屋も乗り越えてください」
天から天野先生の声が聞こえる。
扉をくぐり抜けると、また真っ暗だ。
「??さっきと同じ部屋?」
「いや、キョウ。何か聞こえるでござるよ」
さっきと同じような空間につながっていたが、違うのは「グルルルル」と猛獣のような声が聞こえることだった。
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