076.防守と修行
「失礼。意地悪がすぎましたね。泉先生にはまずこれを渡そう」
先生。
そっか、教会の一員なんだから先生と呼ばれるのか。
「これはなんですか?」
「教会のライセンスカードですよ。教会の一員である証でもあります。大事にしてくださいね」
そんな話もしてたな。
ていうか天野先生ちゃんと僕のこと認識してくれてたんだ。
「それはもちろん認識していますよ。泉先生の弟でしょう?」
なんで考えてることがわかるんだよ。
こえーよ。
「やっぱりねぇちゃんのことも知ってるんですか?」
「もちろんです。彼女は私の部下でしたから。家、でしただと過去形になってしまいますね。今でも信頼できる部下です」
考えてみればねぇちゃんの教科も国語なんだから知ってて当たり前か。
「よく弟の話をしてくれていましたよ。よっぽど愛されているのですね」
「家族ですから当然です」
「あ、あのー」
「なんでしょう・そちらの方は名前を知りませんね。自己紹介でもしていただけますか?」
「はい、あっしは江角健太と言います!キョウに連れられてやってきました」
おい、一人称のあっしが抜けてねーじゃねーか。
「ほうほう。これは……なかなか面白い人材ですね。それでご用件はなんでしょうか?」
「天野先生が拠点を口外しているのはなんででござるか?」
「ふふふ。そのふざけたような口調では隠し切れないほど面白い方ですね」
いや、ふざけた口調だから面白いんじゃないの?
「お教えしましょう。泉先生も肝に銘じておいてください。教会において国語の役割は「防守」。つまり守ることが仕事です。つまり、防衛拠点を教えることも防守につながるんですよ」
「それってどういう?」
「ここを狙えば他に手を出しづらくなるでしょう?それに「守る人」が姿を隠すわけにはいかないですから」
なるほど、わからん。
でもその風格だけでもこの人は「強い」ということはわかる。
自身が滲み出ている。
「ということはあの扉にもやっぱり仕掛けがあるでござるか?」
「もちろんです。私が招き入れた人間ではない場合、焼かれて動けなくなります」
こえーよ。
ほんとに鍋に入れられて煮込まれるのかよ。
「来客が泉先生だけではなかったので江角さんは焼こうとしていました」
こえーよ。
嘘じゃなさそうなところがなお怖い。
「外からの攻撃にも耐性があり、防げるように私が異能を張り巡らせています。安心してください」
つまりは「防守」は完璧ってことか。
「しかし泉先生、あなたは教会の任務を任せるにはまだ実力が足りないようにお見受けします。重松先生が測られた測定値も最低ラインだったとお聞きしています」
ぐはっ……。
確信を突くような言葉だった。
確かに今回受かった人の中では一番低い。
二谷は実力を隠していたようだし。
結構気にしてたのに。
「私と修行しましょう」
「へ?」
「泉先生を堂々と任務に送り出せるくらいには強くなっていただきます。大切な人を守れるように。大勢の人を守れるように」
「あ、あのー。あっしは?」
「あなたは修行の必要がないように感じますが。泉先生についていてあげてください。1人より2人の方がいいでしょう」
こうして僕たちは教会国語支部で修行する流れになった。
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